オービックさんは、システム構築会社なのに、フルオーダーメイドにしないことで、高成長しつつ超高利益率を実現しています。
なんと、29期連続営業利益が増益です。さらにすごいのが、営業利益率が右肩上がりで上昇していることです。
売上を伸ばしつつ、営業利益率を上げていくことができているところは本当にすごいことです。
時価総額はなんと2兆円を超えています(2023年4月時点)。
オービックというワードを聞けば、「勘定奉行」と思い浮かぶ人は多いかと思います。
ただ、「勘定奉行」は株式会社オービックビジネスコンサルタントさんの商品です。ちなみにオービックと名前がついている通り、株式会社オービックの関連会社です。
この記事では、あまり世間では知られていないすごい会社である、株式会社オービックさんの高利益率かつ事業成長している理由について解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが、記事を書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
オービックの高成長かつ高利益率の理由とは?
- 営業対象を特定の業界及び企業規模に絞った
- フルオーダーメイドが基本のシステム構築会社なのに、パッケージ化に成功した
この2点が高成長かつ高利益率の主たる理由です。
2のパッケージ化と言ってもオーダー部分があるのですが、統一部分を大幅に導入できたことが大きい要素です。
そのためにも、1のターゲットの絞りが必要だったのです。詳細は後述しますが、だからこその直販体制及び自社生産体制なのです。
オービックはどんな会社?
オービックさんは、情報システムの構築・運用を提供しています。自社開発・直販販売で会計・販売・人事・生産などのシステムを取り扱っています。
オービックを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、オービックさんがどんな会社か?を公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れにそって、現在の業績を見ていきましょう。
オービックさんの2023年3月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

上記の場所から、2023年3月期決算短信をご覧ください。
見方の注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、数字は、カンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。10,000,000円では、10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は、約1,002億円(昨年約895億円)、売上総利益約772億円(昨年約680億円)、営業利益は約625億円(昨年約541億円)です。
売上は前年度と比べて11.9%伸びています。特筆すべきは売上総利益率が77%となっており、昨年の76%を上回っていることです。システム構築会社なのに圧倒的に高い利益率の上に、利益率を伸ばしているのです。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?を見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信6P参照)。
集めたお金の負債純資産合計の80%を超える2,955億円(昨年2,660億円)を、過去の利益の積み上げである利益余剰金となっています。
当然銀行借り入れはなく、超優良企業です。
では、それをどう投資しているのか?を見てみましょう。貸借対照表左側です。
現金で1,563億円、建物及び建造物+土地で595億円、有価証券で1,372億円となっています。
様々な用途で使える現金を沢山持っておくことで、事業運営をおこなっています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信7.8P)。
売上は、約1,002億円(昨年約895億円)、売上総利益約772億円(昨年約680億円)、営業利益は約625億円(昨年約541億円)です。
売上総利益率が77%とシステムインテグレーション業界では圧倒的な高さとなっています。
システムインテグレ―ション業界は基本、各社ごとのカスタマイズで、システムエンジニアを中心に人件費が沢山かかります。
ただ、オービックさんは、パッケージ化された半製品を、カスタマイズするだけの仕組みを作ったことで、この利益率となっています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信11P)。
期末残高は1,563億あります。昨年と比べて336億円増えています。
昨年との大きな違いは、有価証券取得額が減ったことです。その分キャッシュが増えています。
オービックはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

直接提供モデルです。特徴的なのは、システム構築及び販売体制についてすべて自社で行っている点です。
(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
オービックの高成長かつ高利益率の理由を「詳細解説」
営業対象を特定の業界及び企業規模に絞った
どのような規模のどのような業界に、どのような「不」があったのかを見てみましょう。
どんな「不」を解消しようと考えたのか?
- 手計算や基本ソフト(エクセル・アクセス等)を使っているが、対応しきれない
- 自社の業務フローをシステム化したいが、フルオーダーメイドだとお金がかかりすぎる
- 現状の業務フローが完全ではないため、今後大きな変更となる可能性がある
- ただ、システム構築した方が絶対に効率化できることが分かっている
このような不を解消しようと考えたのでしょう。
どのような「規模」の会社がこのような「不」を持っているか?
まず大手企業が思い浮かびます。
ただ、この層は、自分たちの業務フローが確立しています。また、資金もあり、業務範囲が広く、多岐にまたがるため投資効果が高いため、自社用のシステム構築を要望されます。
そうなると完全オーダーメイドかつ大規模構築となるため、上記の「不」とは違う「不」となり、ターゲット外です。
小規模会社では、どうでしょうか?
そもそも、システム構築しなくても、基本ソフトで対応できます。逆に、システムを組んでしまうと、オーバースペックとなり、費用対効果が悪くなり、こちらもターゲット外です。
ということで、この中間である中規模の会社をメインターゲットとしました。
どのような「業界」がこのような「不」を持っているか?
どの業界でも、中規模の会社は同じような課題を抱えています。
中規模クラスの会社であれば、多数の仕入れ先・顧客との取引があります。業界によって大きく変わるわけではなく、中規模であればどの業界も同じような「不」を持っています。
ただし、各業界で抱えている「不」は全然違うので、システムの内容に関しては、全然違う内容です。
したがって、業界を絞って直販体制の営業担当が訪問し、課題を把握した上で解決策=システム化を構築するようにしました。
フルオーダーメイドになりがちなシステム構築会社なのに、パッケージ化に成功した
このパッケージ化が一番のポイントです。現在構築しているものをコピーして提供するのであれば、ほぼ原価はかかりません。
これが一番のポイントです。
中規模会社は、システム化はしたいがお金はかけたくないという思いがあるので、自社の仕組みを完全に網羅したシステムではなく、ある程度出来合いのものに、自社の仕組みを合わすことを考えます。
この「不」と「選択の妥協ポイント」の妙でパッケージ化ができたのです。
もちろんできるだけたくさんの会社に対応できるパッケージ化が、システム開発のポイントとなりますので、開発はすべて自社で行う選択をしています。
このように、各業界に直販体制を持ち、そこから吸い上げるニーズを自社の開発陣がパッケージ化することで、顧客ごとのシステムを開発することなく、サービスを提供できる仕組みを作ったのです。
これが成功のポイントです。
オービックの高利益率の理由のまとめ
- 営業対象を特定の業界及び企業規模に絞った
- フルオーダーメイドになりがちなシステム構築会社なのに、パッケージ化に成功した
利益率が高いということは他社ではできないサービスを提供出ているということです。そうでないと価格競争になります。
ただ、他社ができなくても、フルオーダーメイドでは利益率はかなり低くなります。
このジレンマを解決したことが高利益率を実現できるポイントです。
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