無印良品の店舗及び商品のイメージを聞くと、多くの人は同じイメージを持っています。
ブランド戦略と販売戦略がしっかりしているからです。
ただ、戦略がしっかりしていると本当にどこの店舗及び商品が同じようなイメージになるのでしょうか?
実はこの部分に無印良品を展開する良品計画さんの強みがあります。
この記事では、良品計画さんの強みの源泉について、最新決算含めて分かりやすく解説します。
この記事を読むと良品計画さんの強さの理由がわかります。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【企業実例研究】成長企業の成長理由)
良品計画(無印良品)のすごさとは?
・各店舗・本社各部署のノウハウがマニュアル化されている
・定期的に加筆修正が行われている
この2点がすごいところです。立てた戦略を実行する仕組みがあるのです。
ノウハウをまとめた「MUJIGRAM(ムジグラム)」というマニュアルを作成・運用しており、店舗及び本社の各部署の業務がマニュアル化されています。
例えば、この商品はこのように並べましょうとか、マネキンに着せる服は△もしくは▽に見えるように着せて、色は何色以内にしましょうなどの販売ノウハウを、すべて文章化=形式知化しているのです。
加えて、マニュアルを常に加筆修正して、ノウハウをアップグレートし続けているのです。
マニュアルがない会社、マニュアルがあっても、最初に作ってそのままになっている会社がほとんどの中で、すごいことを実行し続けているのです。
良品計画(無印良品)とは?
西友ストアで開発された、1つのブランドを分離独立し設立されました。製造以外の商品企画・流通・販売を行う製造小売業(SPA)です。
(SPAの詳細は、SPA(製造小売業)とは?メリット・デメリット・会社例含めてわかりやすく解説を参照)
ショッピングモール等で店舗を見たことがあると思いますが、全世界に1,472店舗(昨年1,305店舗、一昨年1,188店舗)を展開しています(2025年8月期時点)。
良品計画(無印良品)財務三表から見るとどんな会社?
良品計画さんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は、本質を一言で表現!「会社とは何?」をわかりやすく解説を参照)
この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。
良品計画さんの公表されている決算短信(2025年8月期)を元に説明していきます。

上記の場所から、2025年8月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
営業収益7,846億円(昨年6,617億円、一昨年5,814億円)、営業総利益4,030億円(昨年3,364億円、一昨年2,715億円)、 営業利益738億円(昨年561億円、一昨年331億円)となっています。
粗利率51%、営業利益率9.4%となっています。
前期と比べると、すべての指標で増収増益となりました。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているのか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信6.7P参照)。
過去の利益の積み上げである、利益余剰金で3,008億円(昨年2,608億円、一昨年2,305億円)もあります。
長短合わせて借り入れは67億円(昨年154億円、一昨年260億円)しかありません。過去の利益の積み上げ(利益余剰金)がとても多く、自己資本比率が60%あり、とっても健全経営です。
投資する
どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。
商品1,698億円(昨年1,536億円、一昨年1,331億円)、現金1,349億円(昨年1,252億円、一昨年1,150億円)、建物および建築物が1,016億円(昨年900億円、一昨年794億円)が多い科目となっています。
店舗販売をするために、販売する商品(在庫)と、何にでも使える現金を沢山持っています。加えて、店舗等の建物及ぶ建造物が多いのが特徴です。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
再度どれだけの売上と利益が出ているかを見てみます(決算短信8.9P)。
営業収益7,846億円(昨年6,617億円、一昨年5,814億円)、営業総利益4,030億円(昨年3,364億円、一昨年2,715億円)、 営業利益738億円(昨年561億円、一昨年331億円)となっています。
粗利率51%、営業利益率9.4%となっています。
販管費では、人件費1,132億円(昨年948億円、一昨年762億円)、借地借家料568億円(昨年505億円、一昨年448億円)、配送及び運搬費434億円(昨年370億円、一昨年329億円)です。
まさに店舗を運営するために、人と場所と商品の配送に莫大なお金を使っています。
その上、広告宣伝費は年間145億円(昨年110億円、一昨年91億円)も使っています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信12.13P)。
期末残高は1,354億円(昨年1,255億円、一昨年1,152億円)となっています。
3.良品計画はどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデル
直接提供モデルで自社製品の実物商品を販売するモデルです。
基本は自社製造自社販売(SPA)でユニクロさんニトリさんと同じモデルです。
(SPAの詳細は「SPA(製造小売業)とは?」をわかりやすく解説を参照)
他社の仕入れ販売だと利益率が低いですが、自社のブランドを、自社で企画販売する戦略で、売れる商品開発ができており、高利益率となっています。
良品計画(無印良品)のすごさを詳細解説
・各店舗・本社各部署のノウハウがマニュアル化されている
・定期的に加筆修正が行われている
まずは「MUJIGRAM」を紹介した後に、上記2点について解説します。
MUJIGRAM(ムジグラム)とは?
ノウハウを文章化したマニュアル
全2,000ページにも及ぶ店舗用の「MUJIGRAM」、6,000ページ以上ある本部用の業務基準書というマニュアルを作成し、常に改訂を行う仕組み化ができています。
新しく入社した際に、まずはこのマニュアルを使って研修をしているそうです。もちろん、通常業務でも使いまくっています。
各店舗・本社各部署のノウハウがマニュアル化されている
暗黙知を形式知化している
店舗の商品陳列方法・接客方法・クレーム対応方法まですべてがマニュアル化されています。
店舗だけでなく、本社の各部署の業務内容についてもマニュアル化(業務標準書)しています。
このすごさは、マニュアルを自分で作成したことがないとわからないと思います。
どう展示したらお客様にとって、探しやすいか?目に留まりやすいか?手に取りやすいか?を文章にできているのです。
「きれいに並べておいて」という人それぞれの感性に任せた運用ではなく、明確に文章化し、その時点での一番良い方法を「決めている」のです。
更にすごいのは、各項目に必ず目的が書いてあることです。各手法が何のためにおこなわれるのかがわかるのです。
それが、2,000ページにわたり、ノウハウの文書化=形式知化=誰でもできる化が図られています。
定期的に加筆修正が行われている
現場からの提案を元に加筆修正
マニュアルを作成ができたとしても、それを常に改訂していくことは生半可なオペレーションではできません。
何が現在のマニュアルの問題なのか?を把握し、もっといい案をどう集めるのか?そして、常に継続できるように習慣化の仕組みが必要です。
良品計画さんは、現場からの声を集める仕組みがちゃんとあるだけでなく、機能しているのです。
経営がとことんマニュアル作成と運用にこだわり、現場が何とか実行し、その成果を多くの方が感じたから継続できているのでしょう。
マニュアル化のメリット・デメリット
メリット
従業員がすぐに80点の仕事ができる
店舗数世界に1,472店舗展開する大きな会社です。まして、店舗の半数以上が海外です。
いろいろな価値観や考え方の人が集まって仕事をしています。その人たちが自分の考え方で店舗オペレーションをしたらどうなるでしょうか?
店舗ごとの色が鮮明に出てしまい、無印良品のブランドイメージは、バラバラになります。
また、人の採用は常に行われています。教育するだけで店舗の社員は手一杯となります。
年中無休の店舗が多く、従業員がシフトの店舗がほとんどなので、休日が異なり、同じ人が新しく入った人を教え続けることもできません。
ただ、基準となるマニュアルがしっかりしていれば、マニュアルを元に誰でも教育ができます。
新しく入った人は、判断の基準も書いてあるので、上司や先輩に相談しなくてもマニュアルを見れば、大概のことは対応できます。
これにより、早期戦力化ができるだけでなく、教える側の人たちも、教育時間や相談を受ける時間が減り、本来の販売に使う時間が多く取ることができます。
そして、空いた時間を使い、現場の声を本部に上げるのです。
その声を元に本部がマニュアル=ノウハウを改善し、全体へ再度広めます。
こうして、売れる仕組み化が行われ、会社の業績が良くなる好循環が生まれます。
改善案を考える際も、目の前に文章化された業務内容があります。当然改善策を考えやすいのです。
デメリット
マニュアル化のデメリットは、従業員が物事を考えなくなると良く言われることです。
本当にデメリットでしょうか?
本当にマニュアルがあると、従業員が物事を考えなくなるのか?
これは、マニュアルという正解があるから、その通りしか仕事をせず、それ以上のことは考えなくなるという解釈です。
この考え方について、どうしても引っかかることがあります。マニュアル通りにしかできないという前提は、マニュアル通りに、完全に実行することができるという前提が含まれています。
人はそこまで優秀なのでしょうか?マニュアル通りにできるのは多分6割位で多くても8割でしょう。
マニュアル通りに100%できないのに、それ以上の成果が出る仕事方法を自分で考えることができるのでしょうか?
また、多くの人はマニュアルがあると便利だと考えます。いちいち先輩に聞かなくても、仕事を覚えることができるからです。
ここにマニュアルがあると、従業員は物事を考えなくなるということに対する矛盾があると私は考えています。
自分のやりたいようにやりたいだけの人と、マニュアル化する作業(とっても難しい作業)が大変だと思っている人の言い訳だと思えるのです。
そして、基準もないのに、自分で考えるようにさせると、必ず、部分最適・個人最適となります。
ある人が抜けたら、その人の仕事が暗黙知過ぎて引き継げなく、その人のノウハウが残らなくなります。
それだけなら元に戻るだけ(それも非常にもったいない)ですが、それ以上に問題となることがあります。
自分で良い改善だと考えたことが、会社にとって悪影響である場合です。本人は会社のためと思っていることが大きな問題です。
逆に基準となるマニュアルが明確にあれば、改善案は作りやすいし、会社のためになる改善案になりやすい。
でも、方法論だけを議論すると手段の目的化が必ずおこります。だから、良品計画さんのマニュアルの表紙には「目的」が必ず表記されているのです。
このような批判が沢山ある中で、マニュアル化の文化を作った良品計画さんはほんとすごいです。
良品計画(無印良品)のすごさの「まとめ」
・各店舗・本社各部署のノウハウがマニュアル化されている
・定期的に加筆修正が行われている
文字で書くと当たり前ですが、これをできる会社ってほんの一部です。この当たり前でないことを実行し続けていることが良品計画さんの本当の強みです。
社長や会長をつとめた松井さんが、マニュアル化を含めた仕組み化をどう考えて進めたのかのエッセンスが満載な本です。
他にも「企業実例研究」で以下の会社の記事を書いています。参照下さい。
- 「キーエンス」
- 「ZOZO」
- 「メルカリ」
- 「オービック」
- 「ビズリーチ」
- 「サイボウズ」
- 「ラクス(楽楽清算等)」
- 「エムスリー」
- 「日本M&Aセンター」
- 「ワークマン」
- 「Sansan」
- 「ダイキン工業」
- 「ABCマート」
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・【 企業会計 】一つの軸で理解・収益構造とコスト分析
・【企業実例研究 】成長企業の成長理由
・【 会社の環境 】良い会社の特徴
・【 転職 】転職前の心構えと知識・具体的な方法
・【 読書ガイド 】テーマ別おススメ本
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