損益計算書(P/L)の中で表される利益の増減と、会社にある現金の増減は、同じ金額ではありません。
銀行からお金を借りる、設備投資したものを支払った時に費用計上するのではなく、数年に分けて費用計上するなどが原因です。
そのため、キャッシュの増減を表すキャッシュフロー計算書の作成・公表を2,000年から上場会社に義務付けられました。
この記事では、キャッシュの増減と総量がわかる「キャッシュフロー計算書(C/F)」の概要を、ざっくり理解した人向けに解説しています。
キャッシュ=現金及現金同等物という意味ですが、ここではよりイメージしやすい言葉である現金という言葉を使います。
この記事は、
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
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これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい!「財務三表(B/S、P/L、C/F)」はひとつの考え方でつなげて理解する)
財務三表で会社の活動の何が分かるか?

上図は「会社の活動」を1枚の図で表しています。財務三表は、「会社の活動」に現金を投入し、その結果現金がどれだけ増えたか?の「プロセス」と「結果」を表しています。その中で、キャッシュフロー計算書(C/F)は現金の増減が分かります。
(上図の詳しい説明は、「1枚の図」と「一言で要約+詳細解説」でビジネス基礎知識をわかりやすく解説を参照)
キャッシュフロー計算書(C/F)とは?

- 営業キャッシュフローとは、本業での現金の増減
- 投資キャッシュフローとは、資産や有価証券の投資・売却での現金の増減
- 財務キャッシュフローとは、銀行の借入返済や株式発行等での現金の増減
上記3つの合計で昨年と比べて現金が増減したか?過去累積プラス今年度で総額が増減したのか?がわかるものです。
会社は、利益が出ていても、現金がなくなれば倒産します。黒字倒産と言います。逆に言えば、赤字でも、現金があれば倒産しません。
だから、現金がどのように増減しているかを知る必要があるのです。
財務三表の中でのキャッシュフロー計算書(C/F)の位置づけ
キャッシュフロー計算書(C/F)とは、財務三表のひとつです。
財務三表は、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の3つです。
会社とは、現金を使って現金を増やす器ですが、この活動は以下となります。
- 現金を集める
- 集めた現金を使って投資する
- 投資したものを使って売上を上げる
- 売上を上げるために使った経費を差し引く=利益
- これらの活動で現金が増えたのかどうかを確認する
事業活動は上記の流れですが、1.2を貸借対照表(B/S)、3.4を損益計算書(P/L)、5をキャッシュフロー計算書(C/F)が表しています。
キャッシュフロー計算書(C/F)は、会社の活動の一番最後の部分を数値で表しています。このように財務三表をつなげて、全体の流れで見ると理解がしやすいです。
(詳しくは「財務三表(B/S、P/L、C/F)」はひとつの考え方でつなげて理解する」を参照)
キャッシュフロー計算書(C/F)を簡単に表すと以下です。
キャッシュフロー計算書(C/F)の詳細説明
そもそもキャッシュフローとは何か?から説明します。
キャッシュフローとは?
そもそもキャッシュとは何か?現金及び現金同等物です。現金同等物とは、すぐに現金にできるものです。
そのキャッシュの流れを表したものがキャッシュフローといいます。
そもそもなぜキャッシュフロー計算書が必要なのか?
損益計算書(P/L)を見れば利益額がわかるので、わざわざキャッシュフロー計算書は必要ないのでは?と思う方もいます。
ただ、損益計算書(P/L)の利益と会社にある現金はイコールではないのです。
理由は以下3点です。
- 売上計上と同時にお金が振り込まれるわけではない
- 減価償却という会計上のルールで費用計上される
- 銀行等からお金を借りても利益には関係しない
それぞれ説明していきます。
売上計上と同時にお金が振り込まれるわけではない
私たちがネットショップでクレジットカード決済する時、クレジットカードを登録して、購入ボタンを押します。
押した瞬間取引の完了となりますが、自分の口座からはその日ではなく、しばらくたった後に引き落としとなります。
会社対会社でも同じように「信用取引=掛取引」と言って、購入日=売上計上日からしばらくたってから、お金を振込等で支払ってもらうパターンがほとんどです。
(詳しくは支払いサイト・売掛金・買掛金をまとめてわかりやすく解説参照)
例えば3月末決算の会社で、3月20日に商品を申込んで頂き、3月25日に商品を納品した場合、その期の売上となります。
ただ、実質の代金の入金は4月以降となります。
損益計算書(P/L)では発生主義(基本納品日)を取っているため、売上計上と入金が期をまたぐことがあるのです。
売上は前の期なのに、現金を払ってもらうは次の期となり、3月末で締めた利益と現金が変わってしまいます。
減価償却という会計上のルールで費用計上される
ある資産を100万円で購入したとします。この資産は5年使えるので、5年に分割して費用計上しなさいという会計上のルールがあります。
これを減価償却と言います。
100万円で購入した段階で100万円の現金は支払うのですが、損益計算書(P/L)では、毎年20万円を5年間に分けて計上するのです。
これで現金はその期に100万円減っているのに、費用は20万円しか計上しないので、利益と現金が変わってしまいます。
銀行等からお金を借りても利益には関係しない
損益計算書(P/L)には、お金を借りても、表記はされません。100万円借りたら、現金は100万円増えるのに、利益は増えないのです。
この3つから利益と現金はイコールではないのです。
営業キャッシュフローとは?
本業での現金の増減です。営業キャッシュフローというので、損益計算書(P/L)の営業利益と混同しないでください。
投資及び財務キャッシュフロー以外のすべての現金の増減が、ここに記載されます。
ただ、基本的な考え方は、最終的に利益が出たら現金が増え、損失を出したら現金が減ります。
但し、すでに説明したように、利益と現金は変わる場合があります。
投資キャッシュフローとは?
資産や有価証券等の購入・売却に伴う現金の増減を表します。どれだけ投資したのか?がわかります。
商品や製品を作るために、工場設立やソフトウェアを購入したもの等です。
投資することで、生産量や効率アップや、新しい商品を作ることができますので、会社にとっては必ず必要なことです。
財務キャッシュフローとは?
銀行からの借り入れや返済、株式の発行等での現金の増減を表しています。
お金を借りる・集めると現金が増え、お金を返せば、現金が減るということです。
現金の増減と総額
営業・投資・財務キャッシュフローを足し引きしたものが、その期の現金の増減となります。
また、期初の現金にこの数字を加えると、その会社が持っている現金の総額(期末残高)が出ます。
キャッシュフロー計算書(C/F)の見方
営業キャッシュフロー
当然プラスがいいですね。マイナスになっているのは、本業で儲かっていないことです。
投資キャッシュフロー
会社の成長と投資は切っても切れない関係です。
成長するためには必ず投資が必要です。投資するということは、現金はマイナスになりますね。
投資しないということは、今の手持ちの強みだけで勝負しないといけない。
強みは永続しないものなので、将来的に稼げなくなります。
(詳しくは「プロダクトライフサイクル」超簡単解説&使い方紹介を参照)
ただ、営業キャッシュフローや財務キャッシュフローで現金がプラスにならないと、投資したくても投資ができません。
したがって、本当は投資したいが、投資できずに結果現金を使わずにプラスになるという場合もあります。
財務キャッシュフロー
銀行等からの借金は、金利を上乗せして返さないといけないので、増やしたくない。
株式を発行してお金を集めることができれば、返さなくていいお金が入るのでうれしい。
お金は借りたくないけど、現金がないと投資もできないし、日々必要な運転資金も必要となる。
このあたりが、財務キャッシュフローの難しさです。どちらがいいとは一概に言えない。
ということでこれらの3つのプラスマイナスの組合せを見たときに、この会社の戦略や置かれている状態が見えてきます。
増減や総額の意味
会社が倒産するときは、必ずおきていることがあります。現金がなくなるという事実です。
どんなに最終利益が赤字であろうが、直接このことで倒産はしません。
だから、現金の増減や総額というのは、会社の生死に関わるとっても大事な問題です。
極論を言えば、利益よりも現金が大事なのです。
キャッシュフロー計算書(C/F)のまとめ
- 利益と現金はイコールではない→信用取引や会計ルールによる
- 現金がどこで増減したかわかる→営業・投資・財務のどれで増減したかわかる
- 会社は利益より現金が大事→現金がなくなれば倒産
上場会社では、キャッシュフロー計算書を作成・公表にしないといけませんが、その他の企業では公表は任意となっています。
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