会社で働いていると、打ち手・施策を考える機会が多くあります。
しかし、時間をかけて考えた案を提案しても、採用されなかった経験は誰にでもあるでしょう。
提案資料の作成に費やした多くの時間が無駄に感じられ、悔しい思いをしたこともあるかもしれません。
提案内容そのものがあまり良くなかった場合は仕方ないと思えますが、それなりの案だと思った時に採用されないと、なかなか諦めがつかないものです。
実は、このような場合、問題を解く前に必要な「たった一つのこと」が欠けているために、提案が通らないことが多くあります。
この記事では、この「たったひとつ」のことについて詳しく解説します。
この記事は、筆者「よしつ」が持つ以下の実務経験や知見に基づいて執筆しています。
・営業担当から執行役員での実務経験
・企業文化の異なる5社での実践経験
・数百名規模のチームマネジメント経験
・数千社におよぶ顧客への営業経験
・100回以上の研修・勉強会での講師経験
(あわせて読みたい、知っておきたい 考え方・意識・スキル)
打ち手を考える際に必ず必要なたった一つのこと
目的・課題を明確にする
そんなことはわかっていると言われそうな、誰でも知っている当たり前のことです。
ただ、これを誰もが必ずできているかといえば、私を含めてできていないことが多いと思います。
なぜなら、常に意識しておかないと忘れたり避けたりしてしまうことだからです。
できない理由は以下の2つです。
・脳の特性
・目的・課題は明確にしにくい
まずは目的・課題とは何かを定義した上で、できない理由それぞれを解説します。
目的・課題とは?
目的・課題を理解するためにとても便利な方法である一枚の図を使って説明します。
目的と課題の定義を表す図

この三角形で目的である目指す姿、現状・問題・課題・戦略・戦術すべてを表わすことができます。
・目的=目指したい姿・ありたい姿=ゴールを設定
・現状を把握
・現状とのギャップが問題
・問題の中で解くべき問題が課題
・課題解決の方法と時間軸が戦略
・戦略の具体的な行動が戦術
上記6つの流れをおさえておくと、すべての関係性含めて理解できます。
ここで取り上げる目的は、目的=目指したい姿・ありたい姿=ゴールを設定となり、課題は、たくさんの問題の中で解くべき問題となります。
(この三角形の詳細は、「目指す姿・現状・問題・課題・戦略・戦術」をたった1枚の絵で表すを参照)
目的・課題の特性
目的・課題を明確にすると解く問題がわかります。
当然のことですが、問題を解くには、その問題が適切に設定されていないと正しい答えにはたどり着けません。
例えば、
A、「A商品の広告案を提案しなさい」
B、「新しく発売するA商品に対して、ターゲットである20代の女性の商品機能認知を上げるために最適な広告方法を提案しなさい」
このような問題があるとします。
どちらが明確な問題になっていますでしょうか?
Aだけの情報で問題を解こうとすると、前提となることを仮置きする必要があります。
例えば、Bのようにターゲットや広告の目的などです。
仮置きしないと問題が解けないからです。ただし、仮置きするということは、問題を出した人の考えと齟齬が生まれる可能性が高まります。
とはいえ、必ずBのような明確な問題が設定されるわけではありません。
多くの場合、明確に問題を設定するために、事前に目的や課題をすり合わせる必要があるのです。
長年の仕事の実感値として、目的や課題を明確にできると「提案の8割は完成」できたと言えます。
では、次に目的課題を明確にできない大きな理由である2つを解説します。
脳の特性
・できるだけ動かない
・目の前のことに集中する
この2つが1つ目の理由です。これらの特性により、「目的・課題を明確にする前に打ち手を考え出す」傾向があるからです。それぞれ解説します。
できるだけ動かない
脳を動かすにはとても大きなパワーが必要です。
例えば広告の手法であれば、脳をあまり動かさなくても「知識」の中から選択肢を出すことが可能です。
例えば、TVCMやWeb広告などです。
しかし、目的や課題を考える際は、すでに頭にある既存の選択肢から選ぶのではなく、そもそも選択肢自体を脳を使って創造する必要があります。
さらに、その中から最適な選択肢を選ぶ際にも、深く脳を動かして考えることが求められます。
したがって、脳の特性から目的や課題を特定する行動よりも、頭の中にある打ち手に意識がいってしまいがちなのです。
目の前のことに集中する
私たちの意識は、目の前のことに集中できるというとても優秀な機能を持っています。
したがって打ち手を考えると指示をすると、前提となる目的や課題ではなく、打ち手自体を考えることに集中する傾向があります。
結果、目的や課題は明確にならない状態となります。
目的・課題は明確にしにくい
・考えて決める必要がある
・組織内の整合性が必要な場合がある
・合意しにくい
目的や課題は上記3点の要素で明確にしづらいです。
それぞれ解説します。
決断が必要
目的や課題を考える際には、まず多様な選択肢を自分で検討し、その中から最適なものを特定する必要があります。
そして、特定するということは、すなわち「決断」を伴います。
この決断こそが、多くの人にとって難しい課題です。
なぜなら、自ら正しいと判断して決めたことが「解くべき問題」となり、もしその判断を誤れば、正しい解決策を導き出すことはできなくなるからです。
組織内の整合性が必要性な場合がある
組織の構造上、目的は自分だけで決めることができない場合があります。

上図は、上位役職者と部下間の、手段と目的の関係を表しています。
部長や課長や部下という役割により、目的と手段の階層構造になっています。
目的と手段と役職の関係は、部長の手段が課長の目的、課長の手段が一般社員であるメンバーの目的です。
皆さんが一般社員であれば、上から降りてきたテーマは、社長や部長といった上位者の目的が細分化された一つの「手段」であると理解できます。
そのため、上長の意向を十分に汲み取らなければ、目的を決定できないケースが多く、時にはその上の上長との密なすり合わせも必要となるでしょう。
(手段と目的については、「手段の目的化」の原因と対策を具体例を含めて解説を参照下さい)
合意しにくい
決まった選択肢から選ぶのではなく、選択肢から考える必要があります。
この時点で、考える人の思考が異なり、選択肢が大きく変わります。
当然選択肢が違えば、そこからの議論となり、目的・課題の合意にたどり着きにくくなります。
目的・課題の適切な設定方法
ここまでで、目的・課題を明確にすることの重要性はご理解いただけたと思います。
では、次に問題となるのは、その目的と課題をどのように適切に設定するか、という点です。
設定のポイントは、「打ち手を打つとどんな状態になるか?」で引き出します。
※この記事では、1から目的や課題を考えるのではなく、何かのテーマがすでにある場合を想定しています。
例えば、「広告を行う」というテーマであれば、「広告を打つことでどのような状態になれるのか?」と考えます。
最終的な目標が「商品が売れる」ことであったとしても、一足飛びにそこへ到達することは難しいでしょう。
そこで、「何ができたら良いのか?」とさらに深掘りしていくと、「まずは知名度を上げる」「ターゲット層の購買行動に繋げる」といった具体的な目的が抽出されます。
これは、大きな目標達成のために、その手前にある「小目標を明確にする」例です。
もう一つの例として、「情報共有を行う」というテーマであれば、「情報共有することでどのような状態になれるのか?」を考えます。
情報共有の本来の目的は、「組織や個人の知識やノウハウを横展開し、組織全体の成果を底上げすること」となります。
これは、ある手段の「そもそもの目的」を明確にする例です。
このようにどのような状態になれるかを考えることで目的や課題にたどり着きやすくなります。
目的・課題を常に明確にする対策
テキスト化する癖をつける
目的・課題を明確にするための具体的な方法は、「テキスト化する癖をつける」こと、この一点に尽きます。
とにかく何かを考える際にまずは、目的・課題を考える癖をつけることです。
・テキスト化する際に一番上に目的・課題を入力する欄を作る
・会議では目的をみんなが見える状態はしておく
このような打ち手が考えられます。テキスト化し、見える位置に置くことで忘れないようにするのです。
また、テキスト化する過程で、漠然とした状態だった目的・課題が具体化され、より明確になるという効果もあります。
最初はテキスト化を怠ってしまうこともあるかもしれませんが、やり続けることで「やらないと気持ち悪い」と感じるようになる、人間の素晴らしい習慣化能力を信じて、ぜひ継続してみてください。
社内で目的・課題が不明瞭な場合の対策
自分自身で目的・課題を明確にできても、上司や先輩が不明瞭な指示や業務を依頼してくるケースもあるでしょう。
その際の対策として、まず指示をその場で一旦受け入れます。
そして、打ち手を考える前に、あなたなりに目的・課題を明確にし、まずはそれだけを上司に提示して、以下のように相談してみてください。
「ご指示いただいた件について、私なりに目的と課題をこのように考えてみましたが、この前提で打ち手を検討してもよろしいでしょうか?」
このように切り出すことで、議論が深まり、上司もあなたの意図を理解しやすくなるでしょう。
そして、実際の提案時にも、この目的・課題を提案書内に明記するようにしてください。
打ち手を考える前に必ず必要なたった一つのことの「まとめ」
目的・課題を明確にすることが必ず必要なたったひとつのことです。
目的・課題を設定するポイントは、「打ち手を打つとどんな状態になるか?」で引き出します。
また、目的・課題を常に明確にするためには、テキスト化する癖をつけることが大事です。
目的・課題を明確にできるだけで、仕事の効率アップ、正解率のアップが図れます。
常に意識しましょう。
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