上司や先輩に「この案件赤字だぞ」と言われたことはないですか?
他にも「赤字」という言葉を使って指摘を受けたことがあると思いますが、「赤字」ってどのような意味かわかりますか?
仕事で扱う言葉の多くは、人によって定義が変わるものが多いですが、この「赤字」はその中でもとても幅広い意味で使われます。
一見、誰もが知っている言葉に思えるからこそ、定義のズレが放置されやすく厄介です。
言葉の真意を読み解く力がないと、上司の意図を誤解し、無駄な作業やストレスを抱え込む原因になります。
この記事では、この「赤字」を3つに分けて分かりやすく解説します。
この記事を読むととても広く使われる「赤字」の定義を理解できるようになります。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つ「よしつ」が実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい、基礎となるビジネス用語を解説)
赤字と言われた場合にまず考えないといけないこと
相手の定義を把握しコミュニケーションの齟齬をなくす
赤字ほど幅広く使われる言葉はありません。文字通り、損益の観点だけでなく、形容詞的にも使われます。
したがって、相手がどのような定義で言っているかを把握する必要があります。
ビジネス用語はなぜ複数の定義があるかを紹介した上で、上記3つをそれぞれわかりやすく解説します。
ビジネス用語の定義が複数ある理由
ビジネス用語には「実物」がなく、「実体」しか存在しない
「ペン」は実物があるが、「戦略」には実物がありません。
ビジネスで使う言葉の多くは、実物ではなく、実体しかないものが多数あります。
実物とは、「目に見える、触れる具体的なモノ」。ペン、パソコン、机など。誰が見ても形が変わらないものです。
実体とは、「形はないが、確かにそこに存在する本質」。戦略、組織、価値、信頼などで、人によって捉え方が変わるものです。
実は「会社」という存在自体も、実物はなく「実体」として存在しています。
確かに目に見えるオフィスはありますが、「オフィス=会社」かと言われれば、多くの人は違和感を抱くはずです。
会社という枠組みそのものから、そこで交わされる言葉に至るまで、ビジネスの舞台は「目に見えないが確かに存在するもの」で構成されているのです。
ただ、見えないと意思疎通が図れないので、形はないものでも見えるようにするために、言葉や図などで表現します。
だからこそ人による表現内容の差異が出てしまいます。
赤字という言葉の種類
・「数字」のロジックで使う赤字
・「価値」のロジックで使う赤字
・ロジックなしで使う赤字
「赤字」の使われ方は上記3つに分けることができます。
ロジック(論理)的に説明がつく2つとロジックがない1つです。
赤字という言葉が幅広く使われるのは、ロジックがない使われ方をすることも要因の一つです。
まずは、ロジックがある「赤字」の意味を知り、その上でそれ以外の使われ方を知ることが、赤字という言葉を正しく理解する上で大事なポイントとなります。
3つそれぞれを解説します。
「数字」のロジックで使う赤字
会社の損益や指標など数字で表したものがマイナスになる場合です。
具体例な使い方は以下です。
①「原価割れで売るほど赤字だ」
②「値引きしたら仕入れ額を下回り赤字だ」
③「今期の営業利益が赤字に転落した」
④「販管費を引くと利益が残らず赤字だ」
⑤「損益分岐点まであと一歩足りない」
① ~④は、会社全体の数字を表わす損益計算書(P/L)で表現される損益のことで、⑤は損益分岐点です。
まずはこれらで表される赤字の仕組みを理解しましょう。
損益計算書(P/L)で見る赤字
P/Lには5つの損益が出てきますが、売上総利益(粗利)と営業利益の2つを覚えておきましょう。
これらがマイナスになる場合に赤字として表現されます。
売上総利益(粗利)とは、「売上」-「売上原価」で算出されます。
売上総利益は粗利ともいいます。
「売上原価」とは、商品・製品・サービスの製造に直接かかった費用のことです。
以下の販売費及び一般管理費が別途かかりますので、これがマイナスだと会社が存続できない状態です。
上記の具体的な使い方で言うと①②になります。共に、直接かかる原価すらまかなえない状態を表わしています。
営業利益とは、「売上総利益」-「販売費及び一般管理費(販管費)」で算出されます。
販管費の具体例は、営業担当の人件費、管理部門の人件費、広告宣伝費、オフィスの家賃、出張代や交通費、コピー代等があります。直接商品製造に関わるもの以外すべてです。
これがマイナスだと赤字として表現されます。営業利益は本業の収支となりますので、本業が赤字とも言われます。
上記の具体例では③と④です。
(詳しくは、財務三表をつなげて理解「損益計算書(P/L)」編を参照)
損益分岐点分析で見る赤字
損益分岐点とは、営業利益=0となる販売個数もしくは売上を指すことが一般的です。
まさに、「損」と「益」の「境目」このことです。事業を行う上でとても大事なことです。
上記の具体的な使い方では⑤となります。このままでは営業利益が赤字ですが、もう少しで営業利益が黒字化できるという意味です。
(詳しくは、「損益分岐点」を複雑な計算式なしでわかりやすく解説を参照)
「価値」のロジックで使う赤字
個別案件における費用対効果でマイナスになる場合や投資の観点でマイナスになる場合によく使われます。数字(P/L)の上では黒字なのに、「それは赤字だ」と判断するケースです。
具体的な使い方は以下です。
① 「工数負けで実質は赤字だよね」
② 「手間はかかるが儲からないので赤字」
③ 「将来性がない単なる安売りだ」
④ 「ブランドを傷つける赤字受注だ」
⑤ 「実績作りのための戦略的赤字だ」
上記が「価値」のロジックで使う場合の具体例です。
① ②は限られたリソースの優先順位、③④は今の価値の無駄使い及び毀損で、⑤は投資の考え方の話です。
それぞれの使われる背景を具体的に説明します。
① 「工数負けで実質は赤字だよね」
売上は上がり粗利も出ているが、固定費である関わる人の多くの時間を使うことで赤字と判断されます。
関わる人が他のことに時間を使った方が効率よく収益を上げることができると考えるからです。
また、この業務を行うことで残業が発生していると隠れたコストがかかっていることになります。
残業は各案件のコストにはカウントされない場合が多いからです。
② 「手間はかかるが儲からないので赤字」
① と近い使われ方です。①は他部署を含んでいいますが、②は例えば営業担当個人に大きな手間がかかる場合です。
①と同じく手間として時間を沢山使っているので、他のことをおこなえばもっと効率よく儲かると考える際の言葉です。
③ 「将来性がない単なる安売りだ」
安売りは時と場合によっては有効な手段です。在庫保管コスト、消費期限切等に伴う廃棄などのリスクヘッジができます。
他にも取引をしておくと、他の案件が受注できるか可能性があることで、トータルで儲かるという判断をおこなうこともあります。
ただ、このような目的がなく、単なる値下げをした安売りだと単に利益を減らすだけとなります。
④「 ブランドを傷つける赤字受注だ」
売上額は上がってもブランド価値を損なうことで、今後に大きな影響が出ることも踏まえて赤字と言われます。
例えば20万円のバッグが5万円で売られていれば、一時は売れますが『安売りされるブランド』というレッテルを貼られます。
すると顧客は定価で買うのをやめ、ブランドが長年築いた「価値」という無形の資産が赤字に転落してしまいます。
同じ機能(例えば財布)を持った商品だとしても、ブランド価値があれば高いお金を払ってくれることをブランド価値があると言います。
この根幹部分が毀損してしまうことになります。
(ブランドの詳細は、「ブランド・ブランド力・ブランディング」の意味と違いを解説を参照)
⑤ 「実績作りのための戦略的赤字だ」
これだけは①〜④と違いポジティブな赤字と言えます。なぜなら、投資は将来リターンが望める可能性があるからです。
逆に言えば投資をしないと将来リターンはありません。
会社は基本的には長期間活動することを前提としています。
今売上が上がっていたいとしても、将来必ず今の商品は売れなくなります。
だからこそ必ず次の飯のタネを開発し続ける必要があります。そのためには先行投資が必要なので、戦略的赤字は必ず必要なものです。
将来への投資をしない会社に未来はありません。
ロジックなしで使う赤字
形容詞的に使う場合や感情を表す場合です。これらは改善すべき課題ではなく、相手のコンディション(機嫌や癖)の話です。
具体的な使い方は以下です。
①「なんとなく損している気がする」
② 「この手間を考えたら赤字だよ」
③ 「気分的には大赤字の案件だ」
④ 「赤字だと思って気合を入れろ」
⑤ 「とにかく儲からないから赤字だ」
それぞれの使われる背景を紹介します。
① 「なんとなく損している気がする」
正確な収支計算に基づいた発言ではなく、上司の「直感」や「過去の経験則」から来る違和感を元に発せられる言葉です。
ビジネスには違和感を察知するセンスも必要ですが、ロジックがないため、言われた側は何を改善すべきかが見えません。これは「分析」ではなく、単なる「感想」の領域です。
② 「この手間を考えたら赤字だよ」
「価値のロジック」における工数管理の話に似ていますが、数値の裏付けがなく感覚で発している言葉です。
本来は『大変だ』という個人の感想に過ぎないものを、「赤字」というビジネスライクな言葉にすり替えることで、あたかも正当な不満であるかのように演出している状態です。
③ 「気分的には大赤字の案件だ」
収支が黒字であっても、進め方やコミュニケーションにおいて多大なストレスがあった場合に使われる言葉です。
「精神的コストが利益を上回った」という状態を指しますが、これはビジネスの損益計算には存在しない、あくまで個人の「感情の収支」の話です。
④ 「赤字だと思って気合を入れろ」
もはや収支の話ではなく、単なる「叱咤激励」や「危機感の醸成」のための道具として言葉を使っています。
「赤字」という強い言葉を投げかけることで、相手にプレッシャーを与え、パフォーマンスを引き出そうとするコミュニケーションの「癖」です。
⑤「とにかく儲からないから赤字だ」
「利益が少ない」と「赤字(マイナス)」は本来別物ですが、期待したほどの利益が出ない場合に、投げやりに「赤字」と呼ぶケースです。
言葉の定義を曖昧にしたまま、「期待外れだ」というネガティブな評価を強調するために使われます。
このように赤字という言葉は多種多様に使われる言葉です。
まとめ
「赤字」という言葉は、以下の3つの階層で使われています。
・「数字」のロジックで使う赤字
・「価値」のロジックで使う赤字
・ロジックなしで使う赤字
上司から「赤字だ」と言われたとき、「自分の計算が間違っているのか」と数字を見直して疲弊してしまいがちです。
しかし、その「赤字」がどの階層の言葉なのかを見極めることができれば、無駄に落ち込むことも、的外れな修正をすることもなくなります。
まずは相手の「定義」を確認する。その一歩が、ミスコミュニケーションを防ぐ最大の処世術となります。
もし判断に迷ったら、『それはP/L(数字)のお話でしょうか? それとも工数や将来性(価値)のお話でしょうか?』と、定義を確認する質問を投げかけてみてください。
その一言が、あなたを不毛な悩みから解放する鍵になります。
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