小売業は一般的には低利益率だと言われています。ただ、ABCマートさんは、他と比べると利益率が高い商売をしています。
誰もが一度はABCマートで靴を買ったことがあると思いますし、とても安かったと感じたと思います。
この記事では、ABCマートさんがどのような工夫をして、利益率を高めているのか?を最新決算含めてわかりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説)
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ABCマートの利益率が高い理由
・売上の6割~7割が、自社生産もしくはメーカーとの共同開発商品
・上記商品を大量販売できる店舗網を持っている
上記2点が高利益率の理由です。
ABCマートさんの売上総利益率(=粗利率)は50%を超えています。売上の半分以上が粗利です。小売業平均と比べるとても高い率となっています。
店舗には良く知られているブランドメーカーのシューズが沢山並んでおり、一見仕入れ販売が主だと感じますが、実は単純は仕入販売は3割~4割しかありません。
その他は、自社生産もしくは、ABCマート限定のメーカーとの共同開発商品なのです。当然単純に仕入れ販売するよりも、高い粗利となります。
その商品を、全国どこにでもある店舗網で大量に販売しています。
結果、高利益率になるのです。
ABCマートを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ABCマートさんがどんな会社か?を公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は、本質を一言で表現!「会社とは何?」をわかりやすく解説を参照)
この流れ沿って、現在の業績を見ていきましょう。
ABCマートの2024年2月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2024年2月期決算短信(連結)をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10=10百万円=1,000万円や10,000=10,000千円=1,000万円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
2024年度2月期の数字を見ると売上が3442億円(昨年2,901億円、一昨年2,439億円)、売上総利益1,756億円(昨年1,496億円、一昨年1,249億円)、 営業利益557億円(昨年423億円、一昨年274億円)となっています。
売上が昨年比18.7%アップ、売上総利益が昨年比17%アップ、営業利益が昨年比32%アップしており、大きな伸びとなっています。
特筆すべきは、売上高総利益率(=粗利率)50%以上となっており、小売業としては驚異的な数字となっていることです。
そもそも安い販売価格設定の上に、2足目半額なども通年で行っているのに、売上の半分以上が粗利なのです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
それぞれを見ていきます。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているのでしょうか?を見てみましょう。貸借対照表(決算短信6.7P参照)の右側に記載されています。
過去の利益の積み上げである利益余剰金が一番多くて2,698億円(昨年2,444億円、一昨年2,282億円)です。この金額は、負債純資産合計の70%を超えています。当然自己資本比率も隆高く、88%超えです。
借入金は、短期借入金だけしかなく、金額も14億程度しかありません。実質無借金経営です。
返さなくてもいいお金(株式や過去の利益の積み上げ分)がほとんどで、経営の安定度は抜群です。
投資する
何に投資しているのか?を見てみましょう。貸借対照表左側に記載されています。
商品(在庫)と店舗(建物含む)に大きな投資をしています。
資産で大きいものは、現金で1,672億円(昨年1,389億円、一昨年1,418億円)、在庫で889億円(昨年886億円、一昨年598億円)、建物で395億円(昨年362億年、一昨年347億円)、敷金及び保証金で280億円(昨年270億円、一昨年260億円)となっています。
商品販売であることと店舗1,519店舗持っているので、在庫と店舗及び敷金及び保証金が莫大な金額となっています。
このことから、商品在庫と店舗(建物含む)に大きな投資をしているとわかります。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信8P)。
2024年度2月期の数字を見ると売上が3442億円(昨年2,901億円、一昨年2,439億円)、売上総利益1,756億円(昨年1,496億円、一昨年1,249億円)、 営業利益557億円(昨年423億円、一昨年274億円)となっています。
売上が18.7%アップ、売上総利益が17%アップ、営業利益が32%アップしており、大きな伸びとなっています。
売上総利益率(=粗利率)が50%を超えています。
販管費を見てみると、店舗展開で必要な人件費及び地代家賃がとびぬけて多く、共に300億円を超えています。
これだけ使っていても営業利益率は非常に高いです(後程説明)。
単ある小売業ではないことがわかります。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信12P)。
期末残高で1,728億円(昨年1,482億円、一昨年1,518億円)です。返さなくていいお金を集めて、店舗に投資し、その投資を使って大きな売上利益を上げて、現金についても増えておりとても優秀な会社です。
ABCマートはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?
直接提供モデルで自社製品の実物商品を販売するモデル
(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
一見仕入れ販売に感じますが、メインの売上は自社生産もしくはメーカーとの共同開発商品です。その他で仕入れ販売もおこなっています。
販売方法については、店舗だけでなく、ネットでの売上も伸ばそうとしています。
ABCマート利益率が高い理由の「詳細解説」
他社比較
売上総利益率・営業利益率とも他社より高い
実際他社と比べてどれ位の利益率かを比べてみます。
靴の小売販売を主にする上場会社の決算短信から数字を比較してみました。
チヨダさんは、SHOE PLAZAや東京靴流通センターを展開している会社です。
ジーフットさんは、イオングループの会社でASBEEをメインに展開しています。
リーガルコーポレーションさんは、リーガルブランドで紳士靴を販売している会社さんです。
売上総利益率が他社より、8Pから5P高い。営業利益率に関しては、圧倒的に高いのです。
※時勢の売上増減を鑑み、2019年度期の決算数字を使っています。
売上総利益率は差がないように感じると思いますが、5P違えば、ABCマートさんの売上規模で言うと大きく変わります。
高い利益率のポイント①
自社製造
ユニクロさんのように自社で企画製造販売を一括しておこなっている商品が多くあります。
スポーツ系以外は基本的に商標権を買い取り、自社で企画製造販売を行っています。
製造したものちゃんと売り切れば高利益率となる方法です。ただ、売れなければ低利益率となりますので、ハイリスクハイリターンを選択しています。
高利益率のポイント②
共同開発商品
仕入販売に見えるスポーツシューズの多くが、メーカーとの共同開発商品かつABCマート限定商品です。
実はABCマート限定商品が多いのです。これにより、ほぼ自社製造販売と同じ仕組みで商売ができるのです。
また、仕入れ販売のシェアは実は低いものの、実数は非常に多いので、仕入れコストも安くなります。
高利益率のポイント③
1,519店もある店舗網
売れる商品作りの企画ノウハウがある上に、この高利益率な商品を大量に販売する店舗網を持っています。
店舗を持っているだけでは売れないのですが、売れる商品開発力を合わせて持っているのです。
これらの3つのポイントでABCマートさんの高利益率が担保されているのです。
ABCマートの利益率が高い理由の「まとめ」
・売上の6割~7割が、自社生産もしくはメーカーとの共同開発商品
・上記商品を大量販売できる店舗網を持っている
儲かる会社には、儲かる理由があります。ただの小売店ではなかったのです。
他の企業の解説もしております。
(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ネット印刷ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター、楽々精算ラクス)
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。
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