人により定義が異なる「戦略と戦術の違い」をわかりやすく解説

4.ビジネススキルを支える基礎知識
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戦略及び戦術の言葉の定義は無数に存在します。ビジネス用語では、人による解釈の違う言葉が沢山あるからです。

このような言葉の場合、相手の定義を変えてもらうことは難易度が高いので、まずは自分の定義をしっかり持つことが大事です。

そうすれば、他の人がどのような定義で戦略と戦術という言葉を使っているかがわかるため、コミュニケーションが円滑になります。

一歩引くと、そもそも戦略と戦術という言葉を定義することが目的なのでしょうか?

戦略・戦術を立案する目的は、目指したい姿を実現するためです。

この記事では、この目的を念頭に置きながら、戦略・戦術それぞれの定義と違いをわかりやすく解説します。

この記事は、
・営業担当・営業課長・営業部長・営業本部長の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験

これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。

この記事を読むと、目指す姿と戦略と戦術の関係性がわかります。

また、他の人が戦略・戦術という言葉を使う際に、この人は、この意味で使っているとわかることで、コミュニケーションが円滑になります。

(あわせて読みたい、ビジネススキル向上のための基礎知識をわかりやすく解説

戦略と戦術の違いとは?

  • 戦略とは「〇〇する」
  • 戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」

これが戦略と戦術の違いです。共に目指したい姿を実現することが目的で、戦略の中に戦術があります。

戦略と戦術の会社の活動における位置付けは?

会社の活動を表す一枚の図

上図は、会社の活動を一枚の図にしたものです。「戦略と戦術」は「課題解決」の中の「組織活動」の中にあります。

(上図の詳しい説明は、「1枚の図」と「一言で要約+詳細解説」でビジネス基礎知識をわかりやすく解説を参照)

戦略と戦術の違いを「詳細解説」

まずは、戦略・戦術とセットで出てくることが多い、問題・課題も含めて全体像を説明します。

目指す姿・問題・課題・戦略・戦術の関係とは?

下図は、目指したい姿と現状・問題・課題・戦略・戦術を一枚の絵で表したものです。

  1. 「目指したい姿・ありたい姿」がスタート
  2. その姿と「現状」の差を見て「問題」を洗い出し、その中から「課題」を設定します。
  3. 課題解決をおこなうために何をするか(=戦略)を決めます。そして具体的に行うこと(=戦術)を決めて実行することで、目指す姿に行くことができます。

問題・課題・戦略・戦術の関係性は、この1枚の絵である三角形ですべて表現できます

(この三角形の詳細は「目指す姿・現状・問題・課題・戦略」をたった1枚の絵で表すを参照)

繰り返しますが、戦略・戦術を設定する目的は、目指す姿やありたい姿を実現することです。

戦略と戦術の関係

  • 役職による戦略の意味合いの違い
  • 言葉の定義で手段の目的化が起きている
  • 難しい言葉を難しく説明する人が多い

この3つに分けて解説します。

社長の戦略と営業担当の戦略

「役職」と「戦略・戦術の関係」は上図の通りです。

このように戦略と戦術は、人により同じことを言っていても戦略だったり戦術だったりします

社長の戦略があり、それを実現する具体的な行動が戦術です。

部長は、社長の戦術をおこなうことが戦略で、自部署でどのような具体的な行動をおこなうかが戦術となります。

課長は、部長の戦術をおこなうことが戦略で、自部署でどのような行動をおこなうかが戦術となります。

したがって、戦略は〇〇する 戦術は〇〇するために△△(具体的な行動)する、と理解しておく必要があるのです。

社長や部長や課長のように役割で任される領域が変わりますので、戦略と戦術も当然変わります。

言葉の定義に手段の目的化がおきている

人により、言葉の定義が違うものは、ほぼ間違いなく、手段の目的化が起きています

(手段の目的化の詳細は、「手段の目的化」の意味と具体例と原因をわかりやすく解説を参照)

言葉の定義がどうであれ、戦略と戦術は、目指したい姿を実現することが目的なので、精緻な言葉の定義は必要ありません。

逆に決めようとすると、結局手段の目的化にはまってしまいます。

自分の戦略と戦術の意味を明確にしておきながら、他の人の使う戦略と戦術の意味を理解しておけばいいのです。

「それは戦略ではなく、戦術だ」と叱られたら、心の中で舌を出しながら「そうですね」と言っておけばいいのです。

難しいことを難しく言っている

難しいことをシンプルにすればいいのに、難しいことを難しく表現する人が多くいます。

では、なぜそのような表現となるのか?

  • ビジネスのコアである戦略・戦術で商売している人が多くいるため
  • 間違って解釈されないように、説明が長くなるため

この2点です。

前者は、コンサルタントと名前のつく職種の方です。難しいことを簡単にしてしまうと、自分の商売をある意味否定してしまうことになるからです。

後者は、世間一般で共通する定義がないため、他の人と違う意味であることを説明する結果長くなるからです。

会社で働く私たちは実務家です。実務家は、目指す姿に行くために課題解決する戦略を考えて、戦術を設定して実行します。

そこに戦略の定義と戦術の定義はどうでもよく、シンプルに考えることが大事になります。

戦略とは?

戦略とは、「〇〇する」ことを決めるです。

では、そもそもなぜ戦略を立てないといけないのでしょうか?

なぜ戦略が必要か?

一番の理由は、取捨選択が必要になるからです。お金や人や資産という使えるリソースが限られているからです。

仮にお金が沢山あれば、人を沢山雇い、大量に設備投資をし、広告宣伝を大量に投下すればいいのです。

ただ、これらすべてができないから、限られたリソース内で、どうすれば最大の効果を発揮できるか?を考える必要があります。

したがって、取捨選択の判断が必要となります。

戦略を立てるとは、やらないことを決めること

戦略は、「〇〇する」ことを決めることです。この言葉は、〇〇する以外はしないと決めることと、言い換えることができます

リソースが限られている中で、何に集中するのか?他のことは本当にやらなくていいのか?

とても悩みますが、この戦略の絞りが緩いと、結局使えるリソースが分散して、目指す姿にたどり着けない確率が上がります。

したがって、戦略を考えることは本当に難しいのです。

戦術とは?

戦術とは、「〇〇する(戦略)ために△△(具体的な行動)する」と決めることです。

戦略があって戦術があります。戦略の〇〇するでは、具体的な行動まで落とし込めません。

例えば、「どこにも負けない営業支援サービスを作る」は戦略ですが、そのために何をするか?がないと行動できません。

例えば、商品開発の人員を社内異動で今の倍にするとか、外部の人を〇名採用するとか、他社の特許を買い取るとかまで落とし込めば、行動できます。これが戦術となります。

これを決めということは、上記以外はしないと決めることにもなります。

戦略と戦術の違いは?

戦略とは「〇〇する」、戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」です。

このように区分けすると、違いを明確になります。違いを定義するのはこの程度でOKです。これ以上明確に分けようとすると先ほど言ったように言葉遊びとなり、手段の目的化が起きてしまいます。

繰り返しますが、目指したい姿を実現することが目的なのです。

戦略と戦術に近い言葉

私がよく使うのは、方針・施策です。方針が戦略、施策が戦術です。

今まで5社で働いていますが、戦略と戦術よりは、方針と施策の方が言葉の方が、コミュニケーションロスが少なく感じます。

各社に合わせて使い分けてみてください。

戦略と戦術の違いの具体例

キーエンスの戦略と戦術

キーエンスさんという会社をご存知でしょうか?平均年収が日本トップクラスの会社として有名です。

キーエンスさんは、営業が強い会社として有名です。

ですが、戦略は営業力を高めることではありません。

キーエンスさんの戦略は、

今まで存在しない商品を開発して粗利80%以上で販売することです。

この戦略を具体的に実現するために、

・高い年収を払い、優秀は人材を採用する

・採用した優秀な人材で今まで存在しない商品を開発する

・営業時間の損失を最少にする

この3つが戦術です。

ちなみに商品は業界初・世界初で7割だそうです。

営業に課せられていることは1分日報と、前日の夜に必ず翌日の商談ロープレをおこなっています。もちろんアポはぎっちり入っていることが前提です。

(キーエンスさんの詳細は、「キーエンス高利益率の理由」をわかりやすく解説を参照)

オービックの戦略と戦術

なんと27期連続で増益(その期間ほとんど増収)を実現している、システム構築をおこなっている会社です。

システム構築をしている会社は、顧客に要望に応じたフルオーダーメイドのシステムを構築するのが普通です。

ですが、オービックさんはシステム構築のパッケージ化に成功し、粗利が76%もある会社です。

オービックさんの戦略は、システム構築のパッケージ化をおこなうことです。

この戦略を具体的に実現するために、

・中小企業をターゲットする(大手はフルオーダーで受けざるをえないため)

・業界を絞り徹底的に共通部分を見つけて基本パッケージシステムを開発する

・営業担当はすべて直販とし、現場のニーズが直接つかめるようにする

この3つが戦術です。

(オービックさんの詳細は、実はすごい会社「オービックの高利益率の理由」をわかりやすく解説を参照)

エムスリーの戦略と戦術

世間一般にはそれほど知られていないですが、医療業界では知らない人がいない高成長企業です。

2000年の創業から21年間で、なんと売上約1,700億円の企業となりました。たった21年です。

全国の医師が集まるサイトを作り、製薬会社がその医師に情報提供するために、1社平均年間5億円を払っています。

エムスリーさんの戦略は、全国の大多数の医師が集まる場所を作り、その場に情報提供するために、製薬会社から多額の報酬を得ることです。

この戦略を具体的に実現するために、

・医療ニュースや文献検索、科別情報といった情報を無料提供

・情報を読むだけでポイント付与(ギフトカードと交換可能)

・上記サービスを受けるために会員登録

・医師が集まった状態で製薬会社に営業

この4つが戦術です。

今では、医師の92%が会員登録しています。更に病院に直接営業に行きにくい環境もあって更に追い風となっています。

(エムスリーの詳細は、「エムスリー株式会社 高成長の理由」をわかりやすく解説を参照)

他にも有名な会社の解説をしています。

詳しくは、【有名企業分析】18社の直近決算と成長のポイントをわかりやすく解説を参照ください。

戦略と戦術の違いの「まとめ」

戦略とは「〇〇する」と決めること

戦術とは「〇〇するために△△(具体的な行動)する」 と決めること

このことが戦略と戦術の違いです。

共に目指したい姿を実現することが目的で、戦略の中に戦術があります。

戦略と戦術という言葉にとらわれずに考え方でアバウトに押さえておきましょう。

(合わせて読みたい、人により定義が違う「問題と課題の違い」をわかりやすく解説

ビジネスの知識を増やすには、本を読むことがおススメです。

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