「意思の弱さ」と「人の批判」の意外な共通点。犯人は私たちの持つDNA?

2.概念の本質
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「今日から本を読もう」「ダイエットをしよう」と決意しても、三日坊主で終わってしまった経験はありませんか?

一方で、職場の理不尽な上司や、SNSに溢れる「他者への批判」に、心がモヤモヤとイライラで支配されることはないでしょうか。

実は、このまったく別物に見える2つの事象の根底にある原因は、すべて「同じところ」にあります。

この記事では、この2つの事象を紐解きながら、人の本質とは何かをわかりやすく解説しています。

この記事を読むと普段悩んでいることの理由がわかり、少し心が軽くなるかもしれません。

この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つ「よしつ」が実体験から得たことを元に書いています。

(あわせて読みたい、ビジネスの概念や言葉の本質を分かりやすく解説

なぜ「意思の弱さ」と「人の批判」の原因は同じなのか?

私たちは、数万年前の「古いOS」で現代を生きている

この2つの悩みは、数万年前の私たちの祖先が生き残るために「どうしても必要だった性質」が、DNAとして現代にまで引き継がれているために起こります。

ただ、当時と現代では環境が違いすぎるため、現代社会ではどうしても「エラー(バグ)」として悪い方向に出やすくなってしまうのです。

このことを理解するために、まずは進化の3大前提を説明し、その後にそれぞれを解説します。

「進化」の3大前提とは?

・1万年程度では人はさほど進化しない
・進化とは「適者生存」
・獲得形質は遺伝しない

この3つが進化の前提です。それぞれ解説します。

1万年程度では人はさほど進化しない

人間の心身が生物学的にほとんど変わっていないことを裏付ける理論や概念は、主に進化生物学や進化医学の分野に明確に存在しています。

人類の歴史(約30万年)を「1日の24時間」に例えると、夜中の0時に人類が生まれてから、夜の23時12分(1万年前)まで、人間はずっとマンモスや木の実を追う「狩猟採集」をしていました。

農耕が始まったのは、日付が変わる直前の23時55分。
スマホが登場したネット社会なんて、23時59分59秒の出来事です。

23時間以上を「狩猟採集」のルールで生きてきた脳が、最後のわずか1秒で急激に作られた「現代社会」にすぐに対応できるわけがないのです。

この「遺伝子の進化が追いついていないこと」を裏付ける、とても身近で分かりやすい例があります。それが「話し言葉」と「文字(書き言葉)」の違いです。

私たちは、子どもの頃に特別な勉強をしなくても、環境にいれば自然と「話すこと」ができるようになります。

しかし、今から4,000〜5,000年前に使われ出した「文字」に関しては、学校で何年も必死に勉強しなければ読み書きができるようになりません。

これほど進化とは時間がかかるのです。

進化とは「適者生存」

「進化」という言葉のイメージから、私たちは世代を重ねていくことで、どんどん優秀になっていくイメージを持ちます。

できなかったことができるようになるイメージです。

ただ、本当にそうでしょうか?

私たちは祖先の人たちからDNAで様々なことが世代を超えて引き継いでもらっています。

これは、間違いがないことです。

では、DNAはどうやって引き継がれていくのか?

まずは生き残ること、そして子供を授かることで次の世代へDNAが引き継がれます。

人類が歴史のほとんどを過ごしてきた狩猟採集時代において、「生き残り、子孫を残すこと」は、現代とは比較にならないほど過酷でした。

厳しい自然環境の中で、飢えや病気をしのぎ、獰猛な猛獣や敵対する部族から襲われずに生き延びなければならなかったからです。

現代のような高度な医療も、身を守る武器も、科学的な知恵もない時代です。

当時、生き残れるかどうかは、本人の努力というよりも「たまたまその環境に適合していたかどうか」に過ぎませんでした。

そのDNAのつながりで今の私たちは形成されています。

これが進化の「適者生存」という本質です。

獲得形質は遺伝しない

人は、DNAで引き継いだ先天的な性質をベースに、後天的に様々なことを学び人格形成されます。

ただ、後天的に学んだこと(獲得形質)は、DNAに組み込まれる訳ではありません。

ということは、後天的に得た獲得形質は子孫に引き継ぐことができません。

親がいくらスマホを使いこなしても、生まれてくる子供はスマホが使える状態で生まれてきません。

ただ、年配の人と若い人ではスマホの操作などは、圧倒的に若い人が使いこなす例があります。

これは先天的にスマホが使える能力をDNAで引き継いだわけではありません。

生まれてから、まだ頭の柔らかい間に学んで習得することで、使いこなせているのです。

「意思の弱さ」と「人の批判」がなぜDNAで引き継がれた?

優秀な生存戦略だから

ここからは、なぜ現代では「デメリット」にしかならない「意思の弱さ」と「人の批判」という性質が、私たちの脳に初期設定として組み込まれているのかを説明します。

結論から言うと、大自然を生き抜くための過酷な環境において、この2つは「持っていないと即座に生死にかかわることで、優秀な生存戦略」だったのです。

「意思の弱さ」の生存優位性

エネルギーの節約と今を生きる力

現代ビジネスにおいて、「意思が弱い(=決めたことを継続できない、目先の誘惑に負ける)」ことは悪とされがちです。

ダイエットが続かない、勉強しようと思ったのにスマホを見てしまう。私たちはそのたびに自己嫌悪に陥ります。

しかし、数万年前の狩猟採集時代に視点を戻すと、評価は180度ひっくり返ります。

当時の環境は、常に飢餓の恐怖と隣り合わせの、超・エネルギー不足社会でした。

次の食料がいつ手に入るか分からないので、生命維持のために以下の2つの行動をとる個体が圧倒的に生き残りやすかったのです。

無駄なエネルギーを使わない(サボる)。

明日生き残るために、必要のない時は徹底的にゴロゴロしてカロリーを節約する個体(=現代の「やる気が出ない」「三日坊主」)。

手に入った報酬は今すぐ消費する。

明日には腐ってしまうかもしれない、あるいは他の動物に奪われるかもしれない肉や果実は、保存など考えず「今、その場で全て胃袋に収める」個体(=現代の「目先の誘惑に負ける」「現在バイアス」)。

逆に、「10年後のキャリアのために、今は辛くても毎日コツコツ走ろう!」などと、遠い未来のために貴重なカロリーを消費していた強い意思を持った人は、エネルギー切れで生きていくことができませんでした。

つまり、「意思の弱さ」は、かつて飢餓の時代を生き抜くために脳に刻まれた「最先端の省エネ・サバイバルモード」が、大成功している証拠なのです。

「人の批判」の生存優位性

裏切り者を許さない集団の防衛策

もう一つの悩み、それは「他人の言動にイライラして批判したくなる心」や、ネット上に溢れる「過剰なバッシング(他人の引きずり下ろし)」です。

なぜ私たちは、自分に直接関係のないことでも、他人の非難にこれほど多くのエネルギーを使ってしまうのでしょうか。

これも、数万年前の群れ社会では集団の崩壊を防ぐための、絶対に必要な防衛システムでした。

大自然の中で人間が生き残るためには、数十人の緊密なチーム(共同体)を作り、全員で協力してマンモスを狩り、全員で食料を分け合う必要がありました。

この時、集団にとって最大の脅威となるのが「フリーライダー(タダ乗りする裏切り者)」です。

自分は危険な狩りに行かないのに、肉だけはちゃっかりもらう。

群れのルールを破って、自分だけ美味しい果実を独り占めする。

こうした裏切り者を「まあ、いいか」と放置してしまうと、真面目に働くメンバーが馬鹿らしくなり、集団はあっという間に内部崩壊して、全員が野生の猛獣の餌食になってしまいます。

だからこそ、私たちの脳には「ルールを破る奴(異分子)をいち早く見つけ出し、激しい怒りを感じて、徹底的に批判・排除するという強力な警報アラート(正義中毒プログラム)が組み込まれました。

裏切り者を厳しく取り締まる警察官(=人の批判)が多い集団ほど、生存確率が高かったからです。

当時は数十人の部族内のフリーライドを見つけるためのセンサーでした。

ただ、現代はSNSのせいで「世界中の会ったこともない他人の言動」にまでセンサーが過剰反応してバグを起こしているのです。

他にもDNAで引き継がれているもの

私たちの多くの心はDNAで引き継がれている

上記の意思の弱さと人の批判だけでなく、多くの心には先祖の人たちが生き抜いてきたDNAが引き継がれています。

他にも沢山ありますが、ここでは3例を紹介します。

ネガティブ思考

20代の若手社員は、上司のちょっとした一言に落ち込んだり、「将来への不安」「仕事の失敗への恐怖」に頭を抱えがちです。

ただ、数万年前の荒野では、「超・心配性な人」だけが生き残れました。

茂みがガサッと揺れたとき、「ただの風だろう(ポジティブ)」と考えた楽観的な先祖は、猛獣に食べられて全滅しました。

「猛獣かもしれない!(ネガティブ)」と過剰に怯えて逃げた心配性な先祖だけが生き残り、そのDNAを私たちに繋ぎました。

したがって、ネガティブ思考は、あなたのメンタルが弱いからではなく、あなたの脳が生き残るために優秀すぎるからです。

新しい挑戦へのブレーキ

「新しい企画を提案したいけれど怖い」「転職や新しいスキルアップに踏み出せない」という、若手のキャリアにありがちな葛藤です。

数万年前の時代では「見たことのないルートを開拓する」「食べたことのないキノコを食べる」といった新しい挑戦(スタンドプレー)は、高確率で『死』を意味しました。

「昨日までと同じ行動、同じ場所、同じ人間関係(現状維持)」を徹底することが、最も安全に生き残る確率を高める戦略だったのです。

したがって、一歩踏み出せないのは、やる気がないからではなく、脳が必死にあなたの命を守ろうとブレーキをかけているのです。

他人の目を過剰に気にする

「同期と比べて焦る」「SNSの反応や、他人にどう思われているかが気になって疲れる」という、現代人を象徴する悩みです。

数万年前の数十人の部族で生きていた時代、周囲から「あいつ、和を乱すな」「使えないな」と思われることは、集団からの放逐(=野生の猛獣の餌食になる)を意味していました。

そのため、人間の脳は「常に周りの顔色を伺い、自分の評判を1分1秒でも気にし続ける」という超高感度センサー(アプリ)を搭載したのです。

当時は数十人を気にしていれば良かったセンサーで、SNSや大企業という数万人規模の顔の見えない集団に対応してしまっているのです。

近年進化における考え方の変化

適者生存をコントロールできるようになった

本来の自然界であれば、環境に適応できない個体は淘汰されてしまいますが、現代の私たちは医療や文明の力で「適者でなくとも、誰もが安全に生きられる社会」を作り上げました。

命が守られるという極めて大きなメリットがある一方で、本来なら淘汰されていたはずの「現代環境にミスマッチなDNA」も、そのまま次世代に引き継がれていくことになります。

この変化が人類の未来にどのような影響を与えるかは、文明が始まってまだ数百年(数世代)しか経っていないため、誰にも分かりません。

しかし、人間が自らの手で「進化の定義」を根底から変えつつあるのは確かな事実なのです。

古いOS(DNA)で現代を生きる方法

古いOSを騙す(ハックする)小さな仕組みを作る

私たちがすべきなのは、ずる賢く、古いOSを騙す(ハックする)小さな仕組みを作ることです。

本能は、真っ向勝負では絶対に勝てない最強の敵です。

だからこそ、精神論ではなく以下のような方法を試してみて下さい。

「最初の5分、最初の1行だけやると決める」

勉強なら「ビジネス書を開くだけ」、資料作成なら「PCのファイルを開いてタイトルを打つだけ」。

古いOSに「サボらせてあげるから、ちょっと触るだけね」と嘘をついて、最初の一歩だけ踏み出してみる。

それだけで、踏み出した後も行動できるようになります。

「5秒以上かかる状態を作る」

スマホを見るな、は無理です。古いOSには勝てません。だから、集中したい時はスマホを隣の部屋に置くなどとルール化してみて下さい。

手を伸ばしてスマホを触るまで5秒以上かかる状態を作るだけで、本能のブレーキが勝手に働きます。

「センサーに触れない」

他人の目が気になるのは、あなたの心が弱いからではなく、脳のセンサーが優秀すぎるからです。

対処法は、他人の言動が「目に入らない仕組み」を作ることだけです。

仕事中は社内チャットの通知を特定の時間だけオフにする、メールを開けない、SNSの愚痴が多いアカウントは見に行かない。

このようにセンサーに触れない行動を取ってみましょう。

「私の事例」

私の場合、「毎日の生活の中で必ず起きること」を行動のレバー(引き金)にしています。

・行きの電車に乗ったら、ブログネタをメモしてある「Google Keep」を必ず開く。

・帰りの電車に乗ったら、カバンから必ず本を開く。

・会社の業務が終わったら、PCでブログの管理画面を必ず開く。

「時間があったらやろう」では、古いOSにいくらでも言い訳されてしまいます。

だからこそ、「〇〇の行動をしたら、セットで▲▲をする」とあらかじめ完全に決めておくのです。

これを繰り返すと、やがて「それをしないこと自体に違和感(気持ち悪さ)」を覚えるようになり、古いOSのブレーキを完全に無効化することができます。

まとめ

今回は、「意思の弱さ」と「人の批判」という、一見まったく別に見える2つの悩みの共通点について解説しました。

私たちの脳は、過酷な大自然を生き抜いた先祖の人たちから引き継いだ、超優秀な「サバイバル用の初期設定(DNA)」のまま動いています。

現代社会という最新のインフラに対して、脳のOSだけが1万年前の古いバージョンのままなのですから、バグ(生きづらさ・不合理)が起きるのは当然のプログラミングなのです。

だからこそ、「意思が弱い自分を責める必要は1ミリもないし、他人にイライラする自分を嫌悪する必要もない」ということです。

「自分は1万年前のサバイバル脳を持っているんだな」と賢く受け止め、上記で説明した方法で古いOSをスマートに騙すことです。

精神論(根性)を捨てて、仕組みで自分をハックする。

これこそが、この複雑な現代社会をストレスフリーに、そして打たれ強く生き抜いていくための、大人の本当の「知性」なのです。

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