多くの方が使っている「メルカリ」。中古品ですが、とても良いものが安く手に入ります。
個人間の売買の仲介がメイン事業です。昔からこのマーケットが巨大であることは、誰もがわかっていました。
ただ、実際に会って話ができるフリーマーケットは成立していましたが、「怪しい」「不安」という「不」を解決できず、ネットでの事業化は出来ていませんでした。
この「不」を取りのぞき、事業化を成功させたのがメルカリさんです。
この記事では、この「不」に対してどのように課題解決したのか?オークションという違うサービスだが、個人対個人の売買仲介では同じ「ヤフオク!」との違いを含めて解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
メルカリ 高成長の理由は?
- マッチングモデルで、法人ではなく個人から売上を上げる仕組み
- 「怪しい」「不安」を解決
- 売る側は手軽に出品でき、買う側は明確な金額が表示され即決できる
- 潤沢なキャッシュを得る仕組みがある
この4点が高成長の主たる理由です。
メルカリを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、メルカリさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社とは何?をわかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
メルカリさんの2022年6月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

上記の場所から、2022年6月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円や千円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は、約1,470億円、売上総利益約951億円、営業損失は約37億円です。
売上は前年度と比べて39%も伸びています。また、売上総利益率がとっても高く65%となっています。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信5.6P参照)。
一番数字が大きい科目は預り金で、なんと1,390億円となっています。メルカリに出品して売れた商品の代金(販売者が引き出していないもの)とメルペイの残高です。
その他、資本金、資本余剰金がともに446億円あります。借入は短長期合計で812億円あります。今期は追加で、転換社債型新株予約権付社債で500億円資金調達しています。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
様々な用途で使える現金で2,114億円持っています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信7P)。
売上は、約1,470億円、売上総利益約951億円、営業損失は約37億円です。
65%という高い売上総利益率構造となっています。100万円売上を上げたら、65万円儲かるという構造です。
メルカリ内で商品が1個売れようが、100個売れようが、原価は基本同じです。これが売上総利益率の高さにつながっています。
そして売上総利益を人や広告宣伝に大量投下(投資)して、知名度認知度を上げています。売上の24%を広告宣伝費で使っています。なんと350億円以上です。
前々期は、上場以来初めて営業利益が黒字となりましたが、前期(2022年6月期)は営業赤字になっております。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信11.12P)。
期末残高は2,114億円あります。昨年と比べ約400億円増えました。
営業キャッシュフローは減りましたが、短期借入及び社債発行で、昨年と比べて650億円多くキャッシュを調達しています。
メルカリはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
マッチングモデルでの事業展開を行っています。普通マッチングモデルでは、商品を買ってほしい法人から収入を得ます。
ただ、メルカリさんは個人対個人なので、商品を売った人から売れた金額の10%の手数料を徴収しています。
メルカリの高成長の理由を「詳細解説」
メルカリさんのすごさは何をおいても、個人対個人のマーケットを定着させたことです。
その過程では様々な理由がありますので、ひとつずつ見ていきましょう。
1.マッチングモデルで、法人ではなく個人から売上を上げる仕組み
誰もがやろうと思ってできなかったことを実現しました。これがメルカリさんの成長の理由です。
同じような個人対個人のサービスにヤフオク!がありますが、販売する側は法人がOKとなっています。
メルカリさんの売上は、メルカリ内で販売された商品の手数料10%です。
ということは、まずは売りたい人が沢山いて、沢山の商品を出品してもらうことが大事です。
ちなみに全国の法人(会社)は約260万社ですが、メルカリさんで商品を売る人は基本個人ですので、日本市場ではMAX1億2千万人が対象となります。
それも、自分の家にある使わないものが主たる売り物なので、ほぼ全員が売る物を持っています。わざわざ仕入れなくても商品を持っている人が多数いるのです。
個人間の売買を気楽に行なえるようにするため、法人での販売は出来ないようになっています。※法人ぽい個人の方は多数いますが。
この人たちに使わない物はメルカリで売ろうと思わせるために、有名人を使った広告宣伝を始めて様々な施策を行い、マーケットが作られました。
2.「怪しい」「不安」を解決
公園等で行うフリーマーケットであれば、売る人や商品の実物を見て判断することができますが、ネットではそれができません。
これに伴う「怪しい」「不安」をどう取り除くかがポイントとなります。
買い手側、売り手側それぞれの「不」
買い手側の「不」
- 商品が届かない
- 商品が掲載されているものと違った
- 偽物だった
- そもそも売り手がどんな人かわからないので不安
- トラブルがおきたときに泣き寝入りしないといけないのでは?
売り手側の「不」
- 中古なのに新品のイメージでクレームをつけれられる
- そもそも難癖をつけてくるクレーマーだといやだ
- お金をちゃんともらえるかどうか不安
- トラブルがおきたときに、商品は返却されないしお金がもらえないことが起きそうだ
など少し上げるだけでも沢山の「不」が売る側、買う側にあります。
知らない人との取引、人それぞれの価値観の違い、お金が絡むことでの「不」です。
メルカリがおこなった解決策
お金の流れの仕組みと、買い手側の売り手の評価、売り手側の買い手の評価を行う仕組みを導入しました。
具体的には買い手が商品を選び、購入手続き及び代金決済を行います。ただ、この際代金はメルカリが預かる形にしています。
そして、買い手に実際の商品が届いたかどうかを確認してもらい、更に売り手の評価を求めます。
普通はここで終わりなのですが、この段階ではまだ、取引が完了ではない状態です。
最後に売り手が買い手を評価します。その評価を持って取引終了となり、売り手にメルカリから代金が支払われます。
ポイントは2つです。
1つ目は、お金を一旦メルカリが預かる仕組みにしたことで、買い手が支払わないリスク、売り手が商品を届けないのにお金を得るリスクをなくしました。
2つ目は、売り手も、買い手も評価されます。これにより、何か商品を買う時に、売り手の過去の取引の評価を見ることができ、リスク管理ができます。
また、売り手も強引な値下げ交渉や無理難題な交渉をされてた場合、買い手の評価を見ながら、ブロック機能を使ってこの人と取引をしない選択ができます。
その他、偽ブランド撲滅の取り組みも行っています。
これらの仕組みで、安心して取引を行うことができる状態を作りました。
3.売る側は手軽に出品でき、買う側は明確な金額が表示され即決できる
出品はとっても簡単です。スマホで写真を1枚撮り、そのままスマホでアップするだけです。また、買う際も、通常のネットショップと同じく、簡単に購入することが出来ます。
個人対個人のマッチングサービスではヤフオク!が先行していました。ただ、ヤフオク!はオークションサイトです(今はメルカリと同じことをしていますが)。
オークションのポイントは、ある商品に対して、いくらまでならお金を払うことができるかを判断する技量が必要です。
マニアや、よほどその商品が好きな人は対応できますが、一般人にとっては、そこまでの判断ができません。
日々行っている、この金額でこの商品が買えますがいかがですか?と言われて初めて判断ができます。基本人は受け身なので、提示されないと考えることはできない場合が多いのです。
また、欲しいと思ったらすぐに欲しいのです。一週間も待っていられませんし、購入できるかどうかもわからないまま待てません。
個人対個人の取引ですが、メルカリはこのように感じる一般人をメインターゲットにしたことで、普通の人が普通に買うマーケットを創ることができました。
4.潤沢なキャッシュを得る仕組みがある
ビジネスの観点から言うと、実はこの4つ目が大きなポイントとなります。
メルカリで販売されているものは高額な物もありますが、メインは安価なものです。
売り手がメルカリで商品を販売したら、当然その代金(10%の手数料は差し引かれます)を得る権利はあるのですが、振込手数料が1件当たり200円かかります。
だから、ある程度金額が溜まるまで引き出さなかったり、もしくは、そのお金を使ってメルカリで商品を買ったりします。
その結果、販売は成立してメルカリは買い手からお金を預かっているのですが、売り手に代金を支払わず、メルカリの中でプールできる状態を作れるのです。
実はこれが大きいのです。もちろん、支払依頼があれば支払いますが、一定期間無利子でお金を借りることができるのです。
更にメルペイの残高が加わり、2022年6月期末時点では、なんと1,390億円も預かり金としてメルカリが預かっている状態になっています。
このように、個人対個人のマーケットを創ることで大きな収入を得つつ、その過程で預り金として大きなお金を持つことができるのです。
2.メルカリの高成長の理由「まとめ」
- マッチングモデルで法人ではなく、個人から売上を上げる仕組み
- 「怪しい」「不安」を解決
- 売る側は手軽に出品でき、買う側は明確な金額が表示され即決できる
- 潤沢なキャッシュを得る仕組みがある
まだまだ個人間取引には問題もありますが、最初は20,30代の女性がメルカリをはじめて、今では40代50代が相当数活用しているそうです。
確かに私も趣味のものを買いまくっています。少しの不安は残しつつ、メリットの方が大きいと判断しているからです。
今後は、日本でのメルカリをのばしながら、メルペイとメルカリUSをどう伸ばすかが大きなポイントとなっていきます。
特に、今期は、メルカリUSは売上を伸ばすことが出来ませんでしたので、来期は再度売上増できるかどうかがポイントとなりそうです。
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各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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