「メルカリ」強みと高い成長率の理由を最新決算含めて解説

5.成長企業の成長の理由
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多くの方が私物を売買してる「メルカリ」。中古品ですが、良いものが安く手に入ります。

メルカリさんは、個人間の売買の仲介がメイン事業ですが、昔からこのマーケットが巨大であることは誰もがわかっていました。

ただ、実際に会って話ができるフリーマーケットは成立していましたが、「怪しい」「不安」という「不」を解決できず、ネットでの事業化は出来ていませんでした。

この「不」を取りのぞき、事業化を成功させたのがメルカリさんです。

この記事では、この「不」に対してどのように課題解決したのか?を最新決算を含めて解説しています。

この記事は、

・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい 【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説

他の企業の解説もしております。社名をクリックして詳細をご覧ください。キーエンスオービックZOZO出前館モノタロウエムスリーワークマンABCマートビズリーチサイボウズ無印良品ネット印刷ラクスルfreeeSansanダイキン工業日本M&Aセンター楽々精算ラクス

メルカリ 強みと高い成長率の理由は?

・マッチングモデルで個人から売上を上げる仕組み
・「怪しい」「不安」を解決
・売る側は手軽に出品でき、買う側は即決できる仕組み
・潤沢なキャッシュを得る仕組み

この4点が強みと高い成長率の理由です。

メルカリの事業内容

良く知られているメルカリ事業をメインにしながら、メルカード、暗号資産、アメリカでのメルカリ事業、スポットワークのメルカリハロなど多彩な事業を展開しています。

メルカリを財務三表から見るとどんな会社?

まずは、メルカリさんがどんな会社かを公表されている財務三表で見てみます。

会社とは「現金を使って現金を増やす行動」をおこなっており、その行動は以下の流れです。

・お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)
・投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)
・上記の結果、現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(詳細は「会社とは何?をわかりやすく解説を参照)

この流れに現在の業績を加えて順番で見ていきましょう。

メルカリさんの2024年6月期の公表されている決算短信を元に説明していきます。

IR/投資家情報
株式会社メルカリは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」のグループミッションのもと、テクノロジーの力で世界中の人々をつなぎ、あらゆる人の可能性が発揮される世界を実現していきます。

上記の場所から、2024年6月期決算短信をご覧ください。

注意点ですが、数字の単位が万円や億円ではなく、百万円や千円となっています。

財務諸表等では、例えば10,000,000円=1,000万円はカンマごとで切られて表示される場合がほとんどです。

具体的には10百万円や10,000千円と表示されます。

表の右上等に表記の単位が記されていますので、見る癖をつけることと、この表記に何とか慣れましょうね。

ちなみに、この記事ではわかりやすいように、万円億円かつ数字を丸めて表記します。

直近の業績

売上は、1,874億円(昨年1,720億円、一昨年1,470億円)、売上総利益1,297億円(昨年1,140億円、一昨年951億円)、営業利益174億円(昨年164億円、一昨年営業損失37億円)です。

売上総利益率がとても高く69%となっています。

お金を集めて投資する(貸借対照表B/S)

(貸借対照表の見方は「貸借対照表(B/S)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

お金を集める

どのようにお金を集めているのか見てみましょう。貸借対照表の右側です(決算短信5.6P参照)。

一番数字が大きい科目は預り金で、なんと2,011億円(昨年1,637億円、一昨年1,390億円)となっています。

メルカリに出品して売れた商品の代金(販売者が引き出していないもの)とメルペイの残高です。取扱額が増えていますので、預り金も増えています。

その他、資本金が473億円(昨年456億円、一昨年446億円)、資本余剰金が502億円(昨年497億円、一昨年446億円)あります。借入は短長期合計で1,899億円(昨年1,075億円、一昨年812億円)あります。

投資する

どう投資しているのかを見てみましょう。貸借対照表左側です。

様々な用途で使える現金で1,920億円(昨年1,963億円、一昨年昨年2,114億円)持っています。

投資したのものを使って売り上げ、費用を引けば利益(損益計算書P/L)

(損益計算書の見方は「損益計算書(P/L)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

どれだけの売上と利益が出ているかを再度見てみます(決算短信7.8P)。

売上は、1,874億円(昨年1,720億円、一昨年1,470億円)、売上総利益1,297億円(昨年1,140億円、一昨年951億円)、営業利益174億円(昨年164億円、一昨年営業損失37億円)です。

69%という高い売上総利益率構造となっています。100万円売上を上げたら、69万円儲かるという構造です。

メルカリ内で商品が1個売れようが、100個売れようが、原価は基本同じです。これが売上総利益率の高さにつながっています。

そして売上総利益を人や広告宣伝に大量投下(投資)して、知名度認知度を上げています。マーケットプレイス事業(メルカリ事業)だけで、250億円(昨年175億円、一昨年216億円)の広告宣伝費を使っています。

250億円というと月に21億円、1日に7,000万円というとても大きな金額です。

2022年6月期までは営業赤字でしたが、2023年6月期、2024年6月期とも営業黒字となっています。

上記の結果現金が増えたのかどうかを把握する(キャッシュフロー計算書C/F)

(キャッシュフロー計算書の見方は「キャッシュフロー計算書(C/F)」超簡単解説&使い方紹介を参照)

キャッシュの増減を見てみます(決算短信11P)。

期末残高は1,920億円(昨年2,020億円、一昨年2,114億円)あります。昨年と比べて微減です。

メルカリはどんな売上獲得のモデル(ビジネスモデル)か?

(モデルの詳細は「売上獲得のモデル(ビジネスモデル)は3つ」をわかりやすく解説を参照)

マッチングモデル

主たる事業のメルカリ事業はマッチングモデルです。普通マッチングモデルでは、商品を買ってほしい法人から収入を得ます。

ただ、メルカリさんは個人対個人なので、商品を売った人から売れた金額の10%の手数料を徴収しています。

これが他社にない特徴です。

メルカリの強みと高い成長率の理由を「詳細解説」

・マッチングモデルで個人から売上を上げる仕組み
・「怪しい」「不安」を解決
・売る側は手軽に出品でき、買う側は即決できる仕組み
・潤沢なキャッシュを得る仕組み

上記4点の強みと高い成長率の理由をそれぞれ解説します。

マッチングモデルで個人から売上を上げる仕組み

個人対個人の取引マーケットを確立

誰もがやろうと思ってできなかった個人対個人の取引マーケットを実現しました。これがメルカリさんの成長の理由です。

同じような個人対個人のサービスにヤフオク!がありますが、販売する側は法人がOKとなっています。

メルカリさんの売上は、メルカリ内で販売された商品の手数料10%です。

ということは、まずは売りたい人が沢山いて、沢山の商品を出品してもらうことが大事です。

ちなみに全国の法人(会社)は約260万社ですが、メルカリさんで商品を売る人は基本個人ですので、日本市場では1億2千万人が対象となります。

それも、自分の家にある使わないものが主たる売り物なので、ほぼ全員が売る物を持っています。わざわざ仕入れなくても商品を持っている人が多数いるのです。

個人間の売買を気楽におこなえるようにするため、法人での販売は出来ないようになっています。※法人ぽい個人の方は多数いますが。

この人たちに使わない物はメルカリで売ろうと思わせるために、有名人を使った広告宣伝を始めて様々な施策を行い、マーケットが作られました。

「怪しい」「不安」を解決

評価の仕組み・価格の透明性の仕組み・お金のやり取りの仕組みを構築

公園等で行うフリーマーケットであれば、売る人や商品の実物を見て判断することができますが、ネットではそれができません。

これに伴う「怪しい」「不安」をどう取り除くかがポイントとなります。

買い手側、売り手側それぞれの「不」

買い手側の「不」

・商品が届かない
・商品が掲載されているものと違った
・偽物だった
・売り手がどんな人かわからないので不安
・トラブルがおきたときの対応

売り手側の「不」

・中古なのに新品のイメージでクレーム
・そもそも難癖をつけてくる人にあたりたくない
・お金をちゃんともらえるかどうか不安
・トラブルがおきたときの対応

など少し上げるだけでも沢山の「不」が売る側、買う側にあります。

知らない人との取引、人それぞれの価値観の違い、お金が絡むことでの「不」です。

メルカリがおこなった解決策

お金の流れの仕組みと、買い手側の売り手の評価、売り手側の買い手の評価を行う仕組みを導入しました。

具体的には買い手が商品を選び、購入手続き及び代金決済を行います。ただ、この際代金はメルカリが預かる形にしています。

そして、買い手に実際の商品が届いたかどうかを確認してもらい、更に売り手の評価を求めます。

普通はここで終わりなのですが、この段階ではまだ、取引が完了ではない状態です。

最後に売り手が買い手を評価します。その評価を持って取引終了となり、売り手にメルカリから代金が支払われます。

ポイントは2つです。

1つ目は、お金を一旦メルカリが預かる仕組みにしたことで、買い手が支払わないリスク、売り手が商品を届けないのにお金を得るリスクをなくしました。

2つ目は、売り手も、買い手も評価されます。これにより、何か商品を買う時に、売り手の過去の取引の評価を見ることができ、リスク管理ができます。

また、売り手も強引な値下げ交渉や無理難題な交渉をされてた場合、買い手の評価を見ながら、ブロック機能を使ってこの人と取引をしない選択ができます。

その他、偽ブランド撲滅の取り組みも行っています。

これらの仕組みで、安心して取引を行うことができる状態を作りました。

売る側は手軽に出品でき、買う側は即決できる仕組み

出品と購入が簡単にできるだけでなく、価格も明確で即決できる

出品はとっても簡単です。スマホで写真を1枚撮り、そのままスマホでアップするだけです。また、買う際も、通常のネットショップと同じく、簡単に購入することが出来ます。

個人対個人のマッチングサービスではヤフオク!が先行していました。ただ、ヤフオク!はオークションサイトです(今はメルカリと同じことをしていますが)。

オークションのポイントは、ある商品に対して、いくらまでならお金を払うことができるかを判断する技量が必要です。

マニアや、よほどその商品が好きな人は対応できますが、一般人にとっては、そこまでの判断ができません。

日々行っている、この金額でこの商品が買えますがいかがですか?と言われて初めて判断ができます。

また、欲しいと思ったらすぐに欲しいのです。一週間も待っていられませんし、購入できるかどうかもわからないまま待てません。

個人対個人の取引ですが、メルカリはこのように感じる一般人をメインターゲットにしたことで、普通の人が普通に買うマーケットを創ることができました。

潤沢なキャッシュを得る仕組みがある

無利子の預り金が2,011億円

ビジネスの観点から言うと、実はこの4つ目が大きなポイントとなります。

メルカリで販売されているものは高額な物もありますが、メインは安価なものです。

売り手がメルカリで商品を販売したら、当然その代金(10%の手数料は差し引かれます)を得る権利はあるのですが、振込手数料が1件当たり200円かかります。

したがって、ある程度金額が溜まるまで引き出さなかったり、もしくは、そのお金を使ってメルカリで商品を買ったりします。

その結果、販売は成立してメルカリは買い手からお金を預かっているのですが、売り手に代金を支払わず、メルカリの中でプールできる状態を作れるのです。

もちろん、支払依頼があれば支払いますが、一定期間無利子でお金を借りていることと同じ状態です。

更にメルペイの残高が加わり、2024年6月期末時点では、なんと2,011億円も預かり金としてメルカリが預かっている状態になっています。

このように、個人対個人のマーケットを創ることで大きな収入を得つつ、その過程で預り金として大きなお金を持つことができるのです。

さらに、メルカードというカードを発行し、楽天と同じように、カード決済を自社カードでおこなってもらうことで、更なる収益化をおこなう施策を実行中です。

メルカリの強みと高い成長率の理由「まとめ」

・マッチングモデルで個人から売上を上げる仕組み
・「怪しい」「不安」を解決
・売る側は手軽に出品でき、買う側は即決できる仕組み
・潤沢なキャッシュを得る仕組み

まだまだ個人間取引には問題もありますが、最初は20,30代の女性がメルカリをはじめて、今では40代50代が相当数活用しているそうです。

確かに私も趣味のものを買いまくっています。少しの不安は残しつつ、メリットの方が大きいと判断しているからです。

今後は、日本でのメルカリを伸ばしながら、Fintech事業(メルカードとビットコイン事業)とメルカリUSをどう伸ばすかが大きなポイントとなっていきます。

特に、今期は、出だし好調なメルカードをどこまで伸ばすかと、US事業を成長路線にのせることができるかどうかがポイントとなりそうです。

他の企業の解説もしております(キーエンスオービックZOZO出前館モノタロウエムスリーワークマンABCマートビズリーチサイボウズ無印良品ネット印刷ラクスルfreeeSansanダイキン工業日本M&Aセンター楽々精算ラクス)。

各企業の詳細は、それぞれの会社名をクリックしてご覧ください。

また、上記企業のポイントをまとめてさくっと知りたい方は、【成長企業の成長の理由】有名18社の直近決算と成長のポイントを解説を参照ください。

ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。

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