楽楽清算等で有名なラクスさんが、高成長を続けています。
事業運営開始後20年たっており、Saas系の会社の中では、実は事業経験が豊富な会社です。
総合メールサポートサービスから始まった会社ですが、次々にバックオフィスのSaasサービスを立ち上げています。
起爆剤となったのは「楽楽清算」です。
この記事では、ラクスさんがなぜ高い成長をしているのかを最新通期決算を含めて分かりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得た知識を元に書いています。
(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説)
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ラクス 高成長の理由とは?
・6つの事業を展開している
・6つの事業すべてで売上が伸びている
・すでに20年以上の事業運営経験がある
この3点が高い成長率の理由です。6つの事業をおこない、6つとも売上を伸ばしている会社は本当に少数です。それを実現しているとても優れた会社です。
ラクスはどんな会社?
クラウド事業では、メール共有管理の「メールディラー」、メール配信サービスの「配配メール」、経費精算システムの「楽楽清算」、電子請求書発行の「楽楽明細」、営業支援の「楽楽販売」などを展開しています。
その他IT人材事業を展開しております。
このように多くの事業を展開していることに加えて、労務管理、勤怠管理などの新規事業もおこなっています。
ラクスを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ラクスさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細はたった一言で表現「会社って何?」をわかりやすく解説を参照)
この流れに、現在の業績を加えて見ていきましょう。
ラクスさんの2024年3月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。
上記の場所から、2024年3月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、カンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的例は、10,000,000円は10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は、384億円(昨年274億円、一昨年206億円)、売上総利益276億円(昨年188億円、一昨年140億円)、営業利益は56億円(昨年16.6億円、一昨年15.8億円)です。
売上は前年度と比べて40%も伸びています。ただ、売上を大きく伸ばすために広告宣伝費を多く使っていますが、売上が大きく伸びたことで、営業利益は16.6億円億円から56億円に大きく伸びています。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているのでしょうかを見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信4.5P参照)。
集めたお金の60%である127億円(昨年88億円)が、過去の利益の積み上げである利益余剰金です。
借入はほんの少しありますが、ほぼないに等しいです。
Saas系の会社では、商品のシェアを一気に上げる施策を取る場合が多いため、株式を発行して、資金を大量に集めて、販管費にお金をかける会社が多くあります。
ただ、ラクスさんは、資本金が3.8億しかないのが特徴的です。大きな借り入れや株式発行による資金調達をせずに、事業運営しています。
投資する
どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。
現金で70億円(昨年60億円)、売掛金で57億円(昨年41億)。この2つで60%となっています。
何にでも使える現金を多く持ってることと、BtoBの商売なので売掛金が多くなっています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信6.7P)。
売上は、384億円(昨年274億円、一昨年206億円)、売上総利益276億円(昨年188億円、一昨年140億円)、営業利益は56億円(昨年16.6億円、一昨年15.8億円)です。
売上は前年度と比べて40%も伸びています。他のSaas系と同じく、売上総利益率72%と高い売上総利益率となっています。
100万円の売上で72万円の売上総利益=粗利が稼げています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
次に、キャッシュの増減を見てみます(決算短信10P)。
期末残高は、昨年末と比べると10億円増えて、70億円となっています。
ラクスはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?
(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデル
直接提供モデルで自社製品のクラウド商品を販売するモデルです。
そして決算の区分け見ると、6事業を行っています。
通常、1社取引が増えるごとに、販売する商品を作るための原価も同じく増えるのですが、Saas系クラウドの特徴として、原価がほぼ増えません。
出来ているソフトウェアに、新しい顧客が入って使用するだけなので、容量さえクリアできれば、原価はほぼかからないからです。
その結果、売上の多くが売上総利益となり、高い利益率となる典型的なパターンです。
ただ、このマーケットは、沢山の競合がいることと、一旦サービスを導入すると、他の商品に変えづらい特性があります。
したがって、新規販売数を伸ばす(一気にシェア取る)ために、人件費に174億円、広告宣伝費に89億円と大量に投資しています。
ラクス 高い成長率の理由を「詳細解説」
すでに6つの事業を展開しており、更にすべての事業の売上を伸ばしている理由を見ていきます。
6つの事業を展開できている理由
6つのクラウド事業をすでに展開できている理由は2つです。
・すでに20年以上の事業運営がある
・1つ事業を成功→投資→次の事業を成功というサイクルが回っている
Saas系の会社は創業して10年そこそこの会社が大半です。
ひとつの事業を立ち上げ、お金を大量に集めて、短期間で一気に伸ばすのが典型的なSaas系の会社の事業展開のパターンです。
ただ、ラクスさんは違います。すでに20年以上の事業運営経験を持っています。
その中で、ひとつの事業を立ち上げに成功し、そこで得たお金を別の事業に投資し、更に成功させて、また、新しい事業に投資するという流れで事業展開をおこなっています。
2022年度の資本金は2018年度の5年前と比べても増えていません。
また、利益余剰金(過去の利益の積み上げ)が2024年度は127億円ですが、2018年度は30億円でした。
とても堅実にひとつずつ事業を育てつつ、現在の6事業になっていることを表しています。
ラクスさんは、元々ITエンジニアの育成スクールをはじめて利益を出し、その後立ち上げた赤字のメールディラー事業に投資し、利益を出しました。
そして、7,000社にも取引先をひろげて、その接点も生かしながら、一番の飛躍の要因となる楽楽精査事業を立ち上げ、他の事業で得た資金を投入し、成功に導きました。
6つの事業すべてで売上が伸びていること
6つの事業で売上を伸ばしています。これは本当にすごいことです。
過去失敗した事業は当然あるようですが、6つのセグメントともこの5年間毎年売上を伸ばしています。
6事業ある会社のよくあるパターンは、1つの事業のみで売上の9割を占めているような場合が多いのが普通です。
ただ、ラクスさんの各事業の売上は、18億円から144億円の売上となっており、とてもバランスの取れた事業運営となっています。各事業とも他社に負けない商品力があるから実現できることです。
シェアトップの楽楽清算を詳しく見ていきましょう。
清算業務は絶対行う必要のある業務ですが、社員にとってとても手間のかかる作業です。その上、売上につながる仕事ではないものの、自分の財布に直結しますので、とても大事な業務です。
清算業務の中のひとつである、交通費清算の昔の業務フローを見ていきます。
・エクセルで行先、経路、金額、訪問顧客名を1訪問ごとに入力
・入力したものをプリントアウトして、上長に回し、承認され経理に回す
・経理で内容確認し、最終承認され銀行口座に振り込まれる
というようなフローです。
清算する人、承認する人、入金対応する経理の人に多大な負荷がかかっていました。
・そもそも手入力
・経路と金額をネット調べる(定期区間を除く)必要
・プリントアウトして上長の席へもっていく
・上長はミスを見つけてFB
・経理は届いた1枚ずつの清算書を再チェック
・チェック後の清算書をシステムに手入力
これだけ見ても、手作業かつ大量の作業が発生します。また、お金を扱いますので、ミスが許されません。
この「不」だらけの清算業務について、楽楽清算はほぼ自動化しました。
・スイカなどのICカードに入っている経路と金額データを取り込み、清算データに反映(当然定期区間反映)
・交通経路検索サイトのジョルダンの仕組みを使って、自動で金額が入力および確認業務の簡略化
・清算データのシステム内での承認(紙不要)
・清算データを振込データに自動作成
これにより、清算書を作る作業及び、経理業務を大幅に削減しました。
このような会社が抱える「不」を、各事業が解決するための仕組みを作り上げた=商品力が上がったことで、どの事業も売上が伸びているのです。
同時に色々な事業を展開すると、どうしても力が分散されてしまいますが、ラクスさんはひとつずつ事業展開をおこなったことで、各事業が強くなっています。
ただ、競合の動きも活発化しており、ラクスさんは近年、広告宣伝費と人件費に大きなお金を使っています。
既存商品を伸ばすだけでなく、メールディラーや楽楽清算で接点のある大量の顧客に、他のサービスをクロスセルしていくことで、更なる成長を目指しています。
ラクス 高い成長率の理由のまとめ
・6つの事業を展開している
・6つの事業すべてで売上が伸びている
・すでに20年以上の事業運営経験がある
バックオフィス、販売管理、請求書等のSaas事業は群雄割拠の状態です。
その中で、ラクスさんが、どれだけシェアを取るのかが楽しみです。
他の企業の解説もしております(キーエンス、オービック、ZOZO、出前館、モノタロウ、エムスリー、ワークマン、ABCマート、ビズリーチ、メルカリ、サイボウズ、無印良品、ネット印刷ラクスル、freee、Sansan、ダイキン工業、日本M&Aセンター)。
各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。
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