他社とは全然違うネット通販印刷「ラクスルのビジネスモデル」をわかりやすく解説

8.会社を見る力(有名企業分析)

TVCMを沢山おこなっているので、知っている方も多いと思います。

印刷物をネットで販売しているので、印刷会社に見えます。

でも、普通のネット印刷通販会社は自社で印刷工場を持っているのですが、ラクスルさんは違うビジネスモデルで商売をしているのです。

この記事では、一般の印刷会社とは違うラクスルさんのビジネスモデル(=商売の仕組み)をわかりやすく解説します。

この記事は、印刷業界にで働いた経験、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが書いています。

(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説

ラクスルのビジネスモデルとは?

「仕入れ販売」での事業展開

ラクスルさんは、TVCMを見ていたら普通の印刷会社のように見えます。

でも、実は印刷会社ではなく、印刷会社と消費者をつなぐ商売をおこなっているのです。

印刷工場を持たずに、販売に特化し、印刷物は仕入れて(提携印刷会社で製造)消費者に提供しています。

ネット通販印刷の安さの理由

  1. 工場の空いている時間を活用
  2. 複数顧客を同じ用紙でまとめて印刷
  3. 印刷前工程を徹底的に排除

ネット印刷通販会社の価格が安いのはこの3つが理由です。

使えていない空き部分を活用し、印刷工程の一部を取り扱わないことで、安く提供しています。

この仕組みを利用して安く販売するために、沢山の印刷会社とのネットワークを構築しています。

(詳しくは「ネット通販印刷が安い理由」をわかりやすく解説を参照)

ラクスルを財務三表から見るとどんな会社?

では、まずは、ラクスルさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。

会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。

  1. お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
  2. 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
  3. 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)

この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。

ラクスルさんの公表されている決算短信(2022年7月期)を元に説明していきますね。

決算短信 | IR・投資家情報 | ラクスル株式会社

上記の場所から、2022年7月期決算短信をご覧ください。

注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、千円となっています。

財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。

具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。

表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。

ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。

直近の業績

売上340億円売上総利益98億円 営業利益約5億円となっています。

売上総利益率約29% 営業利益約1.4%となっています。

まさに仕入れ販売の利益率ですね。営業利益率が低いのは、販管費の中の人件費、広告宣伝費を多く使っているからだと想定できます。

お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信5.6P参照)。

資本金関係で84億円、長期短期借入関係72億円、社債50億円となっています。自己資本比率は33%ですね。

株の新規発行の返さなくてもいいお金だけでなく、社債・長期借入金の返さないといけないお金両方で、多額のお金を集めています

では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。

現金で137億円、のれんで47億円となっています。

投資に使うための現金を沢山持っています。また、会社を買収し、子会社化しており、のれんが膨らんでいます。

投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

では、再度どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信7.8P)。

売上340億円売上総利益98億円 営業利益約5億円となっています。ちなみに売上の内、印刷関連は約273億円となっています。

販管費使えるだけ使っています。その結果赤字ぎりぎりの営業利益となっています。

上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

キャッシュの増減を見てみます(決算短信10P)。

キャッシュは前期末と比べて2.4億円増えています。目立つのは、子会社取得で18億円のキャッシュアウトがあることです。

ラクスルはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)

直接提供モデルで仕入れ販売するモデルです。この部分が変わっていますね。

通常のネット通販印刷会社は仕入販売ではなく、自社製造販売なのですが、ラクスルさんは印刷工程をすべて外注でおこなっています。

他のネット通販印刷会社は、すべて直接提供モデルの自社製造販売なので、ラクスルさんだけが違うモデルです。

ラクスルのビジネスモデルの「詳細解説」

ラクスルさんが特徴的なのは

  1. デザイン・印刷前工程を消費者が実施
  2. 印刷工程は外注印刷会社が実施
  3. ラクスルは販売と入金に特化

ラクスルさんが特徴的なのは上記3つです。

デザイン・印刷前工程を消費者が実施

印刷物作成工程では、消費者とのやり取りが結構あります。

ただ、デザインや印刷前工程をラクスルさんでは行わず、消費者におこなってもらうようにすることで、印刷工程以降に特化しているのです。

印刷工程は外注印刷会社が実施

この部分が独特です。ラクスルパートナーズと読んでいますが、印刷会社と提携し、印刷工程以降はすべて、提携印刷会社がおこなっています

ラクスルさんの消費者に販売する価格は安いので、提携印刷会社さんがもらえる金額も安いのです。

ただ、工場稼働が上がるので、低価格でも仕事を受けています。

ちなみに、この提携では、ラクスルさんの仕事は断ることができないそうなので、自社のピーク時についても、安い単価で仕事を受けています

提携している印刷会社は、年間を通しての仕事量と単価を踏まえて、提携したほうが良いと判断しているのです。

ラクスルは販売と入金に特化

上記1,2を消費者や提携印刷会社におこなってもらうので、ラクスルさんは、消費者を集めて仕事を発注してもらうことと、入金管理に完全特化しています。

Webサイトの構築や広告費が大きくかかりますが、販売に特化することで製造工程のコスト等のリスクを減らしているのです。

印刷会社側からすれば、ちゃんと仕事をもらえることが提携する意味合いになりますので、他のネット通販会社との闘いの中で、どれだけ他社との競争に勝って仕事を獲得できるか?が今後の最重要課題となります。

ラクスルのビジネスモデルの「まとめ」

「直接提供モデル」の「仕入れ販売」での事業展開

売上総利益率が25%位の中、仕入れ販売なので、消費者を集めるための広告をどこまで使うのか?仕入先との提携をどう強化するのか?が課題です。

また、用紙含めた原材料の高騰が進んでいます。価格の安さで競合と勝負しているので、どこまで値上げできるか?も大きなポイントとなります。

また、印刷だけでなく、物流や広告の新規事業もおこなっておりますので、どう多角化できるかが注目ポイントとなります。

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各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。

また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。

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