エアコンなどの空調メーカーであるダイキン工業さんが、高成長を続けています。
24年3月期で売上が4兆3,953億円となりました。なんと、このグロス金額で昨年比10%も伸ばしています。
化学事業で2,639億円の売上があるものの、ほとんどの売上となる4兆円以上を空調事業で売り上げています。
空調事業は、昨年に引き続き全世界で伸ばしており、飽和している日本市場でも伸ばしています。
この記事では、単一事業である空調事業にほぼ絞った事業展開で、なぜここまで売上を伸ばすことができたのか?を最新決算を含めて分かりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説)
他の企業の解説もしております。社名をクリックして詳細をご覧ください。キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ネット印刷ラクスル、freee、Sansan、日本M&Aセンター、楽々精算ラクス。
ダイキン工業 高成長の理由とは?
・単一事業に絞った事業展開をおこなった
・世界に進出し、販売体制を自前で構築
・上記のリスクをとって事業展開を実行した
この3点が高い成長率の理由です。
ダイキン工業はどんな会社?
全世界170カ国に事業所を持つ「空調」「化学」「フィルタ」を柱に事業を展開している会社です。
国や地域ごとに異なる文化・価値観から生まれるニーズに応え、多彩な製品とサービスをグローバル市場で展開しています。
ダイキン工業を財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ダイキン工業株式会社さんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
上記の流れに現在の業績を加えて見ていきましょう。
ダイキン工業さんの、2024年3月期の公表されている、決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2024年3月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、カンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10,000,000円は、10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は4兆3,953億円(昨年3兆9,816億円、一昨年3兆1,091億円)、売上総利益1兆5,097億円(昨年1兆3,315億円、一昨年1兆573億円)、営業利益は3,921億円(昨年3,770億円、一昨年3,164億円)です。
売上は前年度と比べて10%も伸びています。グロス売上が大きいにも関わらず10%も売上を伸ばしています。本当にすごいことです。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信7.8P参照)。
集めたお金の39%である1兆8,962億円(昨年1兆7,122億円)が、過去の利益の積み上げである利益余剰金です。
短長期借入金で5,581億円(昨年4,677億円)あるものの、自己資本比率は55%を超えています。
売上・利益とも下がる年はありますが、基本大きく伸ばしているため、利益余剰金が大きく積み上がっています。
投資する
どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。
現金で7,380億円(昨年6,177億円、一昨年8,176億円)、受取手形、売掛金及び契約資産で8,153億円(昨年7,063億円、一昨年5,951億円)、商品及び製品で6,964億円(昨年6,683億円、一昨年4,510億円)、建物及び構築物で4,227億円(昨年3,501億円、一昨年3,026億円)となっています。
M&Aを沢山おこなっているので、のれんでも3,066億円(昨年3,043億円、一昨年2,705億円)となっています。
現金を沢山持っています。空調事業のビジネスマーケットに強いので、会社との取引額が大きいため売掛金が多額です。また、在庫である商品及び製品を多く抱えています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
次に、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信9.10P)。
売上は4兆3,953億円(昨年3兆9,816億円、一昨年3兆1,091億円)、売上総利益1兆5,097億円(昨年1兆3,315億円、一昨年1兆573億円)、営業利益は3,921億円(昨年3,770億円、一昨年3,164億円)です。
売上は前年度と比べて10%も伸びています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信13.14P)。
期末残高は6,340億円(昨年5,482億円)となっています。
ダイキン工業はどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?
(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデル
日本での空調事業から始まり、世界各地で空調サービスを展開しています。他には化学事業を展開しております。
ダイキン工業 高い成長率の理由を「詳細解説」
・単一事業に絞った事業展開をおこなった
・世界に進出し、販売体制を自前にした
・上記のリスクをとって事業展開を実行した
ポイントとなる上記3つをそれぞれ解説します。
単一事業に絞った事業展開をおこなった
全世界で空調事業に絞って事業展開
空調事業=エアコンに絞り事業展開を行ったことが、大きなポイントです。
絞ると失敗した時に取り返しがつかないので、大きなリスクとなります。
ただ、決断し徹底的にエアコンに投資し続けたことで、今の地位を獲得しました。
空調事業と言えば、家庭用のエアコン、店舗用のエアコン、業務用(ビル等)のエアコンがあります。
日本では、パナソニック、三菱電機、日立、東芝が競合となりますが、すべて総合家電メーカーです。ダイキン工業さんだけが専業です。
その上、日本市場は飽和状態となっているので海外進出をおこない、今や、ヨーロッパ、中国、アメリカ、アジア、オセアニア、中近東、アフリカとほぼ全世界で事業展開をしています。
空調事業は、全世界でニーズがあります。但し、各国での法律や気候条件、電気環境等の条件が様々で、各国向けに対応しないといけないことが大きな課題となります。
ただ、リスクを取って、エアコン専業で全世界に進出し、各国に適応した商品を現地で開発製造する戦略を取り大成功しています。
世界に進出し販売体制を自前で構築
自前で販売体制を構築
もうひとつ大事な選択をしています。販売体制を自前で構築したことです。
こちらも、当然大きな2つのリスクを背負います。
一つ目は、代理店網であれば自前より構築しやすいですが、自前の販売体制だと時間がかかります。
これだけの国に販売体制を構築することを考えた場合、各国の考え方、環境、商習慣すべてが違います。販売体制を構築できずに売上が上がらないリスクを背負います。
2つ目は、構築できたとしても、販売がちゃんとできないと専属の販売体制なのですぐに販売体制が崩壊します。すべては、ダイキン工業の製品販売に依存するためです。
このリスクに対して、エアコン専属の強みを生かして、店舗用、業務用、家庭用及び、低価格・中価格・高価格モデルを展開しました。
更に製品バリエーションを広げるだけでなく、各製品の競合優位性=商品力も担保しました。
その上、エアコン自体の販売だけでなく、定期メンテナンスや、調子が悪いとすぐに対応しないと大変困るエアコンの特性で、アフターサービスのマーケットが大きいことを活かした事業展開を行います。
上記のリスクをとって事業展開を実行したこと
リスクを取って全世界で事業展開
高成長の一番のポイントは、専業と自前の販売体制を作るという、とても大きなリスクを取ったことです。
この経営判断をおこなったことが一番大きい要因です。うまくいった後だから、専業かつ自前販売体制が成功の要因と言えますが、そんな簡単は判断では絶対なかったはずです。
ダイキン工業 高成長の理由のまとめ
・単一事業に絞った事業展開をおこなった
・世界に進出し、販売体制を自前で構築
・上記のリスクをとって事業展開を実行した
繰り返しとなりますが、3の判断を行って、腹を決めて全世界に進出するという決断と、実行力がすべてです。簡単にできる判断ではなかったはずです。
ただ、この判断が今のダイキン工業さんの成長につながっています。
他の企業の解説もしております(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ネット印刷ラクスル、freee、Sansan、日本M&Aセンター、楽々精算ラクス)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。
ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。
本を読む習慣がない方は、プロのナレーターが朗読した本をアプリ等で聴けるサービスがおススメです。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
オーディオブック2強「Amazon Audible」「audiobook.jp」を徹底比較はこちら
アマゾンさんで電子書籍の定額読み放題サービスがあります。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
読み放題「Kindle Unlimited」をおススメする人しない人はこちら
何回も読んだおススメ本の紹介は以下を参照下さい。
何回読んでも学べた本厳選!ビジネスに役立つおすすめ本はこちら
記事一覧から探したい場合はこちら
用語から検索したい場合はこちら