良い会社を見分ける方法は多岐にわたりますが、どのような人事評価制度を運用しているかで、その本質が見えてきます。
なぜなら、人事評価制度は、会社の根幹となる制度なので、経営層の考え方が色濃く反映されているからです。
ただ、1社2社でしか働いていない若手社会人の皆さんにとっては、具体的に知っている人事評価制度は1つもしくは2つなので、良い人事評価制度と悪い人事評価制度の区別ができないでしょう。
この記事では、経験社数が少ない方でも、人事評価制度の良悪の判断ができる方法を解説します。
この判断ができると、今働く会社や転職しようとする会社が良い会社か?悪い会社か?を見分けるスキルがつきます。
この記事は、
・3回の転職経験
・中途採用の責任者の経験
・多数の書類選考・面接の経験
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい【会社の環境】良い会社の特徴)
人事評価制度でなぜ良い会社かどうかがわかるのか?
・人事評価制度は、会社組織の根幹をなす制度
・良い会社は、根幹の制度をきちんと設計実行している
上記2点の理由から、人事評価制度を掘り下げていくと、その会社の良し悪しが見えてくるのです。
人事評価制度の目的は、「従業員が組織に貢献すること」「従業員自身が成長すること」を同時に実現することです。
(詳しくは、「人事評価(人事考課)の目的」をわかりやすく解説を参照)
また、人が会社組織を作る理由は、ひとりでできないことができるからです。
そのために大事なことは、
・人が集まること
・共通の目的があること
・分業されていること
・仕組みやルールが整備されていること
この4つが大事になります。
(詳しくは、「会社組織の本質とは何?」をわかりやすく解説を参照)
この4つに人事評価制度がすべて絡んでいるのです。
上記から、人事評価制度は会社組織の根幹をなす制度だと言えます。
したがって、その根幹となる人事評価制度を、どこまできちんと設計し実行できているかを見ると、その会社の経営層が組織運営をどこまで深く考えているかがわかります。
経営層がきちんと組織運営を考えている会社は良い会社である場合が多く、逆にそうでない場合は、ほぼ間違いなく悪い会社と言えるでしょう。
人事評価制度の良し悪しを見極める3つのポイント
・個人の目標及び判断基準が明確か?
・プロセスの項目が入っているか?
・上長との人事評価関連の面談が年間4回以上あるか?
上記の3つで良い人事評価制度かどうかがわかります。
それぞれを解説します。
個人の目標及び判断基準が明確か?
個人の目標及び判断基準が明確かについて、
・明確かどうかが大事な理由
・明確かどうかの判断方法
上記2つに分けて解説します。
明確かどうかが大事な理由
迷いなく働くことができ、適切な評価を受けることができる
個人の目標及び判断基準が明確であれば、働く人は迷いなく働くことができ、その上適切に評価を受けることができます。
人が集まって活動するのが会社組織です。組織全体の活動を最大化するためには、適切な分業体制を築き、業務の抜け漏れ、重複が生じないようにすることが最も重要です。
したがって、各個人の役割分担が明確に設計され、個別の目標が設定され、かつその達成度が測定可能な判断基準が不可欠です。
逆にこれができないと、抜けもれダブりが生じるだけでなく、働く人が何をすればいいのかが不明確になります。
その結果、組織活動の最大化が図れなくなります。
しかし、これが実現できている会社はごく一部に過ぎません。私自身、出向を含め5社で働いてきましたが、このレベルで整備されていたのは1社のみでした。
また、あまり細分まで決めると、それしかやらなくなるし考えなくなるという反論がよく出ます。
ただ、絶対そんなことはありません。
経営者や役職者が、本来組織運営を考える=分業体制を構築する責任を逃れているだけですし、それしかやらないことにならない目標設定にすればいいだけだからです。
(詳しくは、会社の見分け方「責任の所在が明確」なら良い会社をわかりやすく解説を参照)
明確かどうかの判断方法
対象期間の数値目標と評価方法を設定する方式かどうか
人事評価の設定項目には、大きく2つの設定方法があります。
1.責任感、協調性、遂行能力などの業務態度や個人の能力を設定し、上長が5段階で評価する方法(個人のスキルや能力にフォーカス)
2.具体的な目標(予算達成、新規獲得社数、企画立案件数)を設定し、それぞれの項目で評価する方法(個人の役割進捗にフォーカス)
上記で2を採用していると、目標等が明確な会社と言えます。
ただ、長い歴史を持っている会社の多くは、圧倒的に1の方法を採用しています。
これは、個人が長期間にわたり一つの会社に勤務することを前提に、個人の業務態度や能力を重視する考え方に基づいています。
2の方法を採用している会社は、概して歴史が浅い傾向にあり、個人の役割に焦点を当て、設定期間内でどのような役割を果たせたかに着目しています。
当然ながら、1よりも2の方が役割が明確になり、さらに経営層や役職者は、個人への業務割り振りをより深く検討し、明確にする必要があります。
業務の割り振りには、戦略と戦術の明確化が不可欠です。
ゆえに、2は精緻な検討がなければ運用が難しいため、制度設計や運用を真剣に考えている会社であると言えるでしょう。
しかし、転職先の会社では、内定を得るまで人事評価制度について詳細な説明がないケースがほとんどです。
したがって、面接時には「人事評価シートの具体的な項目はどのような内容でしょうか?また、その項目は誰が決定するのでしょうか?」と、積極的に質問してみましょう。
その答えで1か2を判断できますし、そもそも人事評価制度があるのか?どのような設定方法か?までわかります。
もしこの質問で面接官が戸惑ったり、不快な表情を見せたりした場合は、その会社の人事評価制度が十分に整備されていない可能性が高いと判断できます。
面接官自身が制度に自信を持っているならば、むしろ喜んで説明したい内容だからです。
(詳しくは、転職面接の逆質問で「絶対聞きたい3つのこと」をわかりやすく解説を参照)
プロセスの項目が入っているか?
プロセスの項目が入っているがどうかについて、
・プロセスが大事な理由
・プロセス項目の具体例
に分けて解説します。
プロセスが大事な理由
長距離走のため、その場その場の結果ではなく、継続して結果が出続けることが大事だから
社会人は結果が大事です。これに異論はありません。
ただし、会社は、短距離走ではなく長距離走です。短期的に結果が出ても、結果が出続けなければ会社は存続できません。
継続的に結果を出すためには、結果の出る正しいプロセスをおこない続けることが必要になります。
したがって、プロセスの項目が人事評価に入っていることが大事になるのです。
では、誰がプロセス目標を設計するのか?
この部分で考え方が大きく分かれます。経営者や役職者が設計するのか?役職を持たない人に考えさせるのか?
もちろん前者です。経営者や役職者は、役職を持たない人の活動を通して、組織全体の結果を出すことが仕事です。
この部分が会社組織に基本的な役割の考え方ですが、ちゃんとした仕組みになっていない会社が大多数です。
この部分についても、私の働いた5社では、プロセスを大事にしているのは1社だけです。
なぜこのようなことになるのか?
上記のことを理解していないこともそうですが、プロセスを設計し、それを部下に実践してもらうことが非常に難しいからです。
プロセスを設計するためには、暗黙知を形式知化しないといけません。また、形式知について、感情を持っている部下に実行してもらう必要があるからです。
結果として、経営層や役職者は、自らの職責を放棄し、役職を持たない従業員の結果のみで評価しようとする傾向があります。
だからこそ結果指標もありながら、プロセス指標もちゃんと設計し指標化することが大事だし、それができている会社は良い会社なのです。
プロセスの具体例
具体的な例で言うと、例えば営業担当で結果指標が個人に課せられた売上目標達成率だとします。
その売上目標を達成するためには、訪問件数、提案回数、新規アプローチ数、スキルアップのための勉強会開催など、具体的な行動が重要になります。
このような結果を出すためのプロセスが評価項目に入っているかで判断できます。
ちなみに、役職が上がれば結果指標の比率が上がり、役職が下がれば、プロセス指標が多くなります。
上長との人事評価面談が年間4回以上あるか?
人事評価には、対象期間(多くは半年)につき2回の面談が必要
1回の評価につき、評価対象期間を振り返る面談と、査定結果のフィードバック、および次の目標をすり合わせる面談の計2回が不可欠です。
したがって、年に2回の評価を行う場合であれば、年間で最低4回の個人面談が必要となります。
人事評価において最も重要なのは、目標指標の納得性と結果判断の納得性の2点です。
ボーナス等の給与に関わることは当然ですが、個人の成長にも関わるからです。
当然ながら、人は納得しないと動けませんし、納得しないと不満が残り続けます。
したがって、目標指標の納得感の醸成で1回、目標指標の結果のすり合わせで1回の面談が必要になるのです。
そして人事評価をちゃんと運用している会社は、最低上記の個人面談設定をおこなっています。
(詳しくは、人事評価のフィードバック面談に時間をかける会社は良い会社を参照)
良い会社の条件 ちゃんとした人事評価制度がある会社の「まとめ」
・人事評価制度は、会社組織の根幹をなす制度
・良い会社は、根幹の制度をちゃんと設計実行している
人事評価制度を見たら良い会社とわかるのは、この2点が理由です。
・個人の目標及び判断基準が明確かどうか?
・プロセスの項目が入っているか?
・上長との人事評価面談が年間4回以上あるか?
人事評価制度の良し悪しを見極めるポイントはこの3つです。
上記の3つを見れば良い人事評価制度かどうかがわかります。もし、今働いている会社の人事評価制度がこれらにあてはまらない場合は、転職を検討するのも一つの選択肢です。
他にも良い会社を見分ける方法を書いています。参照下さい。
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