「ラクスル」他のネット通販印刷とは違うビジネスモデルを最新決算含めて解説

5.成長企業の成長の理由
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ラクスルさんの名前は、TVCMで知っている方も多いと思います。印刷物をネットで販売している会社です。

ネット印刷通販をおこなう印刷会社はこの数年間でとても増えましたが、唯一違うビジネスモデルでおこなっている会社があります。

それがラクスルさんです。普通のネット印刷通販会社は自社で印刷工場を持っているのですが、ラクスルさんは違う方式を取っています。

この記事では、一般の印刷会社とは違うラクスルさんのビジネスモデル(=商売の仕組み)を最新決算含めてわかりやすく解説します。

この記事は、

・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説

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ラクスルのビジネスモデルとは?

販売と入金以外は完全外注するビジネスモデル

ラクスルさんは、TVCMを見ていたら印刷会社のように見えます。

ただ、実は印刷会社ではなく、印刷会社と消費者の間を取り持つ商売をおこなっているのです。

印刷工場を持たずに、販売に特化し、印刷物は提携印刷会社で製造してもらい消費者に提供しています。

ネット通販印刷の安さの理由

・印刷機が動かない時間を徹底的に減らす
・複数顧客を同じ用紙でまとめて印刷
・印刷前工程を徹底的に排除

ネット印刷通販会社が価格が安い理由は上記3つです。

(詳しくは「ネット通販印刷が安い理由」をわかりやすく解説を参照)

通常のネット印刷通販会社さんは、上記を自社でおこなうことで低価格で印刷物を提供しています。

ただ、ラクスルさんは、印刷工程は沢山の印刷会社とネットワークを構築していて、安く仕入れて販売しているのです。

ラクスルを財務三表から見るとどんな会社?

では、まずは、ラクスルさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。

会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。

・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)

この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。

ラクスルさんの公表されている決算短信(2024年7月期)を元に説明していきます。

決算短信 - ラクスル株式会社

上記の場所から、2024年7月期決算短信をご覧ください。

注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、千円となっています。

財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。

具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。

表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。

ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。

直近の業績

売上511億円(昨年410億円、一昨年340億円)、売上総利益172億円(昨年123億円、一昨年98億円) 営業利益25億円(昨年18億円、一昨年5億円)となっています。

売上総利益率34% 営業利益4.9%となっています。

Webを使ったSaas系の会社では、売上総利益率が80%を超えるのが普通ですが、ラクスルさんは34%です。製造工程を他社にお願いして仕入れて販売しているからです。

また、営業利益率が低いのは、販管費の中の人件費、広告宣伝費を多く使っているからだと想定できます。

お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

お金を集める

どのようにお金を集めているのか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信6.7P参照)。

資本金・資本準備金合計84億円(昨年83億円、一昨年84億円)、長短期借入金93億円(昨年69億円、一昨年72億円)、社債70億円(昨年50億円、一昨年50億円)となっています。

24年7月期は、前期になかった1年以内に還付予定の社債50億円と社内20億円の合計70億円となっています。

株の新規発行だけでなく、社債・長期借入金で、多額のお金を集めています

投資する

どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。

現金で170億円(昨年146億円、一昨年137億円)、投資有価証券で75億円(昨年50億円、一昨年6億円)、のれんで77億年(昨年42億円、一昨年47億円)です。

投資に使うための現金を沢山持っています。また、M&Aを積極的におこない、のれん代が大きく増えています。

投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

再度どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信8.9P)。

売上511億円(昨年410億円、一昨年340億円)、売上総利益172億円(昨年123億円、一昨年98億円) 営業利益25億円(昨年18億円、一昨年5億円)となっています。

売上総利益率34% 営業利益4.9%となっています。

ちなみに売上の内訳をみると、印刷関連は471億円(昨年378億円、一昨年273億円)となっています。

上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

キャッシュの増減を見てみます(決算短信12P)。

期末残高は、170億円(昨年146億円、一昨年137億円)と微増となっています。

ラクスルはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)

直接提供モデルで仕入れ販売するモデル

仕入れ販売する部分が他のネット印刷通販会社とは違う部分です。

通常のネット通販印刷会社は仕入販売ではなく、自社製造販売なのですが、ラクスルさんは印刷工程をすべて外注しています。

ラクスルのビジネスモデルの「詳細解説」

・デザイン・印刷前工程を消費者が実施
・印刷工程は外注印刷会社が実施
・ラクスルは販売と入金に特化

ラクスルさんが特徴的なのは上記3つです。

デザイン・印刷前工程を消費者が実施

手間のかかる部分は対応しない

印刷物作成工程では、消費者とのやり取りがあり、時間がかかります。

デザインや印刷前工程をラクスルさんでは行わず、消費者におこなってもらうようにすることで、手間のかかる工程をおこなわないようにしています。

印刷工程は外注印刷会社が実施

提携印刷会社にすべておこなってもらう

この部分が独特です。ラクスルパートナーズと読んでいますが、印刷会社と提携し、印刷工程以降はすべて、提携印刷会社がおこなっています。

ラクスルさんの消費者に販売する価格は安いので、提携印刷会社さんへの発注金額も安いです。

ただ、ラクスルさんの販売力が高いため沢山の仕事がもらえます。仕事量があるならと低価格でも仕事を受ける会社が提携会社となっています。

ちなみに、提携会社になると、ラクスルさんの仕事はどんなに自社工場が一杯でも断ることができないという契約です。

提携している印刷会社は、年間を通しての仕事量と単価を踏まえて、提携したほうが良いと判断しているのです。

ラクスルは販売と入金に特化

消費者接点に特化

上記1,2を消費者や提携印刷会社におこなってもらうので、ラクスルさんは、消費者を集めて仕事を発注してもらうことと、入金管理に特化しています。

Webサイトの構築や広告費が大きくかかりますが、販売に特化することで製造工程のコスト等のリスクを減らしているのです。

ラクスルのビジネスモデルの「まとめ」

「直接提供モデル」の「仕入れ販売」での事業展開

売上総利益率が30%位の中、仕入れ販売なので、消費者を集めるための広告をどこまで使うのか?仕入先との提携をどう強化するのか?が課題です。

また、用紙含めた原材料の高騰が進んでいます。価格の安さで競合と勝負しているので、どこまで値上げできるか?も大きなポイントとなります。

また、提携印刷会社が、安値で印刷製造を提供し続けてくれるかも今後のポイントになります。

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各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。

また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。

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