平均年収の高さで有名なキーエンスさん。給料をたくさん出した上でも、高い利益率となる仕組みがあります。
なぜこのような高い利益率を稼ぎ出すことができるのか?
よく、ファブレス経営や営業力の高さが高利益率の理由だといわれますが、そうではありません。
この記事では、キーエンスさんの高利益率の理由について、わかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つ、よしつが書いています。
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キーエンス高い利益率の本当の理由とは?
- 他社にない圧倒的な商品力
- 最大効率で行われる営業
この2点が主たる高利益率の理由です。
キーエンス財務三表から見るとどんな会社?
まずは、キーエンスさんがどんな会社か?を公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
上記の流れに現在の業績を加えて見ていきます。
キーエンスの2023年3月期の公表されている決算短信を元に説明します。
上記の場所から、2023年3月期決算短信(連結)をご覧ください。
見方の注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表では、数字はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。10,000,000円は、10百万円、10,000千円と表示されます。
表の右上などに単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
キーエンスさんの主力商品は、工場内で使用するさまざまな機器です。センサーなどが有名です。
2023年度3月期の数字を見ると売上が9,224億円(昨年7,552億円)、売上総利益7,547億円(昨年6,212億円)、営業利益4,989億円(昨年4,180億円)となっております。
売上高総利益率約82%、営業利益率54%以上となっており、製造業としては、ありえない利益率です。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?を見ていきましょう。貸借対照表の右側です(決算短信4.5P参照)。
ほとんどが「返済しなくていいお金」でお金を集めています。
借入金は長期短期ともなく、過去からの利益余剰金でなんと2兆4,038億円(昨年2兆1,018億円)もあり、右側の負債純資産合計の90%にもなります。
ちなみに自己資本比率は94%もあります。
次に、集めたお金をどう投資しているのか?を見てみましょう。貸借対照表左側です。
有価証券で1兆2,067億円(昨年9,397億円)、現金で4,337億円(昨年4,643億円)が額の大きい項目です。
投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
売上と利益をもう一度見てみます(決算短信6.7P)。
2023年度3月期の数字を見ると売上が9,224億円(昨年7,552億円)、売上総利益7,547億円(昨年6,212億円)、営業利益4,989億円(昨年4,180億円)です。売上高総利益率約82%、営業利益率が54%となっており、ものすごい高い利益率です。
上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信10P)。
期末残高で5,000億円減っています。有価証券を積み増したことと、法人税、配当金が増えたためです。
財務3表のどの数字を見ても、儲かっていることを表す数字しか出てきません。
社員への平均給与支払額が日本でトップクラスの会社です。人件費に大きなお金を掛けているにもかかわらず、これだけの利益が出ているのは、売上総利益率(粗利)が高いからです。
キーエンスはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで、自社製品の実物商品を販売するモデルです。
日本の製造業の平均売上総利益率が20%強のところ、キーエンスさんは82%となっているのが、明確な特徴です。
キーエンス高利益率の詳細解説
よくキーエンスさんの高利益率の理由が、営業力がすごいとか、ファブレス経営(工場を持たない製造業)とか言われます。
でも、本当は違います。
とっても単純で、他社に負けない圧倒的に強い製品を、最大効率で営業組織が販売しているからです。
高利益率のポイント①他社にない圧倒的な製品力
商品開発のポリシー
商品開発のポリシーは、粗利(=売上総利益)率が80%以上の商品を開発することです。
当然製造業でこれを実現するためには、ニーズがあることが前提で、他社にないもの(世界初、業界初など)を販売しないとこの利益率にはなりません。
したがって、この利益率を稼ぐことができる商品開発を一番大事にしている会社なのです。その結果、世界初、業界初の商品が全体の7割を占めているそうです。
販売価格の決め方
競合がいない商品を開発することが前提のため、顧客がいくらの価値と認めるか?で価格を決めることができます。
原価にいくらのせるかという決め方ではありません。
ある製品を使えば、例えば不良品が5億円分減るとします。であれば、3億円で販売しようと考えるのです。顧客は2億円コスト削減できるからです。
ただし、3億円の商品の原価が、6,000万円以下(利益率80%以上)にならないと製品化の承認がおりないのです。
ここで、キーエンスさんのWebサイトを見てみてください。
とてもたくさんの商品が紹介されています。それらすべてがこの基準をクリアしているのです。
これだけたくさんの条件をクリアした製品を販売しているということは、当然売上高総利益率がとても高くなるのです。
当たり前と言えば当たり前ですが、この当たり前をずっと行う、当たり前ではない経営を行っているとことがキーエンスさんのすごさです。
高利益率のポイント②最大効率営業とニーズの把握を行う営業組織
では、これだけの商品力があるものを販売する営業組織は、どんなことが求められるのでしょうか?
- 時間当たりの売上の最大化
- 現場のニーズの把握と社内への伝達
この2つです。
この2つを実現するために別会社へ販売を委託する選択はできません。マネジメントが聞かないことと、お客様のニーズを吸い上げにくいからです。
だから直販体制を構築し、上記2つを徹底的に実行しています。
時間当たりの売上の最大化
キーエンスさんは、1分日報が有名です。分単位で行動の現状を把握し、課題を設定し、日々改善しています。
翌日朝から夕方まで、毎日必ずびっしりアポイントが入っている状態は当たり前です。その上、前日の夜に、訪問予定顧客すべての商談ロープレを行っています。
商談の合間に無駄な時間を過ごさない、無駄な商談を行わないことが徹底されています。
その上、値引き対応もしません。仮に受けるとしても、4階層位上の上司の承認が必要になるそうです。
もちろん個別の企画提案書も作らない。すべて用意されたものを使っています。
個人個人にやり方を任せるのではなく、ベストな方法を全員が同じようにできるようにしているのです。
商品力があるわけですから、いかに効率よく営業活動を行うかが大事だという考え方からすると、このような業務の進め方になります。
ちなみに接待も禁止みたいです。その必要がないのです。接待という手法で仲良くなったりしなくても、商談機会を作ることができ販売できるからです。
もっと言えば、その時間を使って、翌日の商談のロープレをやった方が売上アップとなるのです。
現場のニーズの把握と社内への伝達
もうひとつ大事な任務を負っています。それは顧客ニーズの発掘及び社内への共有です。
この声を集めて、課題を束にして解決する製品を開発しています。
絶対に、顧客ごとで発生する個別課題をオーダーメイドで解決しません。大変手間がかかり、効率化の真逆になるためです。
きっと既存商品のカスタマイズもしていないはずです。
このように、すべてに一貫した方針があるのです。
キーエンス高利益率の理由のまとめ
- 他社にない圧倒的な商品力
- 最大効率で行われる営業
この2点を実行し続けていることが、キーエンスさんの非常識な利益率の理由です。
儲かる会社には、儲かる理由があります。当たり前のことですが、それができないのです。
他の企業の解説もしております(オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター、ラクス)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントを知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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