人により定義が異なる「戦略と戦術の違い」をわかりやすく解説

①課題解決の考え方
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戦略及び戦術の言葉の定義は無数に存在します。要は、人により違う意味の言葉として使っているのです。

このような、人による解釈の違う言葉では、手段の目的化が起きています。

そもそも戦略・戦術という言葉を定義することが目的なのでしょうか?

戦略・戦術を立案する目的は、目指したい姿を実現するためです。

この記事では、この目的を念頭に置きながら、戦略・戦術の意味と違いをわかりやすく解説します。

この記事は、風土の違う5社での経験、数百名のマネジメント経験、100回を超える若手向け勉強会の講師をした経験を持つよしつが書いています。

この記事を読むと、目指す姿と戦略と戦術の関係性がわかります。

また、他の人が戦略・戦術という言葉を使う際に、この人は、この意味で使っているな、とわかることで、コミュニケーションが円滑にできるようになります。

(あわせて読みたい 課題解決の考え方と課題設定・戦略立案に使えるフレームワークまとめ

戦略と戦術の違いとは?

  • 戦略とは「〇〇する」と決めること
  • 戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」 と決めること

これが戦略と戦術の違いです。共に目指したい姿を実現することが目的で、戦略の中に戦術があります。

戦略と戦術の会社の活動における位置付けは?

会社の活動を表す一枚の図

上図は、会社の活動を一枚の図にしたものです。「戦略と戦術」は「課題解決」の中の「組織活動」の中にあります。

(上図の詳しい説明は、「1枚の図」と「一言で要約+詳細解説」でビジネス基礎知識をわかりやすく解説を参照)

戦略と戦術の違いを「詳細解説」

戦略と戦術の関係

戦略と戦術の位置づけ、役職による戦略の意味合いの違い、言葉の定義で手段の目的化が起きていること、難しい言葉を難しく説明する人が多いことについて、それぞれわかりやすく解説します。

戦略と戦術位置づけ

目指したい姿・ありたい姿があります。その姿と現状のギャップが問題で、その問題の中で解くべき問題が課題です。

そして、その課題を解決して目指す姿への行き方が戦略で、戦略の具体的な行動が戦術です。

すべての関係性は、この三角形ですべて表現できます。

(この三角形の詳細は「目指す姿・現状・問題・課題・戦略」をたった1枚の絵で表すを参照)

戦略・戦術の目的は、目指す姿やありたい姿を実現することです。これ以外の戦略と戦術の目的はありません。

なのに、戦略と戦術の定義が沢山あるのは、個々による、戦略と戦術の言葉の意味を自分で決めているからです。

例えば、目指す姿への行き方のこの表現部分はこ、戦略ではなく戦術だとかです。

どうでもいい議論で目的から外れた内容です。

だから、戦略・戦術の定義にとらわれず、上記の概念で戦略と戦術を理解しておくことが大事になります。

上記概念がわかっていれば、他の人が使う戦略・戦術の定義が私とはここが違うとわかるからです。

社長の戦略と営業担当の戦略

「役職」と「戦略・戦術の関係」は上図の通りです。

このように戦略と戦術は、人により同じことを言っていても戦略だったり戦術だったりします

社長の戦略があり、それを実現する具体的な行動が戦術です。

部長は、社長の戦術をおこなうことが戦略となり、自部署でどのような具体的な行動をおこなうかが戦術となります。

課長は、部長の戦術をおこなうことが戦略となり、自部署でどのような行動をおこなうかが戦術となります。

だから、戦略は〇〇する 戦術は〇〇するために△△(具体的な行動)する、と理解しておく必要があるのです。

部長や課長のように役割で任される領域が変わりますので、戦略と戦術も当然変わります。

言葉の定義に手段の目的化がおきている

人により、言葉の定義が違うものは、ほぼ間違いなく、手段の目的化が起きています

(手段の目的化の詳細は、「手段の目的化」の意味と具体例と原因をわかりやすく解説を参照)

言葉の定義がどうであれ、戦略と戦術は、目指したい姿を実現することが目的なので、精緻な言葉の定義は必要ありません。

逆に決めようとするとそれにとらわれて、結局手段の目的化にはまってしまいます。

自分の戦略と戦術の意味を明確にしておきながら、他の人の使う戦略と戦術の意味をアジャストしながら解釈しておけばいいのです。

「それは戦略ではなく、戦術だ」と言われたら、心の中で舌を出しながら「そうですね」と言っておけばいいのです。

難しいことを難しく言っている

難しいことをシンプルにすればいいのに、難しいことを難しく表現する人が多いから困ります

では、なぜそのような表現となるのか?

1点目は、自分が沢山の知識を持っていることをアピールするため。

2点目は、ビジネスのコアの部分なので、ネットや本の記載内容について、間違った表記ができず、うだうだと長く書かざるを得ないからです。

私たち現場の人間は、実務家です。実務家は、目指す姿に行くために課題解決する戦略を考えて、戦術を設定して実行します。

そこに戦略の定義と戦術の定義は入り込みません。だから、戦略・戦術だけでなく、難しいことを難しく表現する記事等はほんの参考程度する程度で問題ないです。

戦略とは?

戦略とは、「〇〇する」ことを決めるです。

では、そもそもなぜ戦略を立てないといけないのでしょうか?

なぜ戦略が必要か?

一番の理由は、取捨選択が必要になるからです。お金や人や資産という使えるリソースが限られており、競合もいる中、目指す姿に行かないといくためには、やりたいことすべてができないからです。

仮にお金が沢山あれば、エンジニア含めた人を沢山雇い、すごい設備を購入し、すごいサービスを考えて、広告宣伝を大量に投下すればいいのです。

でも、これらすべてができないから、限られたリソース内で、どうすれば最大の効果を発揮できるか?を考える必要があるのです。

まさしく取捨選択の判断が必要となります。

戦略を立てるとは、やらないことを決めること

戦略は、「〇〇する」ことを決めると言いました。この言葉から〇〇する以外はしないと決めることと、言い換えることができます

リソースが限られている中で、何に集中すればいいのか?逆にやらないことを本当にやらなくていいのか?

とても悩みますが、この戦略の絞りが緩いと、結局使えるリソースが分散して、目指す姿にたどり着けない確率が上がってしまいます。

だから、戦略を考えることは本当に難しいのです。

戦術とは?

戦術とは、「〇〇する(戦略)ために△△(具体的な行動)する」と決めることです。

戦略があって戦術があります。戦略の〇〇するでは、具体的な行動まで落とし込めません。

例えば、「どこにも負けない商品を作る」は戦略ですが、そのために何をするか?がないと行動できません。

例えば、商品開発の人員を社内異動で今の倍にするとか、外部の人を〇名採用するとか、他社の特許を買い取るとかまで落とし込めば、行動できます。これが戦術となります。

これを決めということは、上記以外はしないと決めることにもなります。

戦略と戦術の違いは?

戦略とは「〇〇する」と決めること

戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」 と決めること

このように区分けすると大枠では、違いを明確にできますので、これが違いと定義しましょう。

違いを定義するのはこの程度でOKです。これ以上明確に分けようとすると先ほど言ったように言葉遊びとなり、手段の目的化が起きてしまいます。

繰り返しますが、目指したい姿を実現することが目的なのです。

戦略と戦術に近い言葉

私がよく使うのは、方針・施策です。方針が戦略、施策が戦術です。

今まで5社で働いていますが、戦略と戦術よりは、方針と施策の方が言葉の定義がそれぞれの人の間で合いやすく、ミスコミュニケーションが起きにくく感じます。

各社に合わせて使い分けてみてください。

戦略と戦術の違いの具体例

キーエンスの戦略と戦術

キーエンスさんという会社をご存知でしょうか?平均年収が日本トップクラスの会社として有名です。

キーエンスさんは、営業が強い会社として有名です。

ですが、戦略は営業力を高めることではありません。

キーエンスさんの戦略は、

今まで存在しない商品を開発して粗利80%以上で販売することです。

この戦略を具体的に実現するために、

・高い年収を払い、優秀は人材を採用する

・採用した優秀な人材で今まで存在しない商品を開発する

・営業時間の損失を最少にする

この3つが戦術です。

ちなみに商品は業界初・世界初で7割だそうです。

営業に課せられていることは1分日報と、前日の夜に必ず翌日の商談ロープレをおこなっています。もちろんアポはぎっちり入っていることが前提です。

(キーエンスさんの詳細は、「キーエンス高利益率の理由」をわかりやすく解説を参照)

オービックの戦略と戦術

なんと27期連続で増益(その期間ほとんど増収)を実現している、システム構築をおこなっている会社です。

システム構築をしている会社は、顧客に要望に応じたフルオーダーメイドのシステムを構築するのが普通です。

ですが、なんとシステム構築のパッケージ化に成功し、粗利が76%もある会社です。

オービックさんの戦略は、システム構築のパッケージ化をおこなうことです。

この戦略を具体的に実現するために、

・中小企業をターゲットする(大手はフルオーダーで受けざるをえないため)

・業界を絞り徹底的に共通部分を見つけて基本パッケージシステムを開発する

・営業担当はすべて直販とし、現場のニーズが直接つかめるようにする

この3つが戦術です。

(オービックさんの詳細は、実はすごい会社「オービックの高利益率の理由」をわかりやすく解説を参照)

エムスリーの戦略と戦術

世間一般にはそれほど知られていないですが、医療業界では知らない人がいない高成長企業です。

2000年の創業から21年間で、なんと売上約1,700億円の企業となりました。たった21年です。

全国の医師が集まるサイトを作り、製薬会社がその医師に情報提供するために、1社平均年間5億円を払っています。

エムスリーさんの戦略は、全国の大多数の医師が集まる場所を作り、その場に情報提供するために、製薬会社から多額の報酬を得ることです。

この戦略を具体的に実現するために、

・医療ニュースや文献検索、科別情報といった情報を無料提供

・情報を読むだけでポイント付与(ギフトカードと交換可能)

・上記サービスを受けるために会員登録

・医師が集まった状態で製薬会社に営業

この4つが戦術です。

今では、医師の92%が会員登録しています。更に病院に直接営業に行きにくい環境もあって更に追い風となっています。

(エムスリーの詳細は、「エムスリー株式会社 高成長の理由」をわかりやすく解説を参照)

他にも有名な会社の解説をしています。

詳しくは、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。

戦略と戦術の違いの「まとめ」

戦略とは「〇〇する」と決めること

戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」 と決めること

このことが戦略と戦術の違いです。

共に目指したい姿を実現することが目的で、戦略の中に戦術があります。

戦略と戦術という言葉にとらわれずに考え方でアバウトに押さえておきましょう。

(合わせて読みたい、人により定義が違う「問題と課題の違い」をわかりやすく解説

ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。

本を読む習慣がない方は、プロのナレーターが朗読した本をアプリ等で聴けるサービスがおススメです。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

オーディオブック2強「Amazon Audible」「audiobook.jp」を徹底比較
本を朗読してくれるサービスがあります。「オーディオブック」という総称で呼ばれており、「Amazon Audible(オーディブル)」と「audiobook.jp」の2社がこのマーケットの2強となっています。この記事では、この2社のサービスの違いについて詳細に紹介します。

オーディオブック2強「Amazon Audible」「audiobook.jp」を徹底比較はこちら

おススメ本を紹介しています。以下のページを参照下さい。

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