転職時の企業研究のやり方をWebで調べて見ると、途中で挫折していまいそうな方法が多く紹介されています。
私なら1社実施するだけで疲れ果ててしまいます。皆さんはどうですか?
企業研究の目的があやふやなことと、どのサイトもまずは1から調べてノートにつけて、という同じような記事が展開されているからです。
例えば、判断の基準となる「粗利の高い会社を選ぼう」とか、「人事評価制度がしっかりしている会社を選ぼう」といった、具体的なアドバイスが少ないと感じたことはありませんか?
この記事では、せっかくの企業研究が失敗に終わらず、転職が成功できるように、転職者向けに効率的かつ実用的な企業研究のやり方を紹介します。
この記事は、
・3回の転職経験
・中途採用の責任者の経験
・多数の書類選考・面接の経験
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【転職】転職前の心構えと知識・具体的な方法)
企業研究のやり方
第一段階
伸びている会社
粗利益率が高い
すぐにわかる上記2点だけでまずは振るいにかけます。
第二段階
商品が売りたくないものかどうか?
上が詰まっていない
離職率が高くない
取締役を知る
第一段階をクリアした会社について上記4点を調べます。
第三段階
自分の興味・関心で候補会社を選択
面接では人事評価制度を確認
第三段階では、上記2つでおこないます。
この三段階でおこなうのが効率的な企業研究です。
明確に入社したい会社像があるのであれば、この観点で知らべる必要はありません。
多くの候補会社から数社に絞りたい場合に、上記のステップで企業研究をおこなうことで潜在的に希望する企業をクローズアップすることができます。
もちろん職場に入って実体験できるわけではないので、完全に見極めることは難しいです。
ただ、その中でも、成功の確率を上げるために上記の三段階でおこなうことをおススメです。
すべての会社を一から調べるのではなく、第一段階の基準だけをさっと調べてから、第二段階に進んだ企業を詳細に見に行き、最終的に第三段階の基準で選ぶことで、同じ時間で沢山の企業研究ができます。
この三段階を詳しく紹介する前に、「企業研究の目的」「なぜ各サイトとも企業研究の方法が同じなのか?」を紹介します。
その上で、上記三段階の企業研究の具体的なやり方を紹介します。
転職の企業研究の目的とは?
自分にとって今以上の会社を見つけるために、各企業を調べること
転職の目的は、今いる会社より良い会社に移ることです。
したがって、転職を成功するための方法である企業研究の目的は、上記になります。
ただ、1社1社詳細に調べているととても手間がかかります。
自分に合う可能性のある会社かどうかをさっと判別することから始めるのがとても大事です。
企業研究の目的は内定をもらうことではない
会社を研究して面接などで受け答えをしても、それが直接的に採用へつながるとは限りません
私は20代の中途採用の面接を定期的におこなっています。
面接で合格を出すポイントは、基礎能力があるかどうかです。
具体的には、最低限のコミュニケーション能力があるか?地頭は悪くないか?何かをおこなう際の基本スタンスに問題がないか?です。
なぜなら、20代であれば知識スキル能力は「基礎能力」があればいくらでも向上するからです。
これらを質問に対する答え方(答えた内容ではない)で判断しています。
逆に、当社のことを良く知っていることで面接を通過させる面接官は何を基準にしているのでしょうか?
多分、勉強熱心?志望ランクが高い?でしょう。
ただ、採用をちゃんとやろうと思っている会社は人の「表面上」の受け答えで判断しません。
人物を理解せずに採用することで、入社後活躍できない人が沢山入社してしまうことを知っているからです。
逆に、そのような表面上の基準で採用する会社に入社したら後で苦労するともいえます。
どのサイトも同じような内容を紹介している理由
企業研究の記事を書く上で、企業名や企業の特性に言及しづらいから
まずは、「企業研究」でWeb検索してみてください。上位に出てくる記事を書いている会社の業種に注目してみてください。
就職や転職を商売にしている会社がほとんどです。もちろんこれらの会社のことを悪く言うつもりはありません。
ただし、これらの会社のビジネスモデルは、転職希望者を紹介することで採用したい会社からお金をもらう、もしくは、広告掲載してもらうことです。
当然さまざまな企業と取引しています。例えば粗利率の高い会社を選びましょうというと、取引している粗利率の低い会社に応募が集まりません。
このような理由で、企業名や企業の特性に言及しずらいのです。
したがって、紹介する内容が、具体的な選び方ではなく企業研究の総論になるのです。
企業研究の進め方の「詳細」
企業研究の方法を三段階に分けてそれぞれ解説します。
第一段階
伸びている会社
粗利益率が高い
それぞれを説明します。
伸びている会社
なぜ伸びている会社を選ぶのか?
売上が伸びないと給料が上がらないからです。
会社は、売上が伸びないと給料を上げることができません。売上が減ると人件費に使える原資が減るからです。
もちろん、売上が上がれば必ず給料が増えるわけでもないですし、売上が上がり続けるかどうかもわかりませんが、直近5年間で伸ばしている会社なら、伸びていない会社と比べると売上が伸びる確率は上がります。
(売上が伸びるメリットの詳細は、全員にメリットあり!会社が毎年「増収増益」を目指す理由を参照)
伸びている会社かどうかの調べ方
上場会社は、決算時に公表している「有価証券報告書」を見ると一発でわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の「有価証券報告書」をご覧ください。
最初の方に「提出会社の経営指標等」という部分で直近5年間の売上の一覧を見ることができます。
この売上を見て伸びているかどうかを判断しましょう。
上場会社でない場合は、就活サイト(リクナビ・マイナビ等)で当該会社の詳細ページを確認しましょう。
売上が記載されていればその数値を参考にすることと、新卒の直近の採用数が増えていれば、売上が伸びている可能性が高くなります。
もし掲載がなければ、対象会社のホームページ、転職サイト(リクナビ・マイナビ・エン等)で採用募集しているかを確認しましょう。
あくまで予測となりますが、採用しているということは、売上が伸びている可能性が高くなります。
補充で採用募集している場合も含まれますので、参考程度にしてみてください。
採用していなければ、売上が維持か減少していると想定できます。
粗利益率が高い
なぜ粗利が高い会社なのか?
粗利率(売上高総利益率)が高いと、少しの売上で利益が出やすいことと、他社と差別化できている場合が多いから、利益を出しやすいからです。
目安で粗利率が60%以上あるかどうか?をまずはひとつの基準にします。
ただ、小売や販売代理業のように仕入れ販売の業種や、メーカーのように実物を自社で製造して販売する場合はもっと低くなりますので、同業他社と比較することで粗利率が高いかどうかを判断しましょう。
例えば粗利率が20%の会社と粗利率が80%の会社があるとします。
1,000万円の粗利を出すためには、粗利率が20%の会社は売上額が5,000万円必要です。
80%の会社は、1,250万円の売上で1,000万円の粗利が出せます。
この差は、会社の利益体質を大きく左右するほど重要なのです。
また、同業他社と比べて粗利率が高いということは、他社との差別化が出来ている場合が多いので、利益率が高い商売ができています。
同じようなサービスなら他社と比較検討されます。結果、他社に合わせた価格設定にせざるを得ず、高い価格で販売できなくなります。
粗利益率が高いかどうかの調べ方
上場企業は、決算時に公表している「決算短信」を見るとわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の決算短信の真ん中位に、「損益計算書」が掲載されています。
その中に売上額と売上総利益額が掲載されています。売上総利益額/売上額×100で算出できます。
上場していなければ、同業で同じような商品を扱っている上場会社の上記を調べてみましょう。
あくまで予測となりますが、参考になります。
ここで把握したいのは、営業利益率ではななく、粗利率(売上総利益率)です。
商品やサービスに直接かかる製造等の原価を差し引いた粗利率で見ることが大事です。商品やサービス自体の利益率を見ないと本当の儲けやすさが判定できないからです。
第二段階
第一段階をクリアしたら以下の内容を調べてみましょう。
・商品が売りたくない商品かどうか?
・上が詰まっていない
・離職率が高くない
・取締役が新卒かどうか?
それぞれを解説します。
商品が売りたくない商品かどうか?
なぜ商品が売りたくない商品かどうかなのか?
多くの場合、一度嫌いだと感じたものを好きになるのは難しいものです。
一般的な会社選びでは、つい好きな商品やサービスを扱っている会社を選びがちですよね。
ただ、この選び方の大きな欠点は、好きでも嫌いでもない商品(=知らない商品)を扱う会社を排除してしまうことです。
また、5年後も好きでいられるかどうかはわからないなかで選んでしまうことです。
今持っている知識で判断することになるので、どうしても上記のことがおきます。
20代でさまざまな知識を持っている人は多くはいないので、嫌いなものは排除するという考え方がおススメです。
例えば、私の転職時は、家族や友達に商品を売りたくないので、BtoCの会社はすべて排除。
BtoBでも、お金を売りたくないので金融関係は排除します。
これだけで、かなり排除できますし、その他は知らなくても対象となり、知らない良い会社を選択肢から外す可能性が低くなります。
(会社の選び方の詳細は、自分に合う会社の見つけ方!大事にすべき4つの基準をわかりやすく解説を参照)
売りたくない商品の会社かどうかの調べ方
まずは、自分の嫌いな商品・サービスを明確にしましょう。
嫌いなことは基本一生変わらないので、判断基準は「嫌い」でOKです。
対象会社のホームページを見て判断しましょう。
上が詰まっていない
なぜ上が詰まっていないことを確認するのか?
上が詰まっていると、
・昇進の確率が低くなる
・昇進の時期が遅くなる
・古い考え方にとらわれている可能性がある
この3つの可能性が高くなります。
昇進しないと基本給料は増えません。また、10年以上同じ役職で同じ内容の仕事をする確率が上がります。
結果、成長につながる経験値を積むことが出来なくなります。
その上、昔ながらの考え方が多く、新しい考え方を受け入れない可能性が高くなり、業績が落ちる可能性が高くなるからです。
上が詰まっているかどうかの調べ方
上場企業は、決算時に公表している「有価証券報告書」を見ると一発でわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の有価証券報告書をご覧ください。
「従業員の状況」という欄が前半にあり、そこに平均年齢が記載されています。
あくまで平均年齢なので、ばらつきがある可能性はありますが、41歳を超えていると上が詰まっている可能性が高くなります。
22歳で入社、60歳で定年をするとして、その中央値が41歳となるからです。
未上場企業の場合は、設立年で予測する方法となります。
多くの会社は、ホームページの会社概要に設立年を掲載しています。
また、沿革(設立からの出来事)を載せている会社もあります。
あくまで予測ですが、設立から40年以上たっていれば上が詰まっています。
離職率が高くない
なぜ離職率なのか?
俗に言うブラックな企業は、間違いなく離職率が高くなります。したがって離職率が大事になります。
ただ、離職率は公表されていません。就活サイト等で新卒入社の離職率は公表されていますが、それだけでは判断できません。
離職率の調べ方
・平均勤続年数
・人事評価制度の目標の立て方と評価方法
上記2点で把握します。
上場企業は、平均勤続年数は、決算時に公表している「有価証券報告書」を見ると一発でわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の有価証券報告書をご覧ください。
未上場企業の場合は、就活サイトを参照下さい。
上場企業の有価証券報告書は嘘はつけません。法で裁かれるからです。
ただ、就活サイトは民間企業に掲載している情報なので、各企業がどこまで本当のことを就活サイトに伝えているか?はわかりません。
嘘は見抜けませんが、参考にはなります。
ただし、あくまで新卒で入社した人の離職率です。会社全体の離職率ではないので気をつけましょう。
もう一つの視点は、人事評価制度の目標の立て方と評価方法から判断する方法です。
ブラック企業の定義はさまざまですが、ちゃんとした評価制度があり、目標設定と評価方法も適正であれば、ブラック企業ではない可能性が高くなります。
さらに言えば、評価方法が結果だけでなく、行動したこと(=プロセス)も評価される仕組みであればまず大丈夫です。
ただ事前に人評価制度を調べることができないので、後述しますが、面接時に確認しましょう。
取締役
なぜ取締役なのか?
会社の方向性を決めるひとだからです。
会社で偉くなった人が取締役です。そして、その人たちが会社の方向性を決めます。
だから、取締役が大事なのです。
取締役の何を知るのか?
・中小企業は同族がどうか?
・大手企業は取締役が新卒でその会社に入社している比率
同族かどうかは、ホームページの会社概要で確認し、同じ苗字が並んでいるかどうかでわかります。
取締役に占める同族の割合が高いほど、能力に見合わない役職者がいる可能性が高まります。
彼らは自身の努力で役職を得たわけではないため、役職相応の仕事ができないケースも少なくありません。
私の経験上、取締役が3名いれば1名は、創業者の息子や娘といった関係性の場合、怪しいケースが多いと感じています。
彼らは経営的な課題解決が苦手なため、些細な問題に執着して社内を混乱させたり、目的や課題設定があいまいなまま解決策を求めたりすることがあります。
さらに、家族間の人間関係や金銭問題、情報共有の不足などが社内トラブルに発展し、経営判断が滞るリスクも無視できません。
次に、大手であれば、取締役が新卒でその会社に入社している比率を調べます。
新卒入社比率が高ければ高いほど、その会社だけの経験しか持たない経営者であるため、独自の文化が発達しています。
その文化に染まらないと働きにくい可能性が高いことと、社内政治がドロドロしている場合が多くあります。
第三段階
第二段階をクリアしたら、以下2点で最終決定しましょう。
・自分の興味・関心で候補会社を選択
・面接では人事評価制度を確認
自分の興味・関心で候補会社を選択
第二段階をクリアしていれば、おおよそ悪い会社を選ぶ確率は減ります。
もし悪い会社だったとしても、給料の上がる確率は高まるので、最悪のケース(悪い会社で給料もだめ)ではない場合が多くなります。
あとは、自分が興味を持てるかどうかで判断しましょう。
面接では人事評価制度を確認
・人事評価制度は、会社組織の根幹をなす制度
・良い会社は、根幹の制度をちゃんと設計実行している
上記2点の理由で、人事評価制度を見たら良い会社かどうかがわかります。
したがって、唯一把握できる場面である、面接時の逆質問では必ず確認しましょう。
(詳しくは、会社の見分け方「良い人事評価制度」があれば良い会社を解説を参照)
企業研究のやり方の「まとめ」
第一段階
伸びている会社
粗利益率が高い
すぐにわかる上記2点でまずは振るいにかけます。
第二段階
商品を売りたいか売りたくないか?
上が詰まっていない
離職率が高くない
取締役を知る
第一段階をクリアした会社について上記4点を調べます。
第三段階
自分の興味・関心で候補会社を選択
面接では人事評価制度を確認
この3段階でおこなうのが企業研究です。
20代での転職失敗は、その後のキャリアに大きく影響し、書類選考の通過率が大幅に下がる可能性があります。
上記であれば、できる範囲だと思いますので必ず調べてみましょう。
他にも転職に関する「具体的な方法」で以下の記事を書いています。参照下さい。
- 「転職エージェント・転職サイトの選び方」
- 求人募集内容の「裏の見方」
- 「会社口コミサイト」の見方の注意点
- 「書類通過率を上げる」考え方と方法
- 「採用面接」で知っておいてほしいこと
- 「面接の逆質問」で絶対聞きたい3つのこと
- 「条件通知」で知っておきたいこと
- 内定後「入社を決める前」に大事にしたいこと
当サイトでは以下のカテゴリーで200以上の記事を掲載しています。気になる内容があれば参照下さい。
・【 概念の本質 】ビジネスの根幹・基礎用語の本質・人の本質
・【キャリアプラン】軸とタイミング・成長ロードマップ
・【 自己成長 】定義から効率的な学びの方法を紹介
・【社会人の悩み 】素朴な悩み・よくある悩みと対策
・【 課題解決 】問題課題、戦略戦術フレームワーク・法則
・【ビジネススキル】必須スキル・思考方法・コミュニケーション
・【ビジネス用語 】基礎用語解説
・【 企業会計 】一つの軸で理解・収益構造とコスト分析
・【企業実例研究 】成長企業の成長理由
・【 会社の環境 】良い会社の特徴
・【 転職 】転職前の心構えと知識・具体的な方法
・【 読書ガイド 】テーマ別おススメ本
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