転職活動中、皆さんは様々な求人情報を目にしていることでしょう。
企業は多くの人に興味を持ってもらいたいので、「こんな魅力がありますよ!」とアピールポイントをたくさん盛り込み、求人票を工夫して作成しています。
しかし、その魅力的な言葉の裏に、実は見過ごせない課題が隠されていることも少なくありません。
表面だけを見て「良い会社だ」と思っても、その本質を読み解くと「注意が必要な会社だ」と判断できるケースもあるのです。
この記事では、求人票に記載されたアピールポイントから、企業の「本当の姿」を見抜く方法を分かりやすく解説します。
この知識があれば、企業選びで失敗するリスクを減らせるだけでなく、面接時に確認すべき具体的な質問事項も見つけられるはずです。
この記事は、
・3回の転職経験
・中途採用の責任者の経験
・多数の書類選考・面接の経験
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが、実際に掲載原稿を作成している際の経験を元に書いています。
(あわせて読みたい、知っておきたい 転職の知識(転職判断から入社まで)
求人掲載内容から「本当の姿」を読み解く10選
ここでは、求人掲載内容から企業の「本当の姿」を見抜く10の具体例を解説します。
提案する範囲が広い
表の見方と裏の見方
表の見方
提案の幅が広く、とてもやりがいのありそうな仕事内容
裏の見方
会社の強みがない可能性
一見すると魅力的ですが、この言葉の裏には「自社に際立った強みがないため、各自で売り方を考えて受注してほしい」という意図が隠されているケースが少なくありません。
このような企業では、多様な提案をしないと顧客を獲得できず、結果として営業個人の力量に大きく依存することになります。
案件獲得に時間がかかり、受注率が低い非効率な業務になりがちです。
もし強力な製品やサービスがあれば、受注率は高く効率的になり、提案の範囲も自然と絞られ、一貫性を持つはずです。
(詳しくは、会社の見分け方「営業力に頼らない会社は良い会社」をわかりやすく解説を参照)
面接時に質問したいこと
- 貴社の製品・商品・サービスの強みは何ですか?
- 競合は多いですか?
この2点が質問してみましょう。
前者は、どれだけ、明確に答えてくれるか?後者は、競合数で判断できます。競合数が少なければ差別化できた強い製品・商品・サービスと言えますし、競合が多い場合は、強くない場合がほとんどです。
幅広く様々な業務を担当
表の見方と逆の見方
表の見方
若手でも任される領域が多い
裏の見方
人が足りていない可能性、もしくは分業設計ができていない
若手が多様な業務を経験できるのは一見魅力的ですが、なぜそこまで幅広い業務を一人で担当する必要があるのでしょうか?
多くの場合、人手が不足しているか、組織としての分業設計が未熟である可能性が考えられます。
会社組織の本来の目的は、一人では成し得ないことを協力して行うことにあります。
その上で、業務を適切に分業することは非常に重要です。この設計が不十分だと、結果的に一人で何から何までこなさなければならない状況に陥りがちです。
もちろん、若手の成長のために意図的に幅広い業務を経験させる企業もあります。
しかし、注意が必要なのは、単に人手が足りない、または分業体制が整っていないために、多くの業務を一人に押し付けているケースです。
(会社組織の本質は、「会社組織」の本質とは?をわかりやすく解説を参照)
面接時に質問したいこと
- 幅広くとありますが、具体的にはどのような業務をおこなえるのでしょうか?
- さまざまな業務とはどのような業務ができるのでしょうか?
具体的に聞くことで、答えてくれた内容で把握できます。あえて2つに分けるのは、同じような質問につじつまが合うかを確認するためです。
〇〇候補として採用
表の見方を逆の見方
表の見方
昇進ルートが見える
裏の見方
確約できない何かの理由がある
昇進の可能性が示唆される募集内容は魅力的ですが、なぜ「候補」という曖昧な表現を使うのでしょうか?
通常、企業は特定の役職(ポジション)を定めて募集し、その基準に合う人材を採用します。これは、応募者に安心感を与え、応募を促すためです。
しかし、「課長候補」や「店長候補」といった形で募集している企業があります。「候補」という言葉は、頑張ってもその役職に必ずしもなれるわけではない、ということを意味します。
例えば、課長になれるのは1人なのに、5人を「課長候補」として採用しているケースも存在します。
この表現は応募者の期待値を高める一方で、企業側には採用後に昇進を決定できるというリスクヘッジの側面があります。
このような期待値を煽る手法を用いる企業は、採用活動という重要な場面でこの表現を容認していることから、企業の風土として同様の手法を取る傾向にあると考えられます。
面接時に質問したいこと
- そもそも受けない
- (もし面接を受けるのであれば)平均的に何か月位でそのポジジョンになる人が多いですか?
まずは避けましょう。ただ、面接を受ける場合は、真っすぐに聞くことです。
前職の給与を考慮
表の見方と逆の見方
表の見方
個人の事情により給料を設定してくれる
裏の見方
一貫性のない人事制度の可能性
転職時に前職の給与を考慮してくれるのはありがたい話に聞こえます。
確かに採用段階では良い点です。しかし、この言葉の裏には、新たな入社者が現れるたびに、その時の採用状況や前職の給与によって提示額が変わるという問題があります。
結果として、入社後に他の社員との間で給与体系に不公平感が生じやすくなります。
さらに言えば、きちんとした給与体系や人事評価制度がないために、このような「考慮」ができるケースが多いのです。
社長などの個人的な判断で給与が決まるため、成果、給与、役職が一致しないといった不透明な状況が起こりやすくなります。
(人事評価については、会社の見分け方「良い人事評価制度」があれば良い会社を解説を参照)
面接時に質問すること
- 人事評価制度はどのような制度でしょうか?
- 入社後どのように給与が上がるのでしょうか?
前者で特に大事なことは、目標設定です。結果とプロセス両方が入っているがどうかがポイントとなります。
(詳しくは、会社の見分け方「結果よりもプロセスを求める会社」は良い会社を参照)
後者では、定期昇給がなくなりつつありますので、入社後、ちゃんと給与が上がるのかどうかがわかります。
残業が少ない
表の見方と裏の見方
表の見方
残業が少ないホワイトな会社
裏の見方
サービス残業が常習化している可能性
近年、「残業が少ない」ことをアピールする企業が増えました。もし本当に残業が少なければ素晴らしいことですが、これほど多くの企業が謳っている現状には疑問も残ります。
ここで言う「残業」とは、会社が定める労働時間(例:1日8時間)を超えて働くことを指します。
会社にいる時間と必ずしもイコールではありません。例えば、9時出社で8時に会社に来る早出は残業にはなりませんし、オフィスを出た後にカフェなどで仕事をするのも残業には含まれません。
重要なのは、勤怠システム上の数字だけでなく、実際の労働実態です。
面接時に質問すること
- 会社のパソコンは携帯している人が多いですか?
- 会社の携帯電話は持ち帰りされている人が多いですか?
共に物理的に働けるかどうかの確認になります。パソコンの携帯(持ち帰り)はかなり怪しいです。
実態を把握する方法
残業の実態を把握する方法があります。内定をもらった会社に朝の8時と夜の21時位に訪問してみてください。
フロアには入れないですが、外から電気がついているかどうかはわかります。これで実態が把握できます。
そのために、面接時にその会社のフロアの向きと占めるスペースを把握しておくといいですよ。
「20代で年収1000万も可能」
表の見方と逆の見方
表の見方
若い人にも結果に対して給料を支払う
裏の見方
結果を出さないと給料が減る可能性
20代で高額な年収が得られる企業も確かに存在しますが、その背景には理由があります。
転職時に年収500万円以上を提示される場合、応募者に極めて特殊な能力があるか、または歩合給の仕組みが導入されているかのいずれかが考えられます。
歩合給とは、商品やサービスを販売した金額の一定割合、または定額のインセンティブが基本給に上乗せされる仕組みです。
これは基本給が上がるわけではなく、販売実績に応じて初めて得られる報酬です。つまり、常にその額が保証されるわけではありません。
もし一時的に高い売上を上げ、多くのインセンティブを支払った実績があれば、「20代で年収1000万円も可能」と表記できてしまいます。
この表記は、すでに歩合制で働いている社員がいることを示唆しています。通常、売上が上がりやすい優良顧客やエリアは、すでに経験豊富な先輩社員が担当している場合が多いでしょう。
そのため、入社後に皆さんが担当する顧客やエリアは、先輩社員のように成果が出やすい場所ではない可能性が高いのです。
また、歩合制の企業では、収入が直接担当顧客やエリアに結びつくため、既得権益が生まれやすく、社員同士が協力して働く意識が希薄になりがちです。
一匹狼のように個人で成果を追求したい方には良いかもしれませんが、チームで働くことを重視する方にはあまりお勧めできません。
面接時のヒアリングポイント
- 担当顧客やエリアは変更されることはありますか?
- 新規で獲得した顧客はそのまま担当できるのでしょうか?
この2点です。前者は、売れる顧客やエリアの既得権があるかどうか?後者は、せっかく受注した新規顧客を手放すかどうか?を把握するためです。
テレワークが基本
表の見方と逆の見方
表の見方
柔軟な働き方ができる
裏の見方
結果のみで全てが判断される可能性
テレワークは確かに柔軟な働き方を可能にしますが、その一方で、評価者から業務プロセスが見えにくくなるという側面があります。
このため、基本的に結果が全てと判断される傾向が強まります。
結果は個人の能力だけでなく、担当顧客の業績悪化や市場の変動といった外部環境に大きく左右されることがあります。
もちろん、中には結果だけでなく、上司が積極的にコミュニケーションを取り、プロセスまで含めてサポートする優秀なマネージャーが多くいる企業もあります。
しかし、そのような企業はごく少数です。ウェブ会議や電話といった限られた手段でのコミュニケーションでは、オフィスで隣り合って働くよりも情報共有や偶発的な学びの機会が極端に少なくなります。
オフィス勤務で得られる「たまたまの気づき」は、実は非常に大きな教育効果があるものです。
(詳しくは、なぜ出社しなければならないのか?をわかりやすく解説を参照)
面接時のヒアリングのポイント
- 人事評価はどのような内容で評価していますか?
- 出社は月何日ですか?
前者では、プロセスが評価項目に入っているかを把握しましょう。プロセスがないとなれば、結果のみの評価となります。
後者では、どれくらいの頻度のテレワークかを把握できます。
大量採用中
表の見方と逆の見方
表の見方
成長してる会社
裏の見方
人が沢山やめている可能性
人手不足であるため「成長企業だから増員している」と捉えることもできますし、そのような企業に入社できれば良いことでしょう。
しかし、もう一つの可能性として、多くの社員が辞めているために大量採用を行っているケースも考えられます。
もし後者であれば、これから入社する人も短期間で辞めてしまう可能性が高く、そこには何らかの深刻な問題が潜んでいることが推測されます。
判断方法
このような会社では、面接時に聞いたとしても、ちゃんと答えてくれるかどうかは不明です。成長企業がどうかを知りたいので、ネットで社名検索して、各記事を読みましょう。
成長企業はよく記事になっていますので、出てくる記事で判断できます。
実績主義
表の見方と裏の見方
表の見方
実績=結果を出せばちゃんと評価される会社
裏の見方
マネジメントが弱く結果のみで評価
実績を出せば報酬を得られるのは良いことですが、「実績主義」がプロセスを考慮せず、結果のみを評価する意味合いで使われている場合は注意が必要です。
結果は個人の努力だけでなく、市場環境や運といった様々な要因に左右されることがあります。
しかし、結果主義の企業では、そのような外部要因は考慮されずに評価される傾向があります。
さらに、マネジメント層が弱い可能性も考えられます。
結果のみで評価するということは、評価者であるマネージャーが、部下の成長に関与するといった本来の役割を果たす必要が薄れるため、マネージャー自身も成長しにくい環境になりがちです。
結果として、日々のコミュニケーションが「結果」に関する会話ばかりになり、精神的な負担を感じるかもしれません。
もう一つ注意すべきは、実績の基準となる予算設定がずさんなケースが多いことです。マネジメントが弱いために、予算の難易度調整が適当であったり、ひどい場合は予算達成率ではなく売上総額だけで評価され、担当する顧客やエリアによって大きく左右されることもあります。
面接時のヒアリングポイント
- 予算設定方法はどのような方法でしょうか?
- 実績主義とは結果主義のことでしょうか?
前者は、実績主義の一番肝になる予算設定方法を知ることで、納得性があるのかないのかが把握できます。
後者は、言葉の定義を把握することができます。結果だけなのか?結果に何かが付加されて評価されるのかを知るためです。
面接1回で内定
表の見方と裏の見方
表の見方
内定が出やすい会社
裏の見方
やめることを前提で採用する会社の可能性
内定を早くもらえるのは嬉しいことですが、たった1回の面接で、容易には解雇できない正社員の採用を判断する企業には疑問符がつきます。
通常、正社員の採用は複数回の面接を通じて、複数の目で候補者を評価し、入社後のミスマッチや採用失敗のリスクを減らそうとします。
そうしないということは、企業が採用失敗のリスクを承知している、あるいは軽視しているということになります。
採用失敗が多いと、社内での受け入れ体制も大変になるため、一般的な企業はそのような選択はしません。
にもかかわらず、1回の面接で内定を出すということは、社員を使い捨てのように考えている可能性も否定できません。
判断方法
受けないことです。
「本当の姿」を読み解く10選の「まとめ」
私自身も経験がありますが、転職活動は内定が出ないといった不安から、焦って拙速な判断を下しがちです。
その結果、入社後にミスマッチが発覚し、再び転職活動を繰り返すことになり、職務経歴書に不要な経歴が増えるだけ、という事態にもつながりかねません。
そうならないためにも、求人票の文面には必ず「表」と「裏」があることを理解し、今回ご紹介した見方の知識を増やして、賢く企業を見極めていきましょう。
その他にも転職活動時に知っておきたいことの記事を書いています。参照下さい。
- 「転職エージェント・転職サイトの選び方」
- 「企業研究のやり方」
- 「会社口コミサイトの見方の注意点」
- 「書類通過率を上げる考え方と方法」
- 「採用面接で知っておいてほしいこと」
- 「面接の逆質問で絶対聞きたい3つのこと」
- 「条件通知で知っておきたいこと」
- 「内定後入社を決める前に大事にしたいこと」
転職エージェント・転職サイトの選び方は、失敗しない転職エージェント・転職サイトの選び方と活用方法を参照下さい。
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