ロジカルシンキングの手法のひとつ「ロジックツリー」を解説

4.フレームワーク・法則
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ロジカルシンキングは論理的思考と訳されます。その論理的思考を支える手法の一つにロジックツリーがあります。

このように書くととても難しく感じますが、理解できると割とシンプルな考え方です。

ヌケモレなく考える、論理的に考えることを実現できる手法です。

この記事では、このロジックツリーの意味・作り方・使い方含めてわかりやすく解説します。

この記事は、

・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい、ビジネスフレームワーク・法則を用途別に分けて紹介

ロジックツリーとは?

分解して考える方法

上記がロジックツリーです。ロジックツリーをそのまま訳すと「論理の木」という名詞ですが、ビジネスで使われる場合は「方法」という意味合いまで含んだ言葉として使われています。

代表的なロジックツリーは上記です。

ロジックツリーの説明には様々なものがあり、代表的なものは、「問題や原因などを構成している要素をツリー状に書き出し、解決法を導き出すフレームワーク」と説明されます。

なんか難しいのでシンプルにして、「分解して考える方法」と覚えましょう。

ただ、あくまで「方法」です。方法ということは、その前提として何かの目的がありますので、目的を明確にすることがロジックツリーを活用する上でとても大事なことです。

ロジックツリーを使う目的

課題解決のために、課題を特定し適切な打ち手を構築すること

上記がロジックツリーを使う目的です。

課題解決の重要ポイントとして、「解ける大きさまで問題を分解する」ことが大事になります。

例えば、売上が低迷している原因を考える際に、「売上が低迷している理由は何か?」を議論しても、あまりにもテーマが総論すぎて結論に至りません。

売上低迷には、様々な理由が複合的に絡んでいます。

営業担当の問題?商品の問題?マーケットの問題?それ以外の問題?という風に「分けて」考えないと本当の原因がどこにあるのかが特定できません。

また、打ち手においても、ヌケモレなく複数案を比較することで最善手が選びやすくなります。

このような場面でロジックツリーを使うことで課題を特定でき、最善な打ち手を選ぶことができます。

注意点は、ロジックツリーを作成している際、課題を解決することではなく、分けることが目的となる手段の目的化がおきやすくなります。

(詳しくは、「手段の目的化」の原因と対策を具体例と合わせてわかりやすく解説を参照)

目的は、課題解決のためであることを常に意識しましょう。

また、ロジックツリーのデメリットとして、新しい発想にたどりつかないと言われますが、そもそも新しい発想を引き出すことは目的ではなく、課題解決が目的です。

ロジックツリーの特徴

抽象的なものを具体的なものに分解する

ロジックツリーは、分けてが考える方法なので、さまざまなフレームワークや法則などと同じ種類のものです。

(フレームワーク・法則については、知っておきたい ビジネスフレームワーク・法則27選を参照)

ただ、フレームワークとして代表的な3C(市場・顧客、自社、競合)や4P(製品・商品・サービス、価格、販売促進、流通)のように並列に分解するのではなく、ツリー状に分解することが特徴です。

(3Cの詳細は、現状把握のフレームワーク「3C分析とは?」をわかりやすく解説を参照)

(4Pの詳細は、4Pとは?マーケティング戦略で使えるフレームワークを解説を参照)

これにより、各階層との関連性含めて立体的に理解できます。

ロジックツリーはロジカルシンキングの一部

ロジックツリーは、ロジカルシンキングの手法の一部なので、ロジックツリーの具体例に入る前に、ロジカルシンキングとは何かを解説します。

ロジカルシンキングとは?

論理的思考

日本語では論理的思考といい、「結論は〇〇です。なぜなら、〇〇だからです」という言い回しで表されます。

論理的に考えることなので、「なんとなく〇〇です」「私はこちらが好きなので〇〇です」「直観で〇〇です」という思考ではありません。

ロジカルシンキングが必要な理由

コミュニケーションを成立させるため

そもそもロジカルシンキングがなぜ必要なのでしょうか?

他人の集まりである会社やお客様とのコミュニケーションを成立させるためです。

商売・ビジネスの本質は、社外・社内含めて「人に動いてもらう」ことです。

(詳しくは、たったひとつの「商売・ビジネスの本質」をわかりやすく解説を参照)

人に動いてもらうためには、コミュニケーションが必ず必要となります。そしてコミュニケーションで大事なことは、伝えたことが伝わることです。

商売・ビジネスでは、阿吽の呼吸が成り立ちやすい家族ではなく、社外・社内とも、まったくの他人とのコミュニケーションになります。

「結論は〇〇です。」だけ伝えられても、なぜそのような結論にたどり着いたのかがわからないから、他人には理解できずに、伝えたとしても伝わった状態にはなりません。

その結果、コミュニケーションが成立せず、動いてもらうことができません。

また、感情だけのコミュニケーションでは、人それぞれの思考の癖であるバイアスがかかってしまい、理解しにくいのです。

(バイアスの詳細は、考える際に注意が必要!「人の思考の癖」をわかりやすく解説を参照)

したがって、「結論は〇〇です。なぜなら、〇〇だからです。」と伝えることで、結論となぜそう考えるのか?をセットで理解してもらう必要があるのです。

ロジックツリーのメリット

ロジックツリーには大きなメリットが3つあります。それぞれを解説します。

全体を俯瞰して見ることができる

全体(抽象度が高いものから具体的なものまで)が文字で一覧化されているので、全体像が見えるようになります。

課題・原因特定や解決策立案が作成しやすい

大きなテーマが、関連する小さなテーマに細分化されているので、テーマの関連性がわかり、何について考えないといけないかがわかることで、原因特定・解決策比較がやりやすくなります。

議論のたたき台として活用できる

作成したロジックツリーを見ながら議論することで、どのように考えているかが可視化され、結論だけでなく、プロセスも見えるため、議論の迷子になることが大きく減ります。

4種類あるロジックツリー

ロジックツリーには、大きく分けて4つの種類があります。まずは、なぜ4つに分けられているのか?を紹介した後に、4つそれぞれを詳細に解説します。

4つに分かれるロジックツリー

・要因分解(WHAT)ツリー
・原因特定(WHY)ツリー
・問題解決(HOW)ツリー
・KPIツリー

上記4つがロジックツリーの種類です。

ロジックツリーは課題解決のために使います。課題解決には以下の3つのステップで進めます。

  1. 問題全体を洗い出す
  2. 問題の原因や課題を特定する
  3. 解決方法を複数立案し案を絞る

1は、要因分解(WHAT)ツリー)、2は、原因特定(WHY)ツリー、3は、問題解決(HOW)ツリーと言われています。

これにKPIツリーが加わり、一般的に4つのツリーとなります。

KPIツリーとは、会社の最終的におこないたいこと=例えば利益目標達成・売上目標達成などの大目標を達成するために、達成要因を分けたものです。

教科書的にはロジックツリーには、4つのツリーがあり、一つ目は・・・。という説明から入る場合が多く、その時点でわからなくなります。

そうではなく、課題解決という切り口で考えることで、理解が進みます。

4つのロジックツリーをそれぞれ解説します。

要因分解(WHAT)ツリーの具体例

要因分解(WHAT)ツリーの具体例は上図です。一番わかりやすい例です。

例えば、売上が下がっている場合、どこで問題が起きているかをモレなく、ダブリなく調べるために、各部、各課、各チームを一覧化し、それぞれを調べる例です。

原因特定(WHY)ツリーの具体例

原因特定(WHY)ツリーの具体例は上図です。一番左のテーマの原因を右に細分化していく方法です。

例えばホームページからの問合せが少ない理由を把握する場合、まず、「そもそもHPに来てくれていないのか?」「来てくれているが問合せしてくれないのか?」に分けます。

その上で、HPに来てくれていないのであれば、原因は、「Google検索に表示されていないか?」「表示されているが、順位が後でそのページまでたどり着いていないか?」です。

HPに来訪してくれているのに問い合わせてくれないのは、「来訪者が知りたい情報がなく、そのまま、離脱したのか?」「知りたい情報があるが、導線が悪く、問合せページにたどり着く前に離脱しているか?」です。

このように、具体的な問題を洗い出し、その中のどの部分が原因かを特定していきます。

問題解決(HOW)ツリーの具体例

問題解決(HOW)ツリーの具体例は上図です。

例えば、ホームページへの流入数をアップさせたいとしたときに、「Google検索から増やすのか?(自然流入)」「広告展開(強制流入)で増やすのか?」に分けます。

Google検索であれば、「専門家を新規で雇う」、「社内で配置換えを行い、専任担当を配置する」に分けることができます。

広告展開であれば、「ネットの中に出す広告なのか?」「ネット以外のTVや新聞や車内広告等のリアル広告を出す」に分けることができます。

このように具体的にして、その中から有効な方法を選びます。

KPIツリーの具体例

KPIツリーの具体例は上図です。

利益目標を達成するためには「売上を上げるか?」「コストを下げるか?」です。

売上を上げるには、「既存のマーケットを伸ばすのか?」「新しいマーケットを伸ばすのか?」の選択になります。

コストを下げるのは、「原材料等の売上原価を下げるのか?」「人件費や広告費を含む販管費を下げるのか?」になります。

KPIツリーが他のツリーと少し違う点は、取捨選択ではなく、力の入れ具合の強弱を決める場合が多いことです。

ロジックツリーの作成方法

・ロジックツリーを作成する際に一番大事なこと
・分ける注意点
・分ける方法

上記の順番で作成方法を紹介します。

ロジックツリーを作成する際に一番大事なこと

目的を明確にする

ロジックツリーという手法を使って何をしたいのか?そもそもの目的は何なのか?が一番大事です。

いきなり分ける方法に入ると一気にロジックツリーが難しいものになってしまいます。

あくまで、分けるという手法が目的ではなく、分けて何がしたいかが目的です。混同しないように気をつけましょう。

分ける注意点

・MECE(ミーシー)に分ける
・左から右へいくごとに具体的に分ける
・各階層の抽象度をある程度揃える

上記が分ける際の注意点です。ただ、「精緻に考えすぎない」ことが重要です。

ロジックツリーを作成する際に一番苦労するのは、要素に分けることです。その際に、精緻に考えすぎると分けることが目的になってしまい、本来の目的からずれていきます。

それぞれを解説します。

MECE(ミーシー)に分ける

MECE(ミーシー)とは、モレなく、ダブリなくです。上図の赤枠の中で分ける際に意識しましょう。

モレる例としては、例えば、学生を分けようとした場合、小学生、中学生、高校生、大学生で分けてしまう場合です。

浪人生がモレてしまいます。

ダブる例としては、大人と子供と男性と女性に4つに分けてしまう場合です。

男性の中に大人と子供がいて、更に女性の中にも大人と子供がいますので、ダブってしまうことになります。

左から右へいくごとに具体的に分ける

左側が抽象度の高い要素、右に行けば行くほど具体的な要素に分けます。

上記のように抽象度の高い内容の「ホームページでの問合せ数が少ない」は一番左側です。

そして一つ右に、「HP来訪数が少ない」、「HP来訪者が問い合わせない」がきます。

そして、更に分解された原因である、「検索に表示されない」、「表示される順位が低い」、「知りたい情報がない」、「導線が悪い」がきます。

このように右に行けば行くほど具体的な内容にします。

各階層の抽象度をある程度揃える

左から第一階層、第二階層、第三階層、第四階層となっていきますが、各階層を上図でいえば縦の関係をある程度抽象度・具体度をそろえます

例えば、「商品力が弱くなった」と同じ階層には、「営業の販売力が落ちた」となればつり合います。

ただ、「商品力が落ちた」と同じ階層に、「営業の販売研修がなくなった」となると、つり合わなくなります。

厳密にそろえる必要はないですが、後ほど、分析・選択する際に困ることになります。

分ける方法

・業務フローで分ける
・計算式で分ける
・組織で分ける
・分けたら各要素の影響度を図る

上記4つの方法で分けて検証します。その際にとても大事なのが、「第二階層(テーマの次)の分け方」です。

必ずではないですが、2つに分けることをお勧めします。この第二階層をMECEは2つに分けることができるとその後の第三階層、第四階層が考えやすくなります。

上記のように、「ホームページからの問合せが少ない」であれば、ホームページに来たか来てないかで分ける。

「ホームページの流入数を上げたい」であれば、無料施策と有料施策で分ける。

このように大きく二つに分けると、それぞれを分ける際にMECEにならずに困ることが大きく減ります。

4つの方法をそれぞれを解説します。

業務フローで分ける

まずは業務フローで分けると考えましょう。多くの場合この方法で作成できます。

商品開発の業務フローの例では、「ニーズを把握→商品開発→量産→お客様に販売」という流れになります。

業務の流れにそって分けるので、とても簡単に分けることができます。

計算式で分ける

業務フローの次に多い分け方は計算式で分ける方法です。

例えば、売上=単価×数量、売上=顧客数×平均売上などです。

組織で分ける

組織で分ける場合も、MECEにしやすいです。営業・商品開発・生産・スタッフなどで分けます。

要素分解フローの際によく使われます。

分けたら各要素の影響度を図る

分けることができら次は、各要素の影響度を図ります。

数字に落としこめるなら感度分析

感度分析とは、具体的な要素ごとに、率や数値が上下した場合に、全体にどれだけの影響が出るかを実際に計算して、分析する方法です。

エクセル等で式を組み、一番右の項目で数値を上げたり下げたりしたら、一番左の項目がどれだけ変化するかを見ることで、一番影響がある項目がどれなのかを把握する方法です。

(感度分析の詳細は「感度分析」をわかりやすく解説を参照)

定性情報なら競合との比較

数字に置き換えることができない場合は、競合と比較して、特に弱い部分を見つけに行きます。

ロジックツリーのテンプレート(エクセル版)

上記のフォーマットを活用する

一番のおすすめは、エクセル等で、上記のようなフォーマットを作成して使うことです。

マインドマップなどの便利なツールもあります。ただ、私が色々使った上で一番使いやすいのは、原始的ですが、上記のエクセルのフォーマットを使うパターンです。

マインドマップだと、いくらでも要素を追加出るがゆえに、中項目どおし・小項目どおしの抽象度が合わなくなることが多くなります。

その点、上記のフォーマットなら一覧を見ながら上下左右の抽象度を調整しながら、分けることができやすくなります。

ロジックツリーの使い方

自分の考えをまとめることと、他の人への説明で使う

まずは、自分の考えをまとめるために、ロジックツリーを作成します。そして、作成工程で考えたことをしっかり覚えておきます。

自分で考えて作り上げたら、次は、他の人へのプレセンテーションです。

「テーマ(目的)の原因は〇〇です。(ロジックツリーを見せながら)なぜなら、このように要素を分解し、それぞれの影響度合いを図ったところ、上記の要因が一番大きいためです。」

このようにプレゼンテーションをおこないます。

そして質問を受けます。その際の質問に答える際に、先ほど言った「作成工程で考えたことを覚えておく」ことが役立ちます。

質問の多くは、自分作成した時に悩んだ部分であることです。

その時に考えて出した結論や考え方を答えればいいのです。

ロジックツリーがあることで、結論に至った考え方かつ悩んだ部分もわかります。

したがって、内容の理解が図れることと、結論がおかしいと受け手が感じた場合、ロジックツリーのどの部分が違うかを指摘することで、話があっちこっちに飛ばずに議論を深めることができます。

ロジックツリーのまとめ

分解して考える方法

これだけ、長々と接明しましたが、立ち返ると上記のたった一言です。

あくまで方法なので、目的を明確にすることを忘れないようにしましょう。

他にも沢山のフレームワーク・法則の記事を書いています。参照下さい。

「開発→生産→販売」「分解して考える」「PLC」「キャズム理論」「3C分析」「SWOT分析」「ファイブフォース」「リボン図」「AISAS」「AIDMA」「ABC分析」「4P」「成長マトリクス」「アップセル・クロスセル」「ポーターの3つの基本戦略」「PPM」「ランチェスターの法則」「コトラーの競争地位戦略」「イノベーター理論」「ロングテール」「感度分析」「262の法則」「28の法則」「メラビアンの法則」「マズローの5段階欲求」「ジョハリの窓」

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