freee(フリー)さんは、クラウド会計ソフト分野でマネーフォーワードさんと熾烈なシェア争いをしています。
決算を見ると、ずっと高成長しているのにずっと赤字です。先行投資に使えるだけのお金を使っているからです。
この記事では、なぜ赤字なのにお金を使えるだけ使っているのか?そもそもなぜ使えるお金があるのか?についてわかりやすく解説します。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つ、よしつが書いています。
(あわせて読みたい 【有名企業分析】直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説)
Freee(フリー)高成長なのに「赤字の理由」
- 赤字でも、お金を集めることができている
- 顧客獲得のために集めたお金を使えるだけ使っている
普通赤字ならお金を集めることが難しくなります。貸し倒れリスクが高くなるからです。でも、freeeさんは、お金を集めることができています。
投資を考えている人や会社が、将来的に利益が見込めると考えているから、freeeさんに投資をしているのです。
今は赤字になろうとも、顧客数の拡大することで、将来的に利益を見込めると考えているのです。
freee財務三表から見るとどんな会社?
まずは、freeeさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
- お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
- 投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
- 上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
Freeeさんの2022年6月期の公表されている決算短信を元に説明していきますね。

上記の場所から、2022年6月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円もしくは千円で表記されています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には単位が千円の場合、10,000と表記=1,000万円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します
直近の業績
売上約144億円、売上総利益約115億円、営業損失30億円です。
売上総利益率は80%ととても高い利益率ですが、営業利益は30億円のマイナス(損失)です。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では最初に、どのようにお金を集めているのでしょうか?貸借対照表の右側ですね(決算短信5.6P参照)。
売上が年間で144億円の会社ですが、なんと資本金247億円、資本余剰金(新株予約権)で406億円、この2つで653億円もの資金を集めています。
では、それをどう投資しているのか?貸借対照表左側ですね。
現金で425億円持っています。この現金を元手に顧客獲得に投資しているのです。
投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
では、どれだけの売上と利益が出ているか?をもう一度見てみます(決算短信P)。
売上約144億円、売上総利益約115億円、営業損失30億円です。
販管費に146億円使っています。売上144億円の会社が、販管費だけで売上を超える金額を使っているのです。
でも、30億円の赤字で済んでいるのは、売上総利益率が80%もあるからですね。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信11P)。
昨年と比べて51億円現金が減りました。引き続き、営業キャッシュフローがマイナスです。前期は新規株式発行で資金調達を少ししかおこなっていない結果現金が減りました。
freeeはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで自社製品のクラウド商品を販売するモデルです。
基本毎月の使用料を契約中はずっと支払う課金方法です(年払いもあり)。
普通は1社増えるごとに、販売する商品を作るための原価も同じく増えるのですが、上記のモデルは原価がほぼ増えないのです。
出来ているソフトウェアに、新しい顧客が入って使用するだけなので、容量さえクリアできれば、原価はほぼかからない仕組みなのです。
売上の多くが、売上総利益となる典型的なパターンです。
ただ、競合と戦いながら、販売数を伸ばすために、顧客開拓のために人件費と広告宣伝費が大きくかかるパターンです。
freee高成長なのに赤字の「詳細理由」
赤字でも、お金を集めることができている
赤字なのに、お金を集まることができている。それも返済の必要のない株式で集めています。
なぜなのか?当然投資している会社は、儲かると思っているからです。
儲かると思う理由①一度顧客になると毎年一定の売上が上がる
freeeさんの顧客は、Freeeさんのシステムを使っています。そして、最初に1回払って終わりではなく、使用料を毎月払います。
freeeさんのシステムを使い続ける限り、常に一定の収入が入り続けます。だから、顧客数が増えれば増えるほど、とても安定的に収入が入ってくるのです。
儲かると思う理由②市場が伸びる
個人事業主、小企業がメインターゲットであるクラウド会計ソフトの市場が、まだまだ伸びると考えているからです。

プロダクトライフサイクルで見ると、成長期真っ盛りです。
(詳しくは「プロダクトライフサイクル」わかりやすく解説&使い方紹介を参照)
そして、その後は安定期と衰退期がきます。
その時にどれだけシェアを取っているかがとっても大事なのです。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)で見てみます。

今①ですが、今後②のルートで儲かるのか?③のルートに落ちてしまうのか?の勝負が待っています。それに備えているのですね。
そして、投資している会社は②に行けるのではと考えているのでしょう。
儲かると思う理由③顧客基盤を活かしたアップセル・クロスセル
取引社数を多く獲得することで、今後、アップセル・クロスセルの展開ができると考えているからです。
現段階で約30万社との取引があり、今後倍どころでは済まない数の取引社数をなっていくでしょう。
その取引会社に対して、各カテゴリー(会計等)の中で、より多くのサービスを受けることができるプランでアップセルを行っていくことも可能となります。
そして、会計以外の領域(人事労務からバックオフィス全般)のサービスでクロスセルを行うことも可能です。

(詳しくは「アップセル・クロスセル」 超簡単解説&使い方紹介を参照)
取引社数が多いので、ものすごい広がりが予測できるのです。
顧客獲得のために集めたお金を使えるだけ使っている
上記のような将来像が見えています。そうすると何が一番大事なのか?
今の利益ではなく、マーケットが大きいとはいえ、有限である顧客をどれだけ獲得しておけるかが大事になります。
毎月お金をもらえる会社数×アップセル・クロスセルによる単価アップが売上となるからです。
それを投資先もわかっているし、freeeさんもわかっています。
その結果、売上が144億円の会社が146億円の販管費を使って顧客を獲得しに行っているのです。
そして、もうひとつポイントがあります。
会計(確定申告含めた決算や税)を中心としたサービスなので、今年はこの会社、来年別の会社と簡単に変えることができないのです。
更に、その他のバックオフィスのサービスまで受けると、業務フローに完全に組み込まれて、変更できない状態となります。
現在の解約率も年間1.3%しかありません。
だからこそ、新規顧客の開拓が一番大事になるのです。
freee高成長なのに赤字の理由の「まとめ」
- 赤字でも、お金を集めることができている
- 顧客獲得のために集めたお金を使えるだけ使っている
ものすごいお金を集めているので、ものすごいプレッシャーだと思います。
どの会社が勝ち抜くのか?残酷ですが、将来的に勝ち負けは出てしまうのです。
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各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。
また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。
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