決算数字を見ると大赤字の出前館さん。大量の広告宣伝や割引クーポンだけでなく、配達する人の確保でお金を使いまくっています。
今は顧客を拡大させることに大量の投資をしていますが、どのような考えでこれだけの投資をしているのでしょうか?
そして投資できるお金をどうやって集めているのか?
この記事では、出前館さんのサービス内容、財務三表から見た2022年8月期の決算内容の解説に加えて、投資理由と資金調達方法についてわかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、数千社との取引経験を持つ、よしつが、書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
出前館の大赤字の理由とは?
- 株の新規発行を大量に行うことで現金を集めている
- 集めた現金を広告宣伝・デリバリー代行体制の構築に大量投入している
上記により赤字になっています。
売上は、前期の290億円から今期473億円と63%伸ばしています。
ただ、売上金額以上の売上原価を使い、加えて、販管費も使っているので大幅な赤字となっています。
出前館が大赤字でも倒産しない理由
会社は大赤字を出したとしても倒産しません。会社が倒産するのは、現金がなくなった時です。だから、赤字の場合だけでなく、黒字でも倒産することがあるのです。
(詳しくは「倒産」を超わかりやすく解説を参照)
ということは現金を持っているのです。では、現金はどのように集めているのでしょうか?
株を発行して資金を調達しているか?銀行借り入れで資金調達しているか?のどちらかですが、出前館さんは、株を発行して資金調達しています。
株を買ってもらうことで集めた現金は、会社にとっては返済する必要のない資金調達となります。
株を買う人は、今は大赤字でも、将来的に大きな利益が出て株価が上がり、投資した金額以上のリターンがあると判断するから、株を買うのです。
出前館のサービスとは?
出前館さんは、出前館事業と通販事業の2つで事業展開しております。通販事業の売上はわずかなので、出前館事業がメイン事業です。
出前館事業は、名前の通り出前の代行業務を行っているのですが、収益源は3つです。
1つ目は、出前の代行業務です。出前館のバイクを見たことがあるかと思いますが、様々な店舗から出前の代行業務を行うことで、販売価格の25%の手数料をもらっています。
2つ目は、出前館のサイトに店が出店し、消費者とマッチングした時に店からもらう販売価格の10%のシステム利用料です。楽天市場と同じ仕組みです。
3つ目は、消費者に店舗の販売金額に上乗せする送料です。
出前館を財務三表から見るとどんな会社?
では、まずは、出前館さんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
出前館さんの公表されている、決算短信(2022年8月期)を元に説明していきます。
上記の場所から、2022年8月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、千円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上473億円、売上総「損失」191億円、営業「損失」364億円となっています。
売上総損失=売上より売上原価が大きいです。更に販管費がかかりますので、営業利益はマイナスで、営業損失が364億円となっています。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側です(決算短信5.6P参照)。
借入金はなく、資本金と資本余剰金で1,124億円となっており、新株発行で膨大な資金調達をしています。
2022年10月15日時点で、筆頭株主は誰もが使っているLINEを運営しているLINE株式会社となっています。LINE株式会社の親会社はZホールディングス(旧Yahoo!)です。
2021年9月に新規株を発行しており、多くを、ZホールディングスとLINEが購入しています。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
現金で532億以上持っています。広告宣伝費、デリバリーの外部委託、システム構築に使うためです。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、再度どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信7.8P)。
売上473億円、売上総「損失」191億円、営業「損失」364億円となっています。
売上総損失=売上より売上原価が大きいです。更に販管費がかかりますので、営業利益はマイナスで、営業損失が364億円となっています。
売上原価のほとんどは、デリバリースタッフの外部委託費です。ものすごいお金を使っています。
更に販管費だけで345億円使っています。
広告宣伝費はなんと、185億円も使っています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信11.12P)。
前期と比べて期末残高は431億円増えています。新規株発行で776億円もキャッシュを得ております。ZホールディングスとLINEが将来儲かることを目指して、徹底的に投資しています。
出前館はどんなビジネスモデル(売上獲得のモデル)?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
基本形はマッチングモデルです。
出前館のサイトに、出前サービスを提供する飲食店が掲載され、出前をしてほしい消費者に来訪してもらい、飲食店と消費者をマッチングさせるモデルです。
販売と同時に商品代金の10%を飲食店が出前館へ支払います。
上記に加えて、追加サービスを提供しています。シェアリングデリバリーと呼ばれる出前自体の業務を出前館が行う仕組みです。
こちらが有名ですね。
自分たちで出前を行うのか?出前館に頼むのか?を参画する飲食店が選択します。
出前館にお願いする場合は、上記に加えて商品代金の25%の手数料を払います。合計すると商品代金の35%となります。
様々なキャンペーン等で利率は変更の場合があるようなので基本料率を掲載しています。
ちなみに消費者からもらう送料は出前館さんの収入となります。
出前館大赤字の理由「詳細解説」
デリバリ―代行サービスの現状
デリバリー代行サービスは、今一気にマーケットが広がっています。
現在は、ウーバーイーツと出前館の2社が大きなシェアを持っています。
現在のステージは成長期真っただ中ですね。まだまだ伸びるマーケットなので、各社とも大きな投資をしています。

(成長期の説明は、「プロダクトライフサイクル」超簡単解説&使い方紹介を参照)
攻めている理由①生き残るには2、3社?
このマーケットですが、世界の他の国では、先行してサービス提供されています。
それらの国を見てみると最終的には2、3社に集約しているとのことです。
全国津々浦々まで社名を知られることと、配送網を構築することが事業拡大のポイントとなります。
特に配送網構築は時間とコストがかかるため、先行投資ができる会社しか生き残れないのでしょう。
また、シェア拡大のためにM&Aも起きやすく、最終的に2、3社に集約されるのだと思います。
そうなると想定した場合、日本国内のマーケットをいかに早く獲得するかがポイントとなり、先行投資合戦となるのです。
ウーバーイーツが攻めている今、出前館も徹底的に攻めるしかないのです。
攻めている理由②配送網を他に利用?
今は、飲食店のデリバリー代行で配送網を構築していますが、将来的には飲食以外で配送網を使うことができます。
例えばお買い物代行や、衣料、文具なんでも転用できます。
更に高齢者社会となり、ニーズは間違いなく広がります。
これらのニーズも視野に入っているので、まずは出前代行サービスでシェアを獲得することと、配送網を構築することを急いでいるのでないかと私は想像しております。
出前館大赤字の理由「まとめ」
- 投資家が、株価が上がる(将来利益が出る)と見て投資している
- 買ってもらった新規発行株で集めた現金を、広告宣伝及びデリバリー体制の構築にお金を使いまくっている
投資しないと負けとなるマーケットにおいて、成長期の今、徹底的に攻めているのですね。2025年8月には黒字化を目指しています。
3年後どんなマーケットになっているのか?その時に、出前館とウーバーイーツの関係がどうなっているのか楽しみですね。
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また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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