平均年収の高さで有名なキーエンスさん。日本一と言われる給料を出せるのは、成長し続けているだけではなく、利益率がとても高いからです。
なぜ高成長かつ高い利益率を稼ぎ出すことができるのでしょうか?
よく、ファブレス経営や営業力の高さが利益率が高い理由だといわれますが、実はそうではありません。
この記事では、キーエンスさんが成長し続けている理由と利益率が高い理由について、最新決算を含めてわかりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【企業実例研究】成長企業の成長理由)
高成長と利益率が高い本当の理由とは?
・他社にない圧倒的な商品力
・最大効率で行われる営業
この2点が高成長と高利益率の理由です。
まずは発表されている財務三表からどんな会社を紹介します。そのあとに上記2つを解説します。
キーエンス財務三表から見るとどんな会社?
キーエンスさんの主力商品は、工場内で使用するさまざまな機器です。センサーなどが有名です。
まずは、キーエンスさんがどんな会社か?を公表されている財務三表で見てみます。
会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。
・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)
(詳細は「会社の本質は何?」を超わかりやすく解説を参照)
上記の流れに現在の業績を加えて見ていきます。
キーエンスの2025年3月期の公表されている決算短信を元に説明します。
上記の場所から、2025年3月期決算短信(連結)をご覧ください。
見方の注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円となっています。
財務諸表では、数字はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。10,000,000円は、10百万円、10,000千円と表示されます。
表の右上などに単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に慣れましょう。
ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円・億円かつ数字を丸めて表記します。
直近の業績
2025年度3月期の数字を見ると売上がとうとう1兆円を超えて、1兆591億円となりました。(昨年9,673億円、一昨年9,224億円)、売上総利益8,877億円(昨年8,025億円、一昨年7,547億円)、営業利益5,498億円(昨年4,950億円、一昨年4,989億円)となっております。
売上高総利益率84%、営業利益率52%となっており、製造業としては、ありえない利益率です。
100万円売り上げたら、84万円が粗利となり52万円が営業利益となります。
お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
お金を集める
どのようにお金を集めているかを見ていきましょう。貸借対照表の右側です(決算短信4.5P参照)。
ほとんどが「返済しなくていいお金」でお金を集めています。
借入金は長期短期ともなく、過去からの利益余剰金でなんと3兆205億円(昨年2兆7,007億円、一昨年2兆4,038億円)もあり、右側の負債純資産合計の92%にもなります。
ちなみに自己資本比率は94.5%です。
投資する
集めたお金をどう投資しているのか?を見てみましょう。貸借対照表左側です。
有価証券で1兆5,277億円(昨年1兆3,142億円、一昨年1兆2,067億円)、現金で5,791億円(昨年5,204億円、一昨年4,337億円)が額の大きい項目です。
たくさんあるお金を有価証券に投資し、更にお金を増やしています。
投資したものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
売上と利益を再度見てみます(決算短信6.7P)。
2025年度3月期の数字を見ると売上がとうとう1兆円を超えて、1兆591億円となりました。(昨年9,673億円、一昨年9,224億円)、売上総利益8,877億円(昨年8,025億円、一昨年7,547億円)、営業利益5,498億円(昨年4,950億円、一昨年4,989億円)となっております。
売上高総利益率84%、営業利益率52%となっており、製造業としては、ありえない利益率です。
上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)
キャッシュの増減を見てみます(決算短信10P)。
期末残高で4,517億円(昨年4,061億円、一昨年3,440億円)となっています。
財務3表のどの数字を見ても、儲かっていることを表す数字しか出てきません。
社員への平均給与支払額が日本でトップクラスの会社です。人件費に大きなお金を掛けているにもかかわらず、これだけの利益が出ているのは、売上総利益率(粗利)が高いからです。
キーエンスはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)
直接提供モデルで、自社製品の実物商品を販売するモデル
日本の製造業の売上総利益率は20%強です。ただ、キーエンスさんは84%と言うとても高い率です。
高成長と利益率が高い理由の詳細解説
・他社にない圧倒的な商品力
・最大効率で行われる営業
この2つをそれぞれ説明します。
他社にない圧倒的な商品力
粗利率80%以上
粗利(=売上総利益)率が80%以上の商品を開発
商品開発のポリシーがえげつないポリシーです。なんと粗利率80%以上でないと商品を発売できないのです。
当然製造業でこれを実現するためには、ニーズがあることが前提で、他社にないもの(世界初、業界初など)を販売しないとこの利益率にはなりません。
この利益率を稼ぐことができる「商品開発」ができていることが、キーエンスさんを理解するポイントになります。
なんと世界初、業界初の商品が全体の7割を占めているそうです。
一度キーエンスさんのホームページを見てください。
たくさんの商品が紹介されています。そして、そのすべてが上記条件をクリアしているのです。商品開発の大変さとすごさが理解できます。
販売価格の決め方
原価+利益ではなく、価値価格
競合がいない商品を開発することが前提のため、顧客がいくらの価値と認めるか?で価格を決めています。
原価にいくら利益をのせるかという決め方ではありません。
例えば、ある商品を使えば不良品が5億円分減るとします。であれば、3億円で販売しようと考えるのです。顧客は2億円コスト削減できるからです。
ただし、3億円の商品の原価が、6,000万円以下(利益率80%以上)にならないと製品化の承認がおりないのです。
当たり前と言えば当たり前ですが、この当たり前をずっと行う、当たり前ではない経営を行っていることがキーエンスさんのすごさです。
最大効率で行われる営業
・時間当たりの売上最大化効率化
・現場のニーズの把握と社内への伝達
営業担当が求められていることは、上記2点です。
この2つを実現するためには、別会社へ販売を委託する選択はできません。マネジメントが聞かないことと、お客様のニーズを吸い上げにくいからです。
したがって、直販体制を構築し、上記2つを徹底的に実行しています。
時間当たりの売上最大化効率化
1分日報・アポがぎっしり・商談ロープレ・値引きせず・企画書作成せず
上記がキーエンスさんの営業がおこなっていることです。
キーエンスさんは高い営業力と言われますが、少し様相が違うのがわかると思います。
特に有名なのは1分日報です。1分単位で毎日行動を上長に報告します。その上で、営業活動の問題点を洗い出し、課題を設定し日々改善しています。
翌日朝から夕方まで、毎日必ずびっしりアポイントが入っている状態は当たり前です。その上、前日の夜に、訪問予定顧客すべての商談ロープレをおこないます。
商談の合間に無駄な時間を過ごさない、無駄な商談を行わないことが徹底されています。
その上、値引き対応なしです。仮に値引きする場合は、4階層位上の上司の承認が必要になるそうです。
個別の企画提案書も作りません。すべて用意されたものを使っています。
個人個人にやり方を任せるのではなく、ベストな方法を全員が同じようにできるようにしているのです。
商品力があるわけですから、いかに効率よく営業活動を行うかが大事だという考え方からすると、このような業務の進め方になります。
ちなみに接待も禁止です。その必要がないのです。接待という手法で仲良くなったりしなくても、商談機会を作ることができ販売できるからです。
もっと言えば、その時間を使って、翌日の商談のロープレをやった方が売上アップとなるのです。
現場のニーズの把握と社内への伝達
お客様の現場(=工場)で抱える悩みを把握し、社内で伝える
営業担当は、もうひとつ大事な任務を負っています。それは顧客ニーズの発掘及び社内への共有です。
この声を集めて、課題を「束にして」解決する商品を開発しています。
絶対に、顧客ごとで発生する個別課題を「オーダーメイド」で解決しません。大変手間がかかり、効率化の真逆になるためです。
きっと既存商品のカスタマイズもしていないはずです。
このように、事業全体と通して一貫した方針があるのです。
そして、その方針を実現しているのです。だから、高成長と利益率が高い理由が実現できているのです。
高成長と利益率が高い理由の「まとめ」
・他社にない圧倒的な商品力
・最大効率で行われる営業
この2点を実行し続けていることが、キーエンスさんが非常識な会社である理由です。
儲かる会社には、儲かる理由があります。当たり前のことですがそれができないのです。
当然年収は高いですが、働く人へのプレッシャーはとても大きいのでしょう。55期をむかえた会社ですが、平均年齢は35.2歳、平均勤続年数は11.5年です。
高い年収ですが、やめる人が多いこともこの数字からわかります。
他にも「企業実例研究」で以下の会社の記事を書いています。参照下さい。
- 「ZOZO」
- 「メルカリ」
- 「オービック」
- 「ビズリーチ」
- 「サイボウズ」
- 「ラクス(楽楽清算等)」
- 「エムスリー」
- 「日本M&Aセンター」
- 「ワークマン」
- 「Sansan」
- 「ダイキン工業」
- 「ABCマート」
- 「モノタロウ」
- 「良品計画(無印良品)」
- 「出前館」
- 「ラクスル」
- 「freee」
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・【 概念の本質 】ビジネスの根幹・基礎用語の本質・人の本質
・【キャリアプラン】軸とタイミング・成長ロードマップ
・【 自己成長 】定義から効率的な学びの方法を紹介
・【社会人の悩み 】素朴な悩み・よくある悩みと対策
・【 課題解決 】問題課題、戦略戦術フレームワーク・法則
・【ビジネススキル】必須スキル・思考方法・コミュニケーション
・【ビジネス用語 】基礎用語解説
・【 企業会計 】一つの軸で理解・収益構造とコスト分析
・【企業実例研究 】成長企業の成長理由
・【 会社の環境 】良い会社の特徴
・【 転職 】転職前の心構えと知識・具体的な方法
・【 読書ガイド 】テーマ別おススメ本
以下で失敗しない本選びのために、何回も読んだおススメ本を紹介しています。

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