「ZOZO」の高成長と高い販売手数料の仕組みを最新決算含めて解説

6.成長企業の成長の理由
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ZOZO TOWNで有名な株式会社ZOZOさんは、アパレルメーカーさんから高い販売手数料をもらっています。

メーカーが払う販売手数料が、商品販売価格の30%(推定)を超える設定となっています。

楽天さんの販売手数料の10%強(プランにより大きく変わる)と比べるとはるかに高い設定となっています。

実はこの部分にZOZOさんの戦略が、しっかり埋め込まれています。

この記事では、ZOZOさんがどのような工夫をして、高い利益率で成長を続けているのか?を最新決算含めてわかりやすく解説します。

この記事は、
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説

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ZOZOの高い販売手数料の仕組みとは?

  1. 30%を超える販売手数料率
  2. メーカーはZOZOの倉庫に商品を送るだけ 他の業務はすべてZOZOが実施
  3. ただし在庫はメーカーのもの

この3点がポイントです。

ZOZOの財務三表から見るとどんな会社?

ZOZOさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見ます。

会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。

  1. お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
  2. 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
  3. 上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)

上記の流れに現在の業績を加えて、順番に見ていきます。

ZOZOさんの2023年3月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

IR News - 株式会社ZOZO
The Investor Relations page contains information about ZOZO, Inc. business and business reports for stockholders. This i...

上記の場所から、2023年3月期決算短信をご覧ください。

注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円表記となっています。

財務諸表等では、カンマごとで切られて表示されています。例えば、10,000,000円の場合、10百万円や10,000千円と表示されます。

表の右上等に表記されている単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に慣れましょう。

ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。

直近の業績

売上は1,834億円(昨年1,662億円)、売上総利益1,713億円(1,562億円)、営業利益564億円(昨年497億円)となりました。

昨年と比べて売り上げは10%以上伸ばしています。1,000億円以上の売上での2ケタ成長ってすごいです。

お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?を見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信10.11P参照)。

積みあがった利益余剰金1,186億円(昨年971億円)、短期借入金204億円(昨年202億円)が多い科目となっています。ちなみに自己資本比率は49%です。

次に、どう投資しているのか?を見てみましょう。貸借対照表左側です。

現金で691億円(昨年655億円)、建物で104億円となっています。

建物は物流拠点に投資しているのでしょう。次々に物流拠点を作っています。

投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

次に、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信12.13P)。

売上は1,834億円(昨年1,662億円)、売上総利益1,713億円(1,562億円)、営業利益564億円(昨年497億円)となりました。

売上総利益率は93%、営業利益率は31%となっており、とっても高利益率です。

特に、売上総利益率はネット企業特有の利益率です。100億売り上げたら93億も売上総利益(粗利)になります。

これだけの利益率だと最終利益も大きくなります。結果として現金も増え投資もしやすくなります。

ちなみに、商品を仕入れて販売する会社なら、一般的な売上高総利益率は平均で30%に届かない位です。

ZOZOさんは、洋服1点販売しても、アパレルメーカーから預かった商品を売っているだけなので、売上原価はほぼ発生しないのです。

売上総利益から、販管費を引いたら営業利益となります。その販管費で多く使っているのは、荷造運搬費(宅配料)で324億円、広告宣伝費123億円です。

荷造運搬費が多くかかっているのは、物流倉庫を抱えて発送費もZOZOさんが負担しているからです。

上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

キャッシュの増減を見てみます(決算短信17.18P)。

期末残高で741億円(昨年655億円)となっています。有形固定資産90億円の取得(物流拠点用)でキャッシュは使っていますが、その他も出入りで最終的に増えました。

ZOZOはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)

マッチングモデルの典型的なパターンです。サイトに沢山の人を集めて、アパレルメーカーの商材をサイトに沢山掲載し、マッチング(販売)させるモデルです。

数年前の前社長の前澤さんの動きにより、ZOZOさんを知らなかった人に対する知名度が格段に上がり、サイトへの流入増に成功しています。

さらにYahoo傘下に入り、yahooと連携することで、新しい顧客獲得ができています。

一時、有名アパレルメーカーの離脱もありましたが、結局再参画しており、掲載されている商材は豊富なので、どれだけアパレルを買う人をZOZO TOWNに集めることができるか?とアパレル以外をどれだけ伸ばすか?が今後の成長のポイントです。

ZOZOの高い手数料率の詳細解説

高い手数料率の理由を解説をしていきます。

高い販売手数料の理由①委託範囲が広い

ZOZOさんの委託範囲は、アパレルメーカーがZOZOの倉庫に商品を送った、後工程すべてを委託しています。

具体的には、商品を受取り、倉庫で保管し、消費者に発送する一連の流れを行っています。

実はそれだけでなく、商品のサイト掲載用の画像を撮影し、説明文含めてZOZO TOWNのサイトに掲載する業務も行っています。

これだけの業務を行っているので、販売手数料が高いのです。

楽天さんでは、サイトの情報はすべて販売会社が作成し、商品発送もすべて販売会社が行っています。

当然、業務はとっても煩雑となり、これらの業務をおこなうためにZOZOさんの社員数は増えます。

ZOZOへ出店するアパレルメーカーは、販売以降まるごと外注するかどうかを、ZOZO TOWNで売れる販売量も踏まえて判断しています。

結果、一括でZOZOさんに委託するメーカーが多いというのは、メリットが大きいからです。

高い販売手数料の理由②百貨店に近い販売形態

更にこの委託形態について、アパレルメーカーがなれていたことも大きな理由です。

長い間、アパレルメーカーが、メインの販路として販売してもらっている百貨店の販売形態と近いのです。

百貨店も同じように委託形式の販売です。商品を百貨店に届けてもらい、百貨店が販売する。そして20~40%の販売手数料をアパレルメーカーからもらっているのです。

アパレルメーカーはテナント料を払っているわけではなく、販売手数料を払っているのです。

だから、ZOZOのように商品を送付した後工程すべてを委託する、販売モデルが受け入れられやすかったのでしょう。

※百貨店も最近はテナント契約(場所代での契約)が多くなってきています。

在庫はZOZOのものではない

アパレルメーカーから届く洋服は誰のものか?

在庫管理や発送等はZOZOが行っていますが、所有者はアパレルメーカーです

ということは、売れ残りリスクはすべてアパレルメーカーが負っているのです。

ZOZOさんは売れなければ返してしまえばいいのです。製造コストはすべてアパレルメーカーが持ちます。

昔から、アパレルメーカーさんがバーゲンで値引き販売を行うのは、売れ残りを売ってしまいたいからなのです。

どうせ捨てるのであれば、少しでもお金に換えた方が、損失額が減るからです。

(この値引き販売の詳しい説明は、自社商品を値引き販売する際、どこまで値下げ可能なのか?をわかりやすく解説を参照)

ZOZO高利益率の理由のまとめ

  1. 30%を超える手数料率
  2. メーカーはZOZOの倉庫に送品を送るだけで、他の業務はすべてZOZOが実施
  3. ただし在庫はメーカーのもの

委託範囲が多いことが高い手数料をもらえる理由です。流通のコストは負担しますが、在庫リスクは背負わないので、販売量が多ければリスクが少ない商売となっています。

アパレルならZOZO TOWNという認知が広がり、アパレルメーカーの販路としてZOZO TOWNに商品を出さないと売れない時代となってきました。

他の企業の解説もしております(キーエンスオービック出前館モノタロウエムスリーワークマンABCマートビズリーチメルカリサイボウズ無印良品ネット印刷ラクスルfreeeSansanダイキン工業日本M&Aセンター楽々精算ラクス)。

各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。

また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。

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