グループウェアでトップクラスのサイボウズさん。最近では、業務クラウドサービスのキントーンのTVCMが沢山流れています。
今振り返ると、当たり前のことを当たり前におこなっているように見えます。でもその当たり前のことを当たり前に行うのが難しいのです。
この記事では、サイボウズさんがなぜ高成長し、さらに高利益率で事業運営できているかをわかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つ、よしつが書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
サイボウズ高成長・高利益率の理由
- 大手企業から中小企業まで必要となるグループウェアサービスを提供(マーケットが非常に大きい)
- クラウド化の波(マーケットの成長)にしっかり乗ったこと
- 利益と借り入れでキントーンに積極投資
この2点が主たる高成長率の理由です。
結果だけ見ると、大きなマーケットかつ成長マーケットにサービスを提供しており、当たり前と言ったら当たり前に見えます。
でも、パッケージソフトで販売をしていた会社が、パッケージをあきらめて、クラウドに大きく投資する判断ができたことが大きいのです。簡単な判断ではないと思います。
サイボウズ財務三表から見るとどんな会社?
まずは、サイボウズさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
サイボウズの2022年12月期の公表されている決算短信を元に説明していきますね。

上記の場所から、2022年12月期決算短信(連結・個別)をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には単位が百万円の場合、10とだけ表記=10百万円=1,000万円や10,000=10,000千円=1,000万円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上約221億円、売上総利益約201億円、営業利益約6億円です。売上総利益率は91%です。
すごい利益率です。SaaSビジネスの特徴であるとても高い売上総利益率です。
100万売り上げたら、91万売上総利益となります。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信6.7P参照)。
今までの利益を積み上げた利益余剰金で39億(全体の24%)となっています。
今期は、広告宣伝に使うために短期借り入れを22億円に加えて、1年内返済予定の長期借入金24.8億円しており、借り入れが増えています。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
工具、器具及び備品で約73億円、現金で約51億円、BtoBの商売の典型的なパターンである、受取手形及び売掛金で約28億円です。
投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているか?をもう一度見てみます(決算短信10P)。
売上約221億円、売上総利益約201億円、営業利益6億円です。売上総利益率は91%です。
販管費で目立つのが、人件費に79億円、広告宣伝費で65億円も使っています。
営業担当及び広告を沢山使って、販売に力をいれていることがわかります。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信12.13P)。
固定資産を購入してキャッシュは減ったもの、短期借入金等の借り入れがあり、現金は48億円→51億円と3億増えています。
サイボウズはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで自社製品を販売するモデルです。
普通は1社増えるごとに、販売する商品を作るための原価も同じく増えるのですが、サイボウズさんのモデルは原価がほぼ増えないのです。
出来ているソフトウェアに、新しい顧客が入って使用するだけなので、1名が使おうが、10名で使おうが、容量さえクリアできれば、使用人数が増えることでの原価アップはかからない仕組みです。
その結果、売上のほとんどが、売上総利益となります。
その上、一旦顧客に導入されると、ほぼ他社に変更される可能性が低いのです。
だから、競合と戦いながら早くシェアをとるために、人件費と広告宣伝費という販売費に大きく投資しているです。
サイボウズ高成長・高利益率の詳細解説
高成長の理由 大きなマーケットへのサービス
グループウェアってとっても便利ですよね。他の人のスケジュールが把握でき、様々な情報共有や情報ストックもできます。
10名以上の人がいる会社では、とっても役に立つサービスです。
業種にとらわれないので、ターゲット企業数は莫大にあります。
また、一度グループウェアを導入すると、ほぼやめることはないです。
「サイボウズで共有しておいて!」や「サイボウズのスケジュールに入れておいて!」などの会話が普通となり、完全に業務フローに組み込まれてしまうからです。
課金も1回だけの売り切りではなく、毎月の課金なので、毎月毎月お金が入ってきます。
高利益率の理由 クラウド化
今では、マイクロソフトも、ワード・エクセル等のソフトをクラウドで提供しています。
一気に様々なサービスがクラウド化していきました。
最初はセキュリティ等の問題がクローズアップされていましたのですが、技術が進化し、様々な問題をクリアし、今ではクラウドが普通になっています。
そのクラウド化の波にしっかり乗りました。早期にちゃんと大きな投資をしたのです。
でも、そもそもパッケージでの提供をしていた会社が、パッケージをあきらめて、クラウドに大きく投資する判断のタイミングがとっても良かったのです。
絶対に簡単な判断ではなかったはずです。
キントーンへの積極投資
サイボウズofficeの契約件数が、75,000件あります。その顧客接点を活かしながら、業務クラウドサービスであるキントーンに徹底的に投資しています。
TVCM含めた広告宣伝費を65億円もかけています。その成果として、現在27,500件のキントーンの取引があります。
もっと積極投資を今期もしていきますので、1年後はもっと増えているでしょう。
サイボウズ高成長・高利益率の理由のまとめ
- 大手企業から中小企業まで必要となるグループウェアサービスを提供(マーケットが非常に大きい)
- クラウド化の波(マーケットの成長)にしっかり乗ったこと
- その利益と借り入れを使いキントーンに積極投資している
このように書くと当たり前なのですが、当たり前のことを当たり前に行う、当たり前ではない会社が成長するのですね。
社長自ら、育休を3回取ったことでも有名はサイボウズの社長青野さんが、どんな考え方で経営をしているか?会社を成長させる上でのエッセンス満載な本です。
他の企業の解説もしております(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、無印良品、ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター、ラクス)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。
本を読む習慣がない方は、プロのナレーターが朗読した本をアプリ等で聴けるサービスがおススメです。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

オーディオブック2強「Amazon Audible」「audiobook.jp」を徹底比較はこちら
何回も読んだおススメ本の紹介は以下を参照下さい。

何回読んでも学べた本厳選!ビジネスに役立つおすすめ本はこちら
記事一覧から探したい場合はこちら

用語から検索したい場合はこちら
