小売業は一般的には低利益率だと言われています。ただ、ABCマートさんは、他と比べると利益率が高い商売をしています。
誰もが、一度はABCマートで靴を買ったことがあるかと思いますし、その際に、とても安かったと感じたと思います。
この記事では、ABCマートさんがどのような工夫をして、利益率を高めているのか?をわかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
ABCマート高利益率の理由
- 売上の75%は自社生産もしくは、メーカーとの共同開発商品を販売している
- その商品を大量販売できる店舗網を持っている
この2点が主たる高利益率の理由です。
スポーツ系のシューズがメインの販売だと店舗からは感じますし、実際そうなのです。
店舗には良く知られているメーカーのシューズが沢山並んでおり、仕入れ販売が主だと感じますが、実は単純は仕入販売は25%しかないのです。
そして、どこにでもある全国に張り巡らせた店舗網で、大量に販売しています。
他社商品の仕入販売は、通常利益率は低くなるのですが、上記の仕組みで高利益率となる仕組みを作っているのです。
ABCマート財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ABCマートさんがどんな会社か?を公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
ABCマートの2022年2月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2022年2月期決算短信(連結)をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10=10百万円=1,000万円や10,000=10,000千円=1,000万円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
2022年度2月期の数字を見ると売上が2,439億円、売上総利益約1,249億円、 営業利益274億円以上となっています。
売上高総利益率50%以上となっており、小売業としては驚異的な数字です。
そもそも安い販売価格設定の上に、2足目半額なども通年で行っているのにこの売上高総利益率なのです。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信5.6P参照)。
過去の利益の積み上げである利益余剰金で2,282億円で負債純資産合計の約72%を占め、自己資本比率が90%近くもあります。
借入金については、この規模なのに、短期で14億程度しかないです。実質無借金経営です。
返さなくてもいいお金(株式や過去の利益の積み上げ分)がほとんどで、経営の安定度は抜群ですね。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
商品(在庫)と店舗(建物含む)に大きな投資をしています。
資産で大きいものは、現金で1,418億円以上、在庫で598億円、建物で300億以上、敷金及び保証金で260億円あります。
商品販売であることと店舗1,300店以上持っているので、在庫と店舗の敷金及び保証金が莫大な金額となっています。
このことから、商品在庫と店舗(建物含む)に大きな投資をしているとわかりますね。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信7P)。
売上が2,439億円、売上総利益約1,249億円、 営業利益274億円以上となっています。
販管費を見てみると、店舗展開で必要な人件費及び地代家賃がとびぬけて多いですね。共に200億円以上ですね。
これだけ使っていても営業利益率は非常に高いです(後程説明)。
単ある小売業ではないことがここからわかります。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信11P)。
期末残高で1,518億円です。返さなくていいお金を集めて、店舗に投資し、その投資を使って大きな売上利益を上げて、現金量についても豊富な優秀な会社です。
ABCマートはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで自社製品の実物商品を販売するモデルです。
一見仕入れ販売に見えますが、メインがそうでないところがポイントです。
販売方法については、店舗だけでなく、ネットでの売上も伸ばそうとしています。
ABCマート高利益率の詳細解説
他社比較
実際他社と比べてどれ位の利益率かを比べてみます。
靴の小売販売を主にする上場会社の決算短信から数字を比較してみました。

チヨダさんは、SHOE PLAZAや東京靴流通センターを展開している会社です。
ジーフットさんは、イオングループの会社でASBEEをメインに展開しています。
リーガルコーポレーションさんは、リーガルブランドで紳士靴を販売している会社さんです。
売上総利益率が他社より、8Pから5P高い。営業利益率に関しては、圧倒的に高いのです。
※最近の情勢を鑑み、2019年度期の決算数字を使っています。
売上総利益率は差がないように感じると思いますが、5P違えば、ABCマートさんの売上規模で言うと大きく変わります。
もし売上総利益率が実際の53%ではなく48%266,703だったとします。そうすると、売上266,703百万円×48%=売上総利益128,017百万円となります。
実施の売上総利益は140,545百万円ですので、差し引きすると、12,528百万円=およそ125億円の差となります。
売上総利益率の5Pの差が、125億円の利益の差となってくるのです。
高利益率のポイント①自社製造
ユニクロさんのように自社で企画製造販売を一括して行っています
スポーツ系以外は基本的に商標権を買い取り、自社で企画製造販売を行っています。
製造したものちゃんと売り切れば高利益率となる方法です。ただ、売れなければ低利益率となりますので、ハイリスクハイリターンを選択しています。
高利益率のポイント②共同開発
仕入販売に見えるスポーツシューズの半分以上が、実はメーカーとの共同開発商品かつABCマート限定商品です。
実はABCマート限定商品が多いのです。これにより、ほぼ自社製造販売と同じ仕組みで商売ができてるのです。
また、仕入れ販売のシェアは実は低いものの、実数は非常に多いので、仕入れコストも安くなります。
高利益率のポイント③店舗網
売れる商品作りの企画ノウハウがある上に、この高利益率な商品を大量に販売する店舗網を持っています。
店舗を持っているだけでは売れないのですが、売れる商品開発力を合わせて持っているのですね。
これらの3つのポイントでABCマートさんの高利益率が担保されているのです。
ABCマート高利益率の理由のまとめ
- 売上の75%は自社生産もしくは、メーカーとの共同開発商品の販売
- その商品を大量販売できる店舗を持っている
このように儲かる会社には、儲かる理由があります。詳細は別にしても、何かポイントかは覚えておくといいですよ。
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また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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