チさんは、既存会社が非常に強い人材業界で急成長しています。
ビズリーチさんと言えば、TVCMとハイクラス人材の転職サポートとダイレクトリクルーティングで有名です。
この記事では、ビスリーチさんの強みと競合が多い業界でなぜ高い成長率を実現できているのか?を最新決算を含めてわかりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説)
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ビズリーチの高い成長率の理由とは?
ダイレクトリクルーティングという手法でハイクラス層の転職希望者・企業・人材会社の「不」を解消
これが高い成長率の主たる理由です。あまりにも当たり前ですが、明確な課題があるマーケットの課題解決をおこなうことで、大きな市場になる典型的なパターンです。
ビズリーチとはどんな会社?
社名はビジョナル株式会社といいます。TVCMで有名は、「ビスリーチ」というハイクラス転職Webサイトを運営しています。
Webサイトに、転職したいハイクラスの転職希望者と、人材紹介会社のヘッドハンター及び直接採用したい企業を集めてマッチングビジネスを展開しています。
人材業界にダイレクトリクルーティングという手法を導入し、高成長しています。
ビズリーチを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ビズリーチ(社名はビジョナル株式会社)さんがどんな会社かを、公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
ビズリーチさん(ビジョナル株式会社)の2024年7月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2024年7月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は661億円(昨年563億円、一昨年440億円)、売上総利益は604億円(昨年505億円、一昨年382億円)、営業利益は178億円(昨年132億円、一昨年83億円)です。
売上はなんと17%伸びています。特筆すべきは売上総利益率が91.4%で、非常に高い率となっています。100万円売り上げたら、91.4万円売上総利益=粗利になる会社です。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているのか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信3.4P参照)。
集めたお金の内、352億円(昨年222億円)が過去の利益の積み上げである利益余剰金です。負債純資産合計(=右側合計)の46%にもなります。資本余剰金も105億円(昨年103億円)あります。
共に返済の必要のないお金で資金を集めています。
ほんの少し借入はありますが、返さなくてもいいお金(株式や過去の利益の積み上げ分)のシェアが高く、経営の安定度は抜群です。
投資する
どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。
現金で581億円(昨年412億円、一昨年314億円)で資産合計(=左側合計)の73%を占めます。
様々な用途で使える現金を持っておくことで事業運営をおこなっています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信5.6P)。
売上は661億円(昨年563億円、一昨年440億円)、売上総利益は604億円(昨年505億円、一昨年382億円)、営業利益は178億円(昨年132億円、一昨年83億円)です。
売上はなんと17%伸びています。特筆すべきは売上総利益率が91.4%で、非常に高い率となっています。100万円売り上げたら、91.4万円売上総利益=粗利になる会社です。
企業や人材会社が掲載費を払ってビズリーチのサイトに掲載しても、システムの中で情報が追加されるだけなので、1社参画するごとに原価が追加でかかるわけではありません。そのため、とても高い売上総利益率となっています。
売上総利益と営業利益の差である販管費の中では、広告費のシェアがとても高く、212億円(昨年191億円。一昨年147億円)も使っています。
月18億円、一日5,900万円も使っていることになります。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信9P)。
期末残高は581億円(昨年412億円、一昨年314億円)あります。昨年と比べて169億円残高が増えています。
2.ビズリーチはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?
(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
マッチングモデル
転職したい人と採用したい企業及び採用したい人材会社を、Web上でマッチングさせているビジネスです。
・サイト掲載料
・採用できた場合の成約料
・一定数を超える人に接点を持つ場合の追加料金
採用したい企業や人材会社から上記3つを課金しています。
また、ビスリーチさんが他社にない大きな特色の一つは、転職希望者からも課金していることです。
ビズリーチ 高い成長率の理由を「詳細解説」
ダイレクトリクルーティングという手法でハイクラス層の転職希望者・企業・人材会社の「不」を解消
上記の詳細を解説します。
ハイクラス層の採用における当時の「不」とは?
当時のハイクラスの転職は、人材紹介会社を介して企業と転職希望者がマッチングする方法が主でした。ただ、この仕組みではさまざまな「不」がありました。
転職検討者の「不」
会うことができた人材紹介会社かつ、その会社の担当者からしか企業を知る方法がなかった
そもそも募集案件は、オープンではなくクローズ情報で、人材紹介会社からしか採用情報を得ることができません。
また、人材紹介会社は大手は少なく中小が多く、多数の会社に会わないと様々な募集案件に出会えない状況でした。
人材紹介会社の当時の「不」
転職希望者と採用したい企業両方を見つける必要があった
転職希望者と採用したい企業の両方を見つけてきて、マッチングさせることでビジネスが成り立つ仕組みです。
転職希望者を集めるには、さまざまな告知方法を使って自社に登録してもらう方法を取り、採用したい企業は営業して集める必要がありました。
ただ、小さい会社が多いので、転職希望者と企業の両方の手持ち数が少ないため、両方の希望をマッチングさせることに苦労します。
また、成果報酬なので、マッチングしないと収入はゼロですし、無理に募集会社に転職希望者を紹介すると、人材会社の評価が下がるジレンマがありました。
採用したい企業の当時の「不」
管理職や経営層は採用をオープンにして募集しにくい
管理職や経営層の募集はオープンにしにくいので、主流であった広告での採用は使いずらく、人材紹介会社にお願いするしかなかった。ただ、人材紹介会社には1社当たりに登録している転職希望者数が少なく、沢山の人材紹介会社と会う必要がありました。
3者にこのような「不」がありました。
3者の「不」の詳細
当時のハイクラス人材の採用環境ですが、ハイクラスの人たちが転職するには、人材紹介会社が持っているオープンになっていない求人情報(非公開求人)を得るしかなかったのです。
なぜオープンにできないのか?
仮に、20名営業担当がいて、営業課長が2名、その上に営業部長が1名いる組織があるとします。
営業担当を募集するには、特に全員が知っていても問題がないです。1名追加するんだという程度の認識になるからです。
ただ、もしこの組織で営業部長の新規募集をしていることを全員が知ったとします。
その部長が退職することになっており、更にオープン情報になっていればいいですが、そうでなければ、営業部長がやめる?営業課長の昇進はない?営業部長が異動?といろんな憶測がでます。
そうなると、会社は困ります。正確な人事情報がオープンになる前に、人事のうわさが駆け巡ることで、組織全体のゆるみや、各人のモチベーションに悪影響を及ぼします。
更に、この情報が流れた後に、もし採用がうまくいかずに営業課長の一人に部長になってくれと言ったとします。
営業課長からすると、採用しようとしていたのに採用できなかったから、しょうがなく私に声をかけてきたと感じるでしょう。
このような例もあり、管理職の募集は多くの場合、内密にする必要があるのです。
ただ、内密で募集するとなると、その当時のメインの募集方法である広告では募集できません。したがって人材紹介会社を使うしかありませんでした。
人材紹介会社は、転職希望者を集めて募集企業のニーズをマッチングさせようとします。
ただ、ハイクラスの転職希望者を自社で集めることはかなりコストがかかります。全国に散らばり、転職したいことを公にしていない管理職や経営の経験者と接点を持つ必要があるからです。
これが難しかったのです。
3社の「不」をまとめて解決する
募集内容がクローズのままで、転職希望者と採用したい企業・人材会社が多数集まる仕組みを作る
これができれば、採用したい企業や人材紹介会社がメリットを感じてもらえ、お金を出してくれるようになります。
ここで編み出された方法がダイレクトリクルーティングです。
ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングとは、企業や人材紹介会社が、転職希望者のスキルや経験に注目し、直接仕事のお話を持ちかける転職活動の一つの方法です。
転職希望者が自分のスキル、経験、希望条件などを登録します。この情報は企業やヘッドハンターに公開されます。
採用したい企業や人材紹介会社が、自社の求めるスキルや経験を持つ人材を、登録されたプロフィールの中から検索し、希望に合致する人に採用したい企業や人材紹介会社がスカウトメールを送ります。
スカウトメールは詳細まで書いてある場合もありますし、特定できないように、少しぼかして書いてあることもあります。
届いたスカウトメールの内容を参考に、転職希望者は応募するかどうかの検討を行います。興味を持った場合は、企業やヘッドハンターと直接やり取りを進めることができます。
ぼかして書いてある場合でも、このタイミングで詳細がわかります。逆に言えば、このタイミングまで募集内容をクローズのまま採用活動ができるのです。
3者のメリット
人材紹介会社のメリット
転職希望者を集める必要がなく、データベースにある沢山の転職希望者の中から、採用したい企業の要望を踏まえて、対象となる転職希望者に声をかけることです。
採用したい企業のメリット
直接データベースを参照して、採用基準に合致する人に直接面接オファーができます。
転職希望者のメリット
職務経歴書と履歴書を登録しておくだけで、沢山の人材紹介会社や採用したい企業から直接連絡をもらうことができます。
このように3者にメリットがあるのがダイレクトリクルーティングの特徴です。
一番キーとなるハイクラスの転職希望者の集め方
テレビCM・Web広告を徹底的におこなうことで集めている
2023年7月期の1年間で191億円の広告宣伝費を使っています。月平均16億円、1日5,000万円です。とてつもない金額です。
テレビCMを見たことがあると思います。「ハイクラスの転職」「企業やヘッドハンターから直接アプローチがある」と言われると、ハイクラスの転職検討者がサイトに集まります。
転職希望者は、ちゃんとアプローチしてもらえるように、職務経歴書や履歴書を詳細に自分で作成しサイトに登録します。
会員になる際の最低限の審査(ハイクラスかどうか)があり、それをクリアし、かつ会員費を払うということで転職ニーズも高く、詳しい職務経歴書や履歴書まで記載されたデータベースが出来上がるのです。
このビズリーチさんのデータベースに、閲覧だけでなく、直接コンタクトを取ることもできるなら、採用したい企業や人材紹介会社にとって月数十万円という金額は安いものです。
結果、転職希望者も大きなお金を払ってくれる採用したい企業や人材紹介会社も集まる好循環となり、高い成長率を上げることができたのです。
豆知識ですが、転職希望者の方向けに、採用が決まってアンケートに答えたら、ギフト券がもらえます。
実はこれはとっても大事なことです。なぜなら、ビズリーチさんのサイト上では、双方が接触することはサイト内のメールのやり取りでわかるのですが、実際に採用できたかどうかまではわかりません。
そこで、ギフト券がもらえる=ビズリーチ自体が転職希望者が採用されたことを把握する仕組みを入れているのです。
成約報酬をしっかりもらうための施策です。
ビズリーチ高成長の理由の「まとめ」
・ダイレクトリクルーティングという手法でハイクラス層の転職希望者・企業・人材会社の「不」を解消
上記を実現するためにダイレクトリクルーティングという手法を導入しました。これが採用したい企業や人材紹介会社にとって、お金を出してでも欲しいリストになりました。これがビズリーチさんが大きく成長した理由です。
採用超大手のリクルートさんもリクルートダイレクトスカウトというビズリーチさんと同じサービスを立ち上げています。今後この戦いがどうなるのかが注目です。
他の企業の解説もしております(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ネット印刷ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター、楽々精算ラクス)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください
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