ワークマンさんは、「職人の店ワークマン」として職人の方には知らない人がいない有名な会社です。
現在は、女性やアウトドア、スポーツなどにターゲットを広げることで売上を伸ばしています。
ホームセンターで有名なカインズさんと同じベイシアグループの一員です。
最新決算では、増収減益になったことで、成長は止まったとか、拡大方法が間違っているなどの批判が多くありますが、ちゃんと売上は成長していますし、円安化でのわずかな減収ですので、現時点では大騒ぎすることではありません。
このワークマンさんのコアとなる強みと成長の理由に加えて、最新決算含めてわかりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【企業実例研究】成長企業の成長理由)
ワークマン強みと高い成長率の理由とは?
・流行の影響が少ない分野でシェアを取ったこと
・商品は変えずに違うターゲット開拓に成功したこと
この2点が強みであり高成長率の理由です。
ワークマンとはどんな会社?
ワークマンさんは、職人の方が仕事で使う商品を提供する会社です。作業服・防寒着・安全靴・長靴、レインスーツなどを提供しています。
最近は、女性やアウトドア、スポーツなどにターゲットを広げています。
黄色と黒の看板で展開しており、見たことがある方も多いと思います。
ワークマンを財務三表から見るとどんな会社?
まずは、ワークマンさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
この流れに、現在の業績を加えて見ていきましょう。
ワークマンさんの2025年3月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

上記の場所から、2025年3月期決算短信をご覧ください。
注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表等では、カンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。
具体的には10,000,000円は、10百万円や10,000千円と表示されます。
表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
売上は、チェーン全店での総売上は1,831億円(昨年1,753億円、一昨年1,699億円)、営業利益は244億円(昨年231億年、一昨年241億円)です。
ワークマンさんは、店舗はほとんどフランチャイズなので、株式会社ワークマンとしての売上(フランチャイズの店舗は別会社)は1,369億円(昨年1,326億円、一昨年1,283億円)です。
チェーン全店総売上の1,831億円は直営・フランチャイズ共に販売額(売上)を合算した数字です。
株式会社ワークマンさんの売上1,326億円とは、フランチャイズ店舗からの収入(マージン収入)+直営店の収入の合計額です。
今期は久々に増収増益となりました。ワーク商材は年間で少し苦しみましたが、一般向けが伸びたことが主要因です。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているかを見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信5.6P参照)。
集めたお金の負債純資産合計の82%に当たる1,329億円(昨年1,215億円、一昨年1,111億円)を、過去の利益の積み上げである利益余剰金で集めています。
銀行借り入れはほんの少しありますが、超優良企業です。
投資する
では、それをどう投資しているかを見てみましょう。貸借対照表左側です。
現金で804億円(昨年682億円、一昨年626億円)、建物で325億円(昨年281億円、一昨年256億円)、商品で241億円(昨年253億円、一昨年219億円)となっています。
様々な用途で使える現金を沢山持っておくことと、店舗展開の建物及び販売する商品(在庫)に投資しています。
投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信7P)。
株式会社ワークマンとしての売上にあたる営業総収入1,369億円(昨年1,326億円、一昨年1,283億円)、営業利益は244億円(昨年231億年、一昨年241億円)となっています。
原価率の高さ(利益率が低い)が有名なワークマンさんですが、営業利益率は17%を超えています。
上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信10P)。
期末残高は374億円(昨年481億円、一昨年476億円)あります。
ワークマンはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデル
ユニクロさんと同じSPA(製造及び小売り)で直接提供モデルです。自社で作ったものを自社で販売しています。
特徴的なのは、小売りを行う店舗の多くはフランチャイズで運営していることです。
(SPAの詳細は、「SPA(製造小売業)とは?」をわかりやすく解説を参照)
ワークマンの強みと高い成長率の理由を「詳細解説」
・流行の影響が少ない分野でシェアを取ったこと
・商品は変えずに違うターゲット開拓に成功したこと
上記それぞれを解説します。
流行の影響が少ない特定分野でシェアを取ったこと
ターゲットは職人の方で、ニーズは「丈夫」で「天候に対応」でき「安価」
最初の頃の店舗名である「職人の店ワークマン」の通り、色々な現場で働く職人の方がメインターゲットです。普段の仕事で使う作業着、手袋、防寒具、雨具などを販売しています。
仕事場は屋外で毎日着用しますので、丈夫(破れたり、よれたりしにくい)で、どんな天候に対しても対応(寒さ、暑さ、雨等)できることです。
アパレルですが、外見よりもまずは機能が大事ですし、毎日仕事で使うものなので、安価が求められ、必要な時にすぐに購入できることが大事になります。
このニーズに「多店舗展開」「高機能な商品を低価格で提供」「売り切れを限りなく減らす」の3つで答えています。
それぞれ解説します。
多店舗展開
・フランチャイズ
・店舗の大きさを統一
・営業時間と休日の工夫
ポイントは上記3つです。それぞれを解説します。
フランチャイズ
店舗展開も一気に増やせるフランチャイズ展開を基本としました。
店舗の大きさを統一
店舗の大きさは、敷地300坪 建物100坪 駐車スペース15台でロードサイト単独店を統一標準としています。
統一するメリットは、各店舗が同じ条件になるため、商品展示をはじめ、得たノウハウを他の店舗にも活かせることです。
あえて、同規模同条件店舗を展開することで、運営ノウハウを集中的に獲得し、店舗当たりの売上の最大化を実現しました。
実はこれが多店舗展開の要となる、フライチャイズ募集数確保の一つの大きなメリットとなります。
フランチャイズでオーナーになる人の一番の興味関心は、もちろん収入です。その収入の目安が、ある程度確かな数字として見て取ることができるのです。
営業時間と休日の工夫
ワークマンさんでは、7時~20時という営業時間と年間定休日22日という条件で、フランチャイズマーケットでは大変好条件となります。
フランチャイズで店舗営業をおこなうと24時間365日営業もざらにある中で、応募しやすい条件を整えながら、採用基準を厳しくすることで、ワークマンさんが望むオーナーさんを集めて店舗展開を行いました。
条件のひとつに、店舗の近くに居住する夫婦であることと設定しています。その上、1オーナーが多店舗を持つことができません。
店舗への愛着、地元の人への貢献意欲を前提条件にしているからです。
高機能な商品を低価格で提供
原価率65%という高い原価率で価格設定
原価率65%を一つの目安として商品開発を行っています。他のアパレルでは原価率は30%なので、明らかに利益率が低くなります。
ただ、他のアパレルと違うのは、流行に左右されることが少なく、高機能かつ安定品質を求める客層がメインターゲットです。
元々アパレルは、生ものではないので在庫しても腐りません。ただ、流行に左右されますので、短期間で販売しないと商品が陳腐化します。
ワークマンさんのターゲットは、流行よりも機能を重視する人が大多数のため、商品が陳腐化することも最小限となります。
このことから、他のアパレルメーカ―のように値引き販売して、在庫処分をする必要ありません。
したがって、大量に製造して、品質は維持しながら、1商品当たりの原価を下げるようにしています。
ただし、販売価格は利益をあまりのせずに安値で設定する。
結果、高機能な商品が、原価が安いだけでなく、利益もそれほどのせない販売価格なので、他社が追随できなくなります。当然沢山売れます。
「売り切れを限りなく減らす」
売れ切れは顧客を失う原因
現場で働く方がワークマンに行く際は、買わなければなならないものがあるからです。ふらっと立ち寄って気に入れば買うのではありません。日常の仕事で必要なものだからです。
この要望に対しては、上記の通り店舗の大きさを統一していることがとても生きています。
1店舗当たり、どの商品をどれだけ置けば一番売上が上がるか?がわかっているだけでなく、在庫切れしないためどれだけ仕入れておけばよいか?のノウハウがあり、売り切れによる販売ロスを最小限にすることも可能です。
これにより、ワークマンに行けば、高品質なものが安く手に入り、その上売り切れもしていないという評判となります。必然的に売上が上がる構造となります。
商品は変えずに違うターゲット開拓に成功したこと
丈夫で天候に対応できる商品を他のターゲットに販売
職人マーケットでシェアが高くなると、当然ながら違うマーケットに進出しないと、売上が頭打ちになります。
そのため、同じ商品を他のターゲットに販売する施策を行います。
きっかけは、バイクにのるライダーの間でワークマンさんの雨具が評判を得て、一気に広がる現象がおきたことです。
ご存知の通り、バイク需要は、最盛期の20%を割るほど低迷していますが、一定数のバイク好きのライダーがいます。但し、マーケットが低迷しているので、ライダー向け新商品が数多く発売されることがありません。
バイクは雨風や寒さの影響をもろに受けますので、外で働く職人の方と実は同じニーズを持っています。
そして、ワークマンさんは職人の方に人気の高機能かつ低価格な商品を持っていました。
このニーズがマッチしたのです。その後ライダー向けの商品も出していきますが、当時は職人さん向けの商品が浸透したのです。
この成功で分かったことは、高機能低価格な職人向けの商品が、他のマーケットにも転用できることでした。
この成功から作業服から高機能ウェアへというキーワードを元に、外での活動となるアウトドア、スポーツ、高機能レインウェアの職人以外のターゲットを取り込む打ち手を行っていきます。
この展開の延長線上にSNSを活用しワークマン女子というワードを流行させることで、更に新しい顧客を開拓しました。
結果、元々の職人の人たちに加えて、その他のターゲットについても、高品質低価格で取り込むことに成功したのです。
このようにターゲットが広がり、ワークマンの店舗に職人以外の人が増えることは売上アップにつながっていいことなのですが、一部職人の方にとってはワークマンに入りにくく感じる人も出てきます。
そのため、逆の動きとして、ワークマンプロという再度職人にターゲットを絞った店舗も展開し始めています。
課題が出るとすぐに打ち手を実行しているのです。
ワークマンの今後
今ワークマンさんは、既存を守りながら新規マーケットを取りにいき、大きく会社が変わろうとしている最中です。
利益余剰金が豊富で経営が安定していること、既存店平均売上が下がったとは言え、5年前は1店舗平均1.1億円だった売上が直近の決算では、1.7億円に増えています。
この状況かつ円安による仕入れコストの上昇を考えると、とても健闘していると私は思っています。
ワークマン高成長の理由の「まとめ」
・流行の影響が少ない分野でシェアを取ったこと
・商品は変えずに違うターゲット開拓に成功したこと
職人の方のニーズをしっかりつかんで実現し、その上で、同じ商品で別ターゲットに展開していきます。
アンゾフの成長マトリックスにおける既存商品を新規市場に販売する典型的なパターンです。

上記の赤矢印の方向に展開したのです。
(詳しくは「アンゾフの成長マトリクス」超簡単解説&使い方紹介を参照)
他にも「企業実例研究」で以下の会社の記事を書いています。参照下さい。
- 「キーエンス」
- 「ZOZO」
- 「メルカリ」
- 「オービック」
- 「ビズリーチ」
- 「サイボウズ」
- 「ラクス(楽楽清算等)」
- 「エムスリー」
- 「日本M&Aセンター」
- 「Sansan」
- 「ダイキン工業」
- 「ABCマート」
- 「モノタロウ」
- 「良品計画(無印良品)」
- 「出前館」
- 「ラクスル」
- 「freee」
当サイトでは以下のカテゴリーで200以上の記事を掲載しています。気になる内容があれば参照下さい。
・【 概念の本質 】ビジネスの根幹・基礎用語の本質・人の本質
・【キャリアプラン】軸とタイミング・成長ロードマップ
・【 自己成長 】定義から効率的な学びの方法を紹介
・【社会人の悩み 】素朴な悩み・よくある悩みと対策
・【 課題解決 】問題課題、戦略戦術フレームワーク・法則
・【ビジネススキル】必須スキル・思考方法・コミュニケーション
・【ビジネス用語 】基礎用語解説
・【 企業会計 】一つの軸で理解・収益構造とコスト分析
・【企業実例研究 】成長企業の成長理由
・【 会社の環境 】良い会社の特徴
・【 転職 】転職前の心構えと知識・具体的な方法
・【 読書ガイド 】テーマ別おススメ本
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