約20年で2,250億円の売上を超える企業に成長したモノタロウさん。中小企業の工場・現場関係者の「不」を取り除くサービスを展開しています。
なんと1,900万点の商品を扱う規模になっています。
この記事では、モノタロウさんの高成長の理由をわかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
モノタロウ 急成長の理由とは?
- 1,900万点の品揃え
- 当日出荷対象商品が61万点ある
- 価格の透明性を確保
- 中小企業が抱える購買の不を解決したこと
これらの点が高成長の主たる理由です。
モノタロウはどんな会社?
現場を支えるネットストア「モノタロウ」を運営している会社です。工場や現場関係者が使う間接資材を自社商品の販売と他社商品の代売を行っています。
モノタロウを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、モノタロウさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
モノタロウさんの2022年12月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2022年12月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は、約2,260億円、売上総利益約654億円、営業利益約262億円です。
1,000億円を超える売上規模で、昨年と比べて19%も売上を伸ばしています。伸ばし額は360億円以上です。
また、売上総利益率が29%となっており、小売業としては、悪くない利益率(安売りをしているわけではない)で大きく成長しています。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信4.5P参照)。
利益余剰金で692億円です。利益余剰金は過去の利益の積み上げなので、この額が大きいのは、優良企業の典型です。負債純資産合計の6割を超える金額を利益余剰金で占めています。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
様々な用途につかえる現金で約89億円、法人取引が多い会社なので、受取手形・売掛金で252億円あります。
更に目立つのが、商品で189億円。当日出荷するために、在庫を沢山抱えていることがここでわかります。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信6P)。
売上は、約2,260億円、売上総利益約654億円、営業利益約262億円です。
約20年で2,260億円の売上まで拡大しているのは本当にすごいことです。大きなマーケットに大きなソリューションを提供したことがここでわかります。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信9P)。
営業活動で得た約155億円の現金を有形固定資産95億円と配当金で61億円、無形固定資産20億円使っています。
有形・無形固定資産の投資は増やしており、トータルとしては、入る現金より出ていく現金が多くなっています。
現金を減らしてでも、倉庫・配送関連及びWebサイト、システム構築への投資をおこなっているのがわかります。
モノタロウはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
小売りの直接提供モデルですね。商品を仕入れて、Webで販売しています。最近は自社商品販売を増やしています。
モノタロウの高成長の理由を「詳細解説」
マーケットにどんな「不」があった?
中小企業の現場・工場関係者がメインターゲットにしています。では、どんな「不」があったのか?
モノタロウさんの扱っている商材は、間接資材です。
製品を作る際に、製品になる直接の原材料を直接資材と言います。それ以外で使うのもすべてが間接資材となります。
直接資材は、製品の原材料なので取扱い量も多いので、原材料メーカーや問屋さんが、直接営業に来てくれます。
ただ、間接資材は、工具・機械の部品・ねじ・作業服・軍手・文具と多種多様です。
中小企業では、発注数も少数なので、問屋さん等の営業担当が訪問してくれるわけではなく、ホームセンター等に自分で買い出しに行かないといけません。
ホームセンターでは、品揃えも充実しているように思えます。
ただ、ネジ1本だけでも、今のモノタロウさんのサイトには10,000種類以上掲載されています。頭の形(+-)や長さや太さを考えただけで、驚くほど種類があります。
ということは、品揃えの多いホームセンターさんでもすべてを取りそろえるのは、店舗の大きさの制限があり無理があります。
ということは、わざわざ買い出しに行っても、目当ての商品がなく取り寄せとなり、入手するまで結構な日数がかかるだけでなく、また受け取りに行かないといけません。
また、機械の故障で部品が欲しい場合はすぐに必要となります。入手できないと機械を動かすことができず、業務が止まってしまうからです。
様々な不をまとめると
- 目当ての商品が売っているかどうかわからないが、店まで買いに行かないといけない
- 複数商品を買うとなると、買えない可能性が飛躍的に上がる
- 職人さんにはこだわりがあり、少しでも違う商品では代替えにならない
- わざわざ買い出しに行かないといけない
- 品物がないとまた買い出しにいかないといけない
- 社員数も多くないので、実際に作業している人が買い出しに行くとその間作業が止まる
- 故障した機械の部品がないとその間機械が使えない
- そして、これらの適正価格がわからない
上げたらきりがない位「不」があります。ということは、この「不」を取り除くことができるサービスはとてつもなく大きなマーケットを取り込むことができます。
そして、上記の「不」を見ているとすべてにおいて、ネットで注文、配達、多品種対応、価格の透明性などWeb販売が向いていることがわかります。
ここにモノタロウさんは参入したのです。
更に、Webだけでなく、実物のカタログを作成し、電話やFAXでの注文にも対応しております。ネットに不慣れない人にも対応しています。
「不」の解消の具体策
これらの不を解消するために、品揃えの豊富さと即日発送、価格の透明性を担保した上で、ターゲット消費者に、モノタロウさんを知ってもらうことが大事となります。
そのためには、
- 圧倒的な品揃え数の仕入れルートの開拓
- 多数の商品をWebに掲載する仕組み構築
- 在庫管理及び注文後即日発送の仕組み
- 価格の透明性
- ターゲット層のサイトの会員化
これらを行う必要があります。
1.圧倒的な品揃え数の仕入れルートの開拓
全世界のメーカーや問屋を探し続けたのでしょう。なんと全世界の2,000社から商品を仕入れています。
2.商品をWebに掲載する仕組み構築
サイト及びシステムに関しては、自社の社員を使って構築しています。そのために、エンジニアを大量採用しています。
その人たちを使って、膨大な商品を掲載する仕組みを構築しています。
3.在庫管理と注文後即日発送の仕組み
物流拠点の拡充にとことん投資しています。売上拡大と共に、拠点自体の拡充が追い付かなくなり、移転を繰り返し拡大している状態です。
また、在庫管理や物流のシステム自体も自社のエンジニアにより自社で構築しています。
4.価格の透明性
ネット上でフルオープンとなっており、いちいち見積を取らなくてもいい状態となっています。これにより、どの会社(中小大手関係なく)も同じ価格ということがわかります。
会社の規定で相見積もり(複数の業者の見積もり)を取る必要がなくなります。
5.ターゲット層の会員化
Web広告をメインに、実物のカタログも制作して顧客接点を確保しています。データサイエンスに徹底的にこだわり、ビックデータ解析をおこない、誰に何をどのように伝えれば売上が上がるかを追求しています。
これらのことがうまくいっており、商品を仕入れ→Webに掲載→モノタロウのサイトに沢山の人が訪問→販売→お届けというフローが日々大きくなることで、売上の高成長となっているのです。
モノタロウ急成長の理由のまとめ
- 1,800万点の品揃え
- 当日出荷対象商品が61万点ある
- 価格の透明性を確保
- 中小企業の購買の「不」を解決したこと
商品数は上記の通り1,900万点、その内当日出荷対象商品数が61万点もある体制を作っています。
仕入に関しても2,000社以上と取引をしつつ、売れ筋商品を自社開発して、販売もしています。
コアなターゲットの中小企業だけでなく、大手企業に対しても営業を開始しており、事業拡大の打ち手をしっかりおこなっており、今後が楽しみです。
他の企業の解説もしております(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター、ラクス)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。
本を読む習慣がない方は、プロのナレーターが朗読した本をアプリ等で聴けるサービスがおススメです。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

オーディオブック2強「Amazon Audible」「audiobook.jp」を徹底比較はこちら
何回も読んだおススメ本の紹介は以下を参照下さい。

何回読んでも学べた本厳選!ビジネスに役立つおすすめ本はこちら
記事一覧から探したい場合はこちら

用語から検索したい場合はこちら
