20代の頃、尊敬する先輩たちが口をそろえて「歴史に学べ」と言っていたことが、当時の私には理解できませんでした。
年号や人名を覚えてもビジネスにどう役立つのか疑問だったからです。
しかし今、私ははっきりと「歴史に学ぶ」ことの意味を実感しています。
それは、歴史を事象としてではなく「人の行動パターンの宝庫」として捉える、歴史の本当の学び方を知ったからです。
この記事では、ビジネスにおける歴史の本当の学び方が、「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」であることとその理由をわかりやすく解説します。
この記事を読むと、人はなぜ歴史を学ぶのか?を知ることができます。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【自己成長】定義から効率的な学びの方法を紹介)
歴史「に」学ぶ理由とは?
人々の行動原理を具体例から学ぶ
歴史を学ぶ目的は、大きく分けて2つあります。
一つは「歴史上の出来事そのものを知ること」、もう一つは「歴史から人々の行動原理を学ぶこと」です。
前者は歴史「を」学ぶ、後者は歴史「に」学ぶと表現できます。
ビジネスで役立つのは後者、つまり歴史から人々の行動原理を学ぶことです。
単に仕事のノウハウやハウツーを身につけるだけでは、仕事ができるようにはなりません。
ビジネスは常に他者との協働が前提です。そのためには、相手の心に働きかけ、納得して行動してもらう力が不可欠です。
顧客に働きかける、同僚に働きかける、部下に働きかける、会社全体に働きかけるなど立場によって対象はさまざまです。
ただ、人に対するアプローチであることは同じです。
歴史はまさに、人間の行動によって紡がれてきたものです。だからこそ、人を理解するための豊富な事例が詰まっており、歴史「に」学ぶことで人の行動原理を知ることができるのです。
(「人に動いてもらう」については、たったひとつの「商売・ビジネスの本質」をわかりやすく解説を参照)
歴史「に」学ぶ方法
歴史上の人物ではない歴史の本で学ぶ
歴史「を」学ぶのではなく、歴史「に」学ぶのです。
歴史を学ぶのではないので、年号、名前、地名、出来事を丸暗記する必要はありません。
さまざまな出来事を踏まえて、人はどのように考え、どのように行動し、その背景は何か?を事例の宝庫である歴史「に」学ぶのです。
この学び方を一から独力で進めるのは大変ですが、幸いなことに、これらの視点から歴史を解説してくれる書籍が数多く出版されています。それらを積極的に読んで学びを深めましょう。
歴史を学ぶというと、歴史上の人物伝を選びがちですが、むしろ特定の人物に焦らず、多様な視点から歴史を読み解く書籍をおすすめします。
このような本を紹介している、歴史に学ぶ!何回も読んだ本おススメ21選を参照下さい。
歴史を学ぶ上での素朴な疑問
歴史を学ぶ上でよくある疑問について、以下に回答をまとめました。
人は進化しているので、過去のことは参考にならないのでは?
おおいに参考になります
なぜなら、人間は1,000年や2,000年といった短い期間では、精神的な進化をほとんどしないからです。これは進化心理学を学ぶとより深く理解できます(進化心理学については後ほど詳しく解説します)。
ということは、歴史として記録が残っているものは、私たちと同じ精神構造を持つ人の行動です。
時代や環境は異なりますが、人々が何を考え、どのように行動したかの根本にある思考や感情は、現代とほとんど変わっていません。
したがって、私たちは歴史から学ぶことができるのです。
日本の歴史だけを学べばいい?
日本史も世界史も両方学びましょう
人が持つ基本的な性質は、居住地によって変わるものではありません。
したがって、より多くの事例から学びを得るためには、日本史だけでなく世界史も学ぶことが重要です。
世界史を学ぶことで、日本史だけでは得られない多様な視点や、共通する人間の行動パターンを発見できるでしょう。
歴史「に」学ぶ上で注意すること
歴史から学ぶ上で、いくつか注意すべき点があります。ここではそのポイントを解説します。
歴史として伝えられていることは偏っている
歴史の記録は「勝者の視点」に偏りがちである
過去には様々な出来事がありましたが、それが現代に伝わっているのは、誰かが記録を残したからです。
人類の歴史は、同時に争いの歴史でもあります。当然ながら、戦いに勝利した側の記録は残りやすく、敗れた側の記録は失われがちです。
これは、勝者が自らの戦いを正当化しようとする傾向があることと、敗者は滅ぼされて記録を残す機会が失われることによるものです。
したがって、歴史として伝えられている内容には、勝者の論理が色濃く反映されている場合が多いことを理解しておく必要があります。
人の本質を知っておく
人間の心に共存する「野生の心」と「文明の心」を理解する
人間の心の進化については、進化心理学を学ぶことで深く理解できます。
前述したように、人間は1,000年や2,000年といった短期間では精神的に大きく進化しないことを知ることで、歴史上の出来事をより素直に、本質的に学ぶことができるでしょう。
また、私たちは長きにわたり狩猟採集生活を送ってきたため、「野生の心」が現代においても私たちの感情を大きく支配しています。
敵と戦うために怒りが必要であり、共同生活を営むためには愛情が必要でした。人間は小さな群れを作って生き延びてきたため、これらの感情は生存に不可欠であり、これらの感情を持っていた人々が生き残り、DNAを残してきました。
その結果、多くの人々が今もこれらの感情を本質的に持っています。
この「野生の心」を持った状態で、約1万年前に農耕が発達し定住生活が始まったことで、集団生活に適応するための「文明の心」が必要となりました。
「文明の心」とは、理性によって本能的な感情を抑え、集団の中で調和を保つ力のことです。例えば、争いを避け、他者に迷惑をかけず、協力し合うといった行動がこれに該当します。
「文明の心」はまだ、人間の本能として完全に根付いているわけではないと言われています。
しかし、いざ外敵に攻められると、家族や仲間を守るため、愛情という「野生の心」から戦う選択をするなど、人はしばしば二律背反する「野生の心」と「文明の心」を何とか両立させようと葛藤します。
このように、人間の内面で葛藤する心の状況を理解した上で歴史を考察することで、より深い洞察が得られるでしょう。
野生の心と文明の心については、進化心理学の基礎を学ぶことがおススメです。
進化心理学を学ぶ!何回も読んだ本おススメ7選を参照下さい。
世界史を学ぶ際に知っておきたいこと
地政学と文明の基礎知識が、歴史理解を深める鍵
地政学と文明の基礎知識を習得することは、歴史をより深く理解するために不可欠です。
ここでは、それぞれの知識が必要な理由を解説します。
地政学を知っておく理由
日本に住んでいると、地続きの国々が持つ独特な視点を理解しにくいことがあります。これは、過去に他国に併合されたり、あるいは他国を併合したりした経験からくる思考様式です。
島国である日本は、かつて海を容易に渡ることができなかったため、他国からの侵略が少なく、国内で独自の歴史を比較的安定して築いてきました。
しかし、世界のほとんどの国は他国と陸続きです。彼らは地理的条件が大きな制約要因となる中で、常に国を守るための戦略を練ってきました。
地政学を学ぶことで、このような地理的条件が各国の思考や行動にどのように影響を与えてきたのかを理解できます。
例えば、あなたが広大な屋敷に住んでおり、その周辺を、見知らぬ異なる民族の盗賊が常に屋敷を奪おうと狙っているとしたら、どう考えるでしょうか?
大陸国家で、国境を他国と接する国々は、まさにこのような環境に常に置かれてきたのです。
したがって、これらの戦略や思考を体系的に理論化した地政学を知っておくことは、歴史を深く理解するための極めて重要な要素となるでしょう。
地政学を学ぶおススメの本は、地政学を学ぶ!何回も読んだ本おススメ13選を参照下さい。
文明を知っておく理由
文明を深く理解するためには、宗教の基礎知識が不可欠です。
具体的には、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、儒教の4つの主要な宗教について知ることで、世界の大多数の人々の考え方の根幹を理解できます。
そもそも宗教を広める意味は諸説ありますが、その一つに「同じ考え方を持つ人々であれば、互いに理解し合える可能性が高まる」という考え方があります。
共通の信仰を持つことで仲間意識が生まれやすく、争いが減ると考えられていたようです。
陸続きで様々な民族と出会う可能性のある環境では、他者との共存は極めて重要です。このような背景から、宗教が人々の行動原理に深く根付いていったことが理解できます。
世界の国々と宗教は密接に結びついています。したがって、これら4つの主要な宗教の基本的な考え方を知っておくことは、歴史をより深く理解するために非常に役立つでしょう。
世界の宗教を簡単に学べるおススメの本は、文明を学ぶ!何回も読んだ本おススメ8選を参照下さい。
地政学と宗教の基礎を知っていると、歴史が深く理解できるだけでなく、今の世界のニュースがより理解しやすくなります。
歴史は「歴史に学ぶ」ことが大事の「まとめ」
人の行動原理が学べるから
ビジネスで成功するために、なぜ歴史「に」学ぶべきなのか? それは、人間の行動原理の具体的な事例を豊富に学べるからです。
ビジネスにおいては、他者の行動を理解し、その心を動かすことが不可欠です。
歴史は、まさしくそうした人間の行動の「宝庫」であり、そこから深く学ぶことで、現代のビジネスシーンで役立つ洞察と理解を得ることができるでしょう。
他にも自己成長の「定義と効率化」に関する以下の記事を書いています。参照下さい。
- 「成長とは?成長する方法とは?」
- 少しの工夫で「成功体験」を積む方法
- 「成長しているかどうか」の自己チェック4つの方法
- 徹底的に「真似る・パクる」
- 「知識を得るコツ」 深狭?広浅?
- お金・時間を使う際「投資かコストか」を意識する
- 「ブラック企業減」が、人の成長のブラック会社を増やす理由
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・【 概念の本質 】ビジネスの根幹・基礎用語の本質・人の本質
・【キャリアプラン】軸とタイミング・成長ロードマップ
・【 自己成長 】定義から効率的な学びの方法を紹介
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