自社製造商品を販売しています。顧客から値引要請を受けることは、よくありますよね。
当然、値引きしないように交渉して、要求を取り下げてもらえればいいのですが、そう簡単にいかない場合も多いです。
この際、値引き額を実質の損失を出さないように決めるために、どのように考えればいいのか?そして、どれだけ下げることができるのか?を把握する必要があります。
その上で、値引き額を判断することが大事になります。
この記事では、値引き限界額の考え方と算出方法について、わかりやすく解説します。
この内容を具体的に理解できるようになれば、原価の仕組み=儲けの仕組みの基礎が理解できます。
この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、数千社との取引経験をもつ、よしつが、書いています。
(あせて読みたい 知っておきたいビジネススキル向上のための基礎知識をまとめてわかりやすく解説)
自社商品の値引き販売「値下げ可能額はいくら?」
値下げ可能額の算出方法
値下げ可能額は、売値から変動費を引いた額(=最低売値は変動費以上の額)
どうしてこのようになるか?を具体的な例を元に説明していきます。
ではまず以下の問題を一緒に考えてみましょう。
ある会社が、Aという商品を自社で製造販売しています。売値は100万円で、すべて自社内で製造している商品(外注加工費なし)です。
原材料費は40万円、その他1個売るごとにかかる原価は1個当たり10万円です。また、売れようが売れまいがかかる費用である固定費は、1個当たり30万が上乗せされますとします。
この商品について顧客から値引き要求がありました。
以下の選択肢で選べるものは何でしょうか?(複数回答可)
・①2割引(20万円値引き 売値80万円)
・②4割引(40万円値引き 売値60万円)
・③6割引(60万円値引き 売値40万円)

①は利益分を値引き ②は利益分+固定費の一部を値引き ③は利益分+固定費分+原材料費の一部まで値引きするという考え方です。
答えは ①②です。③のみ選べません。
どうですか?正解できましたか?
値下げ可能額の考え方を解説
解説していきます。
今回の商品の原価構造は、1つ製造するごとに増える原価=変動費はA.外注加工費0円 B.原材料費40万円 Cその他10万円プラスD固定費30万円が上乗せされる原価構造になっています。
(変動費と固定費の詳細は「変動費と固定費」超簡単に解説&使い方紹介を参照)

では、最大でどこまで値引きできるのかを考えるには、どこまでなら「実質の損害」がでないのか?を把握する必要があります。
では、実質の損害を考えてみましょう。
変動費を下回る価格で販売した場合
A+B+Cの変動費の合計金額を下回る販売価格を設定すると、何がおきるでしょうか?
1個作るのに必ずかかる金額である変動費を下回ると、売れば売るほどマイナスが広がっていきます。だから、このA+B+Cの変動費の合計金額を下回ると絶対だめです。
具体的には、販売価格を50万円より安く販売してしまうと、1個当たりの仕入先からの請求金額が50万円来ますので、その差分が純粋な赤字となります。なので、最初に③は消えます。
変動費以上変動費+固定費の金額までの間の価格で販売した場合
次に固定費の30万円はどう考えるか?です。
固定費とは、商品が売れようが売れまいが同じ金額がかかる費用です。
だから、商品が1個売れた場合と100個売れた場合を比べても、固定費は変わりません。
今回の固定費30万円は、商品1個当たりに固定費を案分したものが30万円。売れなくても30万円かかり、売れても30万かかる。
売れた場合と売れなかった場合を比較します。仮に変動費+5万円の55万円で売れた場合で見てみましょう。
入ってくる現金は55万円。販売したら出ていく変動費である現金=ABCの合計は50万円です。差額5万円現金がプラスしたことになる。
もし、売れなかった場合は、どれだけ現金の増減があるでしょうか?当然増減はゼロ。
どちらがいいか?当然、5万円お金が残る方がいいですよね。
変動費+固定費以上売値の間の価格で販売した場合
この間での販売では、そもそも取りたかった利益を減らすことになりますが、赤字になることはありません。
だから、正解は①②となります。
値下げ可能額の考え方の整理
では、もう少し話を進めます。55万円で販売すると5万円お金が残ります。では、固定費30万円を回収するために、何個販売すればいいでしょうか?
30万円÷5万円=6個ですね。
値下げして、55万円で販売した場合のプラスマイナスゼロとなる販売個数は、6個となります。6個売れば固定費を賄うことができて、それ以降の販売で利益が出ることになります。
もし値下げせずに当初設定した売値で販売した場合、プラスマイナスゼロとなる販売個数は1個となります。
30万円÷(100万円-50万円=50万円)=0.6となるので、1個売れば固定費も賄うことができて、利益が出るのです。
実はこの計算は、「損益分岐点」の考え方となります。55万で売れば、損益分岐点販売個数は6個です。100万円で売れば、損益分岐点販売個数は1個となります。
変動費にいくら利益をのせて販売するかは、実は上記の通り、何個販売するとプラスマイナスゼロになるか?=何個売れば儲かるか?を考えることになるのです。
利益をのせればすぐにプラスマイナスゼロになるが、売りにくい。利益をのせなければ売りやすいが、プラスマイナスゼロになるまで沢山販売しないといけないことになります。
値引き額を決めるということはこのことを決めることになるのです。
もちろん一回値引きをすれば、今後の取引も値引きしないといけないことになるのであれば、値引きをしない等、しっかり考えて判断する必要があります。
(損益分岐点の詳細は「損益分岐点」を超簡単に解説&使い方紹介を参照)
自社商品の値引き販売「値下げ可能額はいくら?」の「まとめ」
自社製造商品の場合、1個作るごとに必ず増えていく原価(=変動費)以上で販売すればロジック上は儲かることになる理屈は覚えておきましょう。
そして、売値から変動費を引いた金額で固定費をまかなうことができれば、儲けが出ていきます。
ただ、上記では50万円に少しのせて売ればいいのですが、沢山販売しないといけないことを考えて、値引き額を決めることになるのです。
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