初めて黒字化した「freee」の最新決算を解説

5.成長企業の成長の理由
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会計ソフト業界では、近年クラウド型がシェアを大きく伸ばしています。

このクラウド会計ソフト分野でNo1のシェアを持つと言われているのが、freee(フリー)さんです。

上場しているので、発表されている財務諸表を見ると、売上はずっと大きく伸ばしているのですが、ずっと赤字でしたが2025年6月期ではじめて黒字を計上しました。

今までは、年間の売上額よりも多くの販売費および一般管理費を使っていましたが、2025年6月期は、売上をしっかり伸ばしながら販管費を削減したことが理由です。

この記事では、freeeさんの最新決算と、今まで赤字だった理由と前期黒字になった理由についてわかりやすく解説します。

この記事を読むと、リスクがあるが、伸びている分野で戦う方法のひとつを知ることができます。

この記事は、

・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つ「よしつ」が実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説

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今まで高成長なのに赤字だった理由と前期黒字になった理由

・顧客獲得のために赤字になってもとことん投資している
・プロである投資家が投資する価値があると判断している
・前期は黒字化のために投資を抑えた

上記3点が高成長なのに赤字だった理由と前期黒字になった理由です。

まずは、発表されている財務三表からどのような会社かを紹介し、その後に上記3つを詳しく解説します。

財務三表から見るとどんな会社?

freeeさんは、クラウド会計ソフトを販売している会社です。フリーランスや小企業中心に販売していますが、最近では中企業への販売に加えて、人事労務やその他のクラウドソフトも販売しています。

まずは、freeeさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。

会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。

・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)

この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。

Freeeさんの2025年6月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

ライブラリ | IR | フリー株式会社
フリー株式会社のIRコンテンツです。CEOメッセージ、株式情報、IRニュース・ライブラリなど各種情報についてのご案内です。

上記の場所から、2025年6月期決算短信をご覧ください。

注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円もしくは千円で表記されています。

財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。

財務諸表では、数字はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。10,000,000円は、10百万円、10,000千円と表示されます。

表の右上などに単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に慣れましょう。

ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します

直近の業績

売上333億円(昨年254億円、一昨年192億円)、売上総利益274億円(昨年210億円、一昨年161億円)、営業利益6億円(昨年▲84億円、一昨年▲79億円)です。

特筆すべきは以下の2点です。

・売上総利益率は82%
・前々期営業「損失」84億円、前期営業「利益」6億円

100万円売ったら82万円が売上総利益(=粗利)となる高利益率ですが、販管費を沢山使っている点です。

お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

お金を集める

どのようにお金を集めているのか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信5.6P参照)。

売上が年間で333億円の会社ですが、なんと資本金270億円(昨年263億円、一昨年256億円)です。とても大きなお金を集めています。

投資する

何に投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。

現金で358億円(昨年318億円、一昨年364億円)持っています。この現金を元手に顧客獲得のために人件費・広告等に投資しています。

投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

どれだけの売上と利益が出ているかをもう一度見てみます(決算短信7.8P)。

売上333億円(昨年254億円、一昨年192億円)、売上総利益274億円(昨年210億円、一昨年161億円)、営業利益6億円(昨年▲84億円、一昨年▲79億円)です。

・売上総利益率は82%
・前々期営業「損失」84億円、前期営業「利益」6億円

100万円売ったら82万円が売上総利益(=粗利)となる高利益率ですが、販管費を沢山使っている点です。

ちなみに販管費は268億円(昨年294億円、一昨年240億円)使っています。今まで売上よりも大きな販管費を使っていましたが、前期は売上(333億円)より少ない金額となりました。

上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

キャッシュの増減を見てみます(決算短信11.12P)。

期末残高は498億円となり、昨年と比べて180億円増えました。

freeeはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)

直接提供モデル

直接提供モデルで自社製品のクラウド商品を販売するモデルです。

毎月の使用料を契約中はずっと支払う課金方法です(年払いもあり)。

取引社数が1社増えるごとに、販売する商品を作るための原価も同じく増える会社が多いのですが、freeeさんのビジネスモデルでは取引社数が増えても基本原価は増えません。

出来ているクラウドのソフトウェアに、新しい顧客が一部分を使用するだけなので、容量さえクリアできれば、原価はほぼかからない仕組みなのです。

売上の多くが売上総利益となる典型的なパターンです。

ただ、競合も同じ条件なので、取引数を増やすために人件費と広告宣伝費が大きくかかっています。

今まで高成長なのに赤字だった理由と前期黒字になった理由

・顧客獲得のために赤字になってもとことん投資している
・プロである投資家が投資する価値があると判断している
・前期は黒字化のために投資を抑えた

上記をそれぞれ解説します。

前々期までは顧客獲得のために赤字になってもとことん投資している

・買い切りではなく、毎月定額でお金をもらえる仕組み
・解約率が低い
・顧客基盤ができればアップセル・クロスセルができる

それぞれ解説します。

買い切りではなく、毎月定額でお金をもらえる仕組み

契約方法は、毎月定額で使用料を払う方式です。サブスクと言われる方式です。

この方式の一番のメリットは、買い切りのように一度しかお金をもらえない方式ではなく、毎月定額を契約期間ずっと払ってもらえることです。

当然取引社数が多くなればなるほど、社数×月間使用料である売上が膨らんでいきます。

解約率が低い

現在の解約率は1.1%しかありません。年間で取引数100社の内、1社位しかやめないサービスなのです。

会計(確定申告含めた決算や税)を中心としたサービスなので、過去のデータが蓄積していき、ソフトを変える物理的心理的負荷がかかるからです。

更に、その他のバックオフィスのサービスまで受けると、業務フローに完全に組み込まれて変更できない状態となります。

顧客基盤ができればアップセル・クロスセルができる

取引数が増えれば、売上が上がるだけでなく、アップセル・クロスセルができる顧客基盤が出来上がります。

新規で営業をかける必要がなく、すでに取引し接点を持っているお客様に周辺サービスを販売できるのです。

上記3点からまずはお客様開拓を最優先でおこなうために、徹底的に投資するのです。

実際に前期は、freee人事労務を徹底的にクロスセルしています。

(アップセル・クロスセルの詳細は、「アップセル・クロスセル」で取引額を上げる!をわかりやすく解説を参照)

プロである投資家が投資する価値があると判断している

資金調達の基本はFreeeさんの株を買ってもらっている

とても多くの投資をおこなうためには、お金が必要です。そのお金のほとんどを新規株式発行で調達しています。

その株式は投資家が買っています。もちろん、倒産すれば紙屑になるのですが買っているのです。

なぜなのか?当然投資している会社は、儲かると思っているからです。

上記の「顧客獲得のために赤字になってもとことん投資している」に記載しているメリットで投資しても儲かると考えているのです。

また、クラウド会計ソフト及び周辺マーケットが伸びるとみているのです。

上記のプロダクトライフサイクルで見ると。個人事業主、小企業がメインターゲットであるクラウド会計ソフトは、成長期真っ盛りです。

(詳しくは「プロダクトライフサイクル」わかりやすく解説&使い方紹介を参照)

上記のプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)で見ると、今①ですが、今後②のルートで儲かるのか?③のルートに落ちてしまうのか?の勝負が待っています。

そして、投資している会社は②に行けるのではと考えているのでしょう。

この2つで投資家は儲かる=投資するという判断をしているのです。

前期は黒字化のために投資を抑えた

売上を伸ばし販管費を減らした

前々期までの徹底的な投資をおこなうフェーズから前期は黒字化に舵を切りました。売上はしっかり伸ばし(254億→333億円)、販管費は前々期が294億円使ったのに、前期は268億円に減らしています。

この差額で黒字化を達成しています。

初めて黒字化した「freee」の最新決算「まとめ」

・顧客獲得のために赤字になってもとことん投資している
・プロである投資家が投資する価値があると判断している
・前期は黒字化のために投資を抑えた

投資家からとても大きなお金を集めているので、経営者にはすごいプレッシャーがかかっていると思います。

その中で2025年度6月期は黒字化を達成しました。今後どのような成長を実現できるのか?とても楽しみです。

他の企業の解説もしております(キーエンスオービックZOZO出前館モノタロウエムスリーワークマンABCマートビズリーチメルカリサイボウズ無印良品ネット印刷ラクスルSansanダイキン工業日本M&Aセンター楽々精算ラクス)。

各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。

また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。

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