無印良品で有名な良品計画さんですが、様々な強さを持っています。
その中で、どこよりもすごいことがあります。すべての業務において、今までのノウハウをまとめた「MUJIGRAM(ムジグラム)」というマニュアルを作成しているのです。
店舗だけでなく、本社の各部署の業務についても、マニュアルを作成し運用しています。
この記事では、良品計画さんの最新の財務三表の解説、強みの源泉であるマニュアルの運用について、分かりやすく解説します。
この記事は、この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、数千社との取引経験をもつ、よしつが、書いています。
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良品計画(無印良品)マニュアル(ムジグラム)のすごさとは?
- 各店舗・本社各部署のノウハウがすべて文章化されている
- 定期的に加筆修正が行われている
この2点がすごいところです。
例えば、この商品はこのように並べましょうとか、マネキンに着せる服は△もしくは▽に見えるように着せて、色は何色以内にしましょうなどの販売ノウハウを、すべて文章化=形式知化しているのです。
加えて、マニュアルを常に加筆修正して、ノウハウをアップグレートし続けているのです。
マニュアルがない会社、マニュアルがあっても、最初に作ってそのままになっている会社がほとんどの中で、すごいことを実行し続けているのです。
良品計画(無印良品)とは?
西友ストアで開発された、1つのブランドを分離独立し設立されました。製造以外の商品企画・流通・販売を行う製造小売業(SPA)です。
ショッピングモール等で店舗を見たことがあると思いますが、全世界に1,068店舗、国内497店舗、海外32か国571店舗を展開しています。
衣料品、生活用品、食品を7,500品目を取り扱っています。
良品計画(無印良品)財務三表から見るとどんな会社?
良品計画さんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
良品計画さんの公表されている決算短信(2022年8月期)を元に説明していきます。

上記の場所から、2022年8月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
営業収益4,962億円営業総利益2,344億円 営業利益328億円となっています。
粗利率47% 営業利益率6.6%となっています。
前期と比べると、売上増(店舗数拡大)、営業利益減(販売数減、円安等)となっています。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側です(決算短信6.7P参照)。
過去の利益の積み上げである、利益余剰金で2,195億円、1年内返済予定の長期借入金319億円が多い科目です。
過去の利益の積み上げ(利益余剰金)がとても多く、自己資本比率が61%あり、とっても健全経営です。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
商品1,292億円、現金902億円、建物および建築物が706億円と多い科目となっています。
店舗販売をするために、販売する商品(在庫)と、何にでも使える現金を沢山持っています。加えて、店舗等の建物及ぶ建造物が多いのが特徴です。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、再度どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信8.9P)。
売上4,500億円売上総利益2,200億円 営業利益420億円となっています。
販管費では、人件費630億円、借地借家料3億円、配送及び運搬費301億円です。
まさに店舗を運営するために、人と場所と商品の配送に莫大なお金を使っています。
その上、広告宣伝費は年間56億円使っています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信12.13P)。
期末残高は902億円(昨年比447億減)となっています。
長期借入による収入で276億円、長期借入金の返済による支出656億円なので、この差額380億円となり、キャッシュ減を多くは、長期借入金の返済によるものです。
3.良品計画はどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで自社製品の実物商品を販売するモデルです。
基本は自社製造自社販売(SPA)でユニクロさん等と同じモデルです。
(SPAの詳細は「SPA(製造小売業)とは?」をわかりやすく解説を参照)
他社の仕入れ販売だと利益率が低いですが、自社のブランドを、自社で企画販売する戦略で、売れる商品開発ができており、高利益率となっています。
良品計画(無印良品)マニュアル(ムジグラム)のすごさを詳細解説
全2,000ページにも及ぶ店舗用の「MUJIGRAM」、6,000ページ以上ある本部用の業務基準書というマニュアルを作成し、常に改訂を行う仕組み化ができています。
各店舗・本社各部署のノウハウがすべて文章化されている
店舗の商品陳列方法・接客方法・クレーム対応方法まですべてがマニュアル化されています。
店舗だけでなく、本社の各部署の業務内容についてもマニュアル化(業務標準書)しています。
このすごさは、マニュアルを自分で作成したことがないとわからないと思います。
どう展示したらお客様にとって、探しやすいか?目に留まりやすいか?手に取りやすいか?を文章にできているのです。
「きれいに並べておいて」という人それぞれの感性に任せた運用ではなく、ちゃんと文章化し、その時点での一番いい方法を「決めている」のです。
それが、2,000ページにわたり、ノウハウの文書化=形式知化=誰でもできる化ができているのです。
定期的に加筆修正が行われている
マニュアルを作成ができたとしても、それを常に改訂していくことは生半可なオペレーションではできません。
何が現在のマニュアルの問題なのか?を把握し、もっといい案をどう集めるのか?そして、常に継続できるように習慣化の仕組みが必要です。
良品計画さんは、現場からの声を集める仕組みがちゃんとあるだけでなく、機能しているのです。
経営がとことんマニュアル作成と運用にこだわり、現場が何とか実行し、その成果を多くの方が感じたから継続できているのでしょう。
マニュアル化のメリット・デメリットを検証
メリット
店舗数1068店舗全従業員18,163名大きな会社です。まして、店舗の半数以上が海外です。
いろいろな価値観や考え方の人が集まって仕事をしています。その人たちが自分の考え方で店舗オペレーションをしたらどうなるでしょうか?
店舗ごとの色が鮮明に出てしまい、無印良品のブランドイメージは、バラバラになります。
そして、人の採用は常に行われています。教育するだけで店舗の人は手一杯となります。
年中無休の店舗が多く、従業員がシフトの店舗がほとんどなので、休日が異なり、同じ人が新しく入った人を、教え続けることもできません。
でも、基準となるマニュアルがしっかりしていれば、これを元に教育ができます。
新しく入った人は、判断の基準も書いてあるので、上司や先輩に相談しなくてもマニュアルを見れば、大概のことは対応できます。
これにより、早期戦力化ができるだけでなく、教える側の人たちも、教育時間や相談を受ける時間が減り、本来の販売に使う時間が多く取ることができます。
そして、空いた時間を使い、現場の声を本部に上げるのです。
その声を元に本部がマニュアル=ノウハウを改善し、全体へ再度広めます。
こうして、売れる仕組み化が行われ、会社の業績が良くなる好循環が生まれます。
改善案を考える際も、目の前に文章化された業務内容があります。当然改善策を考えやすいです。
デメリット
マニュアル化のデメリットは、従業員が物事を考えなくなると良く言われることです。
本当にデメリット?
本当にマニュアルがあると、従業員が物事を考えなくなるのか?
これは、マニュアルという正解があるから、何をするにしてもその通りしか行わず、それ以上のことを考えなくなるという解釈だと思います。
この考え方について、どうしても引っかかることがあります。マニュアル通りにしかできないという前提は、マニュアル通りに、完全に実行することができるという前提が含まれています。
人ってそこまで優秀なのでしょうか?マニュアル通りにできるのは多分6割位で多くても8割でしょう。
マニュアル通りに100%できないのに、それ以上の成果が出る仕事方法を自分で考えることができるのでしょうか?
また、多くの人はマニュアルがあると便利だと考えます。いちいち先輩に聞かなくても、仕事を覚えることができるからです。
ここにマニュアルがあると、従業員は物事を考えなくなるということに対する矛盾があると私は考えています。
要は自分のやりたいようにやりたいだけの人と、マニュアル化する作業(とっても難しい作業)が大変だと思っている人の言い訳だと思えるのです。
そして、基準もないのに、自分で考えるようにさせると、必ず、部分最適・個人最適となります。
ある人が抜けたら、その人の仕事が暗黙知過ぎて引き継げなく、その人のノウハウが残らなくなります。
それだけなら元に戻るだけ(それも非常にもったいない)ですが、それ以上に問題となることがあります。
自分で良い改善だと考えたことが、会社にとって悪影響である場合です。本人は会社のためと思っていることが大きな問題です。
これにより、最悪退職となるのです。会社のためだと思うことを批判されたら、嫌ですよね。
逆に基準となるマニュアルが明確にあれば、改善案は作りやすいし、会社のためになる改善案になりやすい。
でも、方法論だけを議論すると手段の目的化が必ずおこります。だから、良品計画さんのマニュアルの表紙には「目的」が必ず表記されているのです。
このような批判が沢山ある中で、マニュアル化の文化を作った良品計画さんはほんとすごいです。
良品計画(無印良品)マニュアルのすごさのまとめ
- 各店舗・本社各部署のノウハウがすべて文章化されていること
- 定期的に加筆修正が行われていること
文字で書くと当たり前ですが、これをできる会社ってほんの一部です。この当たり前でないことを実行し続けていることが良品計画さんの本当の強みです。
社長や会長をつとめた松井さんが、マニュアル化を含めた仕組み化をどう考えて進めたのかのエッセンスが満載な本です。
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各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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