まずはこれだけ知ろう!「自治体営業基礎の基礎」をわかりやすく解説

5.個人力(ビジネス知識)

企業への営業と、自治体(市町村)への営業はかなり違います。

そもそもお金を使う場合の考え方・判断の基準・決定までのプロセスが違います。いい商品だから普通に営業すれば売れるだろうと考えると、とても苦労します。

この記事では、自治体へ営業を検討している方向けに、企業への営業との違いと営業のポイントを解説します。

この内容を知っているかどうかで、そもそも自治体市場に参入するかどうか?参入すると決めた場合には、何から行うか?が理解できる内容になっています。

この記事は、全国の「全」自治体と取引してる会社で、事業の責任者をしていたよしつが、基礎の基礎をわかりやすく解説します。

(あせて読みたい 知っておきたいビジネススキル向上のための基礎知識をまとめてわかりやすく解説

自治体営業基礎の基礎「結論」

最初に結論です。

自治体への営業に参入するかどうかの判断基準

  1. 営業開始後受注まで1年から2年かかる
  2. すぐに受注する方法もあるが、完全相見積超低価格
  3. 継続案件でも相見積

上記内容を受け入れることができるかどうか?が参入するかどうかのポイントとなります。

長い道のり、かつ継続案件でも受注が保証されない。

ただし、大きなメリットもあります。入金は保証されますし、案件はフルオープンで、莫大なマーケットに対して簡単に参入できます。

参入すると決めた場合まずやること

実績を積み重ねること

これだけです。にわとりが先か卵が先かになりますが、自治体職員が発注先を選択する大きな判断基準は、同じ事業の実績が沢山あるかどうか?です。

一般の会社の方は、上記を覚悟して参入することをお勧めします。

逆に言えば、実績が沢山あれば、他社との優位性を作ることが出来る場合があります。

超有名企業で、上場企業の大半で導入されている優良なサービスを持つ会社は例外です。

ただし、民間と比べると明らかにリードタイムは長くなります。

自治体営業基礎の基礎「自治体とは?」

自治体マーケットの特徴について

まずは、自治体マーケットの特徴を紹介します。

全自治体で基本同じニーズが発生するのが、自治体マーケットの特徴です。

民間のように各社で事業内容が違うのではなく、同一業務が全自治体で行なわれます

予算を持っている自治体数は1718自治体(市町村)+東京の特別区23区=1741がマーケットとなります。

国や県からの仕事+自治体独自のサービスを各住民に直接提供することが自治体の仕事なので、どの自治体もほぼ同じ内容の仕事をおこなっています

例えば住民票を取りたい、マイナンバーカードを発行してほしいなど、居住する自治体に行きますよね。

例えば、ワクチン接種を行うとなれば、全1741自治体すべてで、ワクチン接種を実施します。

自治体が行う各事業は、限られた職員では対応できずに、ほぼ外注となります。

ここにニーズが発生し、ビジネスチャンスとなります。

それに加えて、職員の方は、23年に一度異動となり、専門知識がないことも外部委託の理由となります。

ちなみに頻繁な異動は、色々な経験を積むことだけでなく、癒着の防止の意味合いもあるので、引継ぎは資料の引き渡しのみがほとんどです。

3月半ばに内示が出て、4月1日から新しい部署に完全異動します。余談ですが、3月31日の夕方に自治体に行くと、そこらじゅうで異動の挨拶をしている光景に出会えます。

ちなみに世間一般で「事業」というと大きな仕事をイメージしますが、自治体で使う「事業」とは「案件」という意味合いです。

例えば1つのポスターの印刷発注も「事業」ですし、単に広告掲載するだけでも「事業」となります。

事業は、単年度だけでなく、複数年度で実施することも多数あります。但し基本は単年度契約となります。

自治体営業基礎の基礎「予算の仕組み」

予算の仕組みについて説明していきます。

予算の大前提

まずは、最初に知っておいてほしいことです。

予算(事業ごとに予算化されたもの)がなければ、絶対にお金は使えないです。

このことが自治体営業の大前提となります。

民間企業のように、売上が想定より上がった場合など、使う予定でないものを年度内に購入することがありますが、自治体では絶対ありません。

なぜなら、事業(=案件)ごとに年度の最初に当初予算として、何にいくら使うかが完全に確定してしまっているからです。

確かに補正予算という、期中に追加できる予算申請はありますが、よほど緊急案件でない限り議会を通りません。

ちなみに期は4月~3月で統一されております。

予算決定の流れ

  • 毎年5月~9月 翌年度に行いたい事業の下準備と計画策定
  • 毎年8月~10月 翌年度に行いたい事業計画を各課から、取りまとめ部署へ提案
  • 毎年10月~2月 来年度の予算決定に向けた、取りまとめ部署と各課との調整の上、自治体全体としての最終案の策定
  • 毎年3月 3月の議会で翌年度の予算案の承認
  • 毎年4月~3月 決まった事業を実施

このような流れを毎年繰り返します。予算については、大前提1年ごとに作成となります。

複数年にまたがる事業については、一部認められる場合もありますが、基本は1年ごとの予算設定となっています。

上記流れなので、新しい事業は予算を使う前年度の8月までには計画し、見積を取り、事業計画を提出しないといけません。

自治体営業基礎の基礎「営業活動」

営業活動の基本

営業活動の基本は、予算が確定した事業を実施する際に受注することです。

いくら予算申請をする際に自治体職員の手助けをしても、翌年度の予算を使う際には、入札やプロポーザル等で競合他社に勝たないと発注できません。

入札等には、以下の4つがあります。

  1. 一般競争入札・・・誰でも入札でき、その中で一番安い金額の業者が落札
  2. 指名競争入札・・・指名された業者のみが参加でき、その中で一番安い金額を入れた業者が落札
  3. 随意契約・・・1社に声をかけ、その会社に発注(大半が事業総予算数万円以下のみ)
  4. プロポーザル(企画競争)・・・価格だけでなく、提案内容含めてトータルで判断

ほとんどが、一般競争入札か指名競争入札です。

受注方法は2つ

受注するためには2つの方法があります。

提供したいサービスを新事業として立ち上げてもらい受注する方法と、予算が確定している事業を調べて、入札で受注する方法です。

新事業として立ち上げてもらう方法

提供したいサービスが事業化されていない場合は、新事業として、予算化されることが大前提となります。

自治体職員の方に、前年の8月までに事業化提案を庁内にしてもらい、承認される必要があります。

営業のポイントは、まずは新事業内容がいかに住民にメリットがあるかを理解いただくこと。

提案の方向で話が進んだら、事業内容をいかに自社に有利な事業にできるか?=事業の仕様書をいかに自社に有利な内容にするか?です。

最終事業内容は、仕様書という形で各業者に伝えられます。

この仕様書に自社しかできないことや、少数しかできないことを入れてもらうと、翌年度の入札等で有利になります。

当然、自治体職員は、1つの会社に有利になるようなことは一切しないので、住民のためになる提案と自社の強みをどう組み合わせて提案できるか?が重要となります。

これらは通常、仕様書提案や仕様書営業と言います。

予算確定している事業に入札して受注する方法

こちらの営業のポイントは、事業内容の把握です。自治体は、公平性の観点から事業の募集内容を告知しないといけません。

でもこれを集めるのがとっても大変です。事業は1年間で何千何万もあります。

その事業が、各自治体のHPで小さく告知していたり、庁内で告知していたりしており、各自治体で周知方法が異なるからです。

この課題を解決するには、民間の入札情報サービスNJS等の会員のサービスを受けることです。

| 入札情報速報サービスNJSS
NJSSの入札情報サービスは、日本国内の調達情報・公共入札情報・落札情報を集約。官公庁から都庁県庁・役所等の自治体関連まで、国内最大級の入札情報をご提供。一般競争入札や企画競争入札の案件情報から、入札結果や落札情報も充実。

各自治体の事業入札の募集がオープンになったものだけでなく、過去の事業の仕様書や落札価格を手に入れることができます。

年間70万円前後のサービスで、決して安くないですが、本格的に自治体営業するのであれば必須となります。

集めてみればわかりますが、入札情報を集めることは本当に大変な仕事だからです。

ちなみに東京23区・市町村は以下の共通サイトで入札情報を提供しています。但し、全案件ではないのでご注意ください。

東京電子自治体共同運営

営業活動のポイント

実績作り

まずは事業者登録を各自治体で行います。詳細は各自治体に直接聞けば教えてくれます。

それが終わったらひたすら実績作りです。実績がない会社のサービスを使って、いきなり事業化とはならないです。

大手の超優良サービスや、中小でも明確に他社と差別化できており、かつ非常に役に立つサービスは直接担当部署へ営業してください。

実績を積むには、一般競争入札において安値で受注することです。

営業に行ったらわかりますが、自治体の担当者は、その自治体や他の自治体での同事業の実績があるかどうかを必ず聞いてきます

実績があるといった場合、職員の方は安どの表情を見せますが、ないと言った場合はほぼ脈なしの対応に変わります。

この落差は経験するとよくわかります。自治体の職員は失敗できないので、経験がないところに仕事を出すリスクを負いたくないからです。

だから、一般競争入札は完全オープンですが、指名競争入札の場合は、経験値が高い業者にしぼって声がけします。

要は実績がないと声がかからないということです。

プロポーザルも、他自治体で同事業を行った経験があるか?が、選定の大きなポイントとなります。

見積依頼を受ける関係作り

自治体の職員は以下の場合に見積が必要です。

  • 新規事業を立ち上げる際の事業化申請時(毎年8月~10月)
  • 継続事業の来年度の見積(毎年8月から10月)
  • 事業実施年度に業者選定をおこなうための見積提出

とにかく上記3つがないと仕事が進みません。3はもちろん1、2についても相場観を反映させるために、複数業者から見積を取らないといけません。

だからまずは見積依頼を受ける関係性を作る(=覚えてもらう)ことが最重要となります。

また、見積依頼が来た際は上記1から3のどれかを把握する必要があります。1、2はそれほど勝負価格で出さなくても大丈夫ですが、3は勝負価格で出さないと受注できません。

このように実績ができて、見積依頼を受ける関係性ができて初めてスタートラインに立てます

そこから、更に実績を積み上げることにより、経験値及び事業理解を把握することで、関係性が強化されていきます。

自治体営業は、ここまで来てやっと競合と対等に戦う状態になります。だからロングタームの仕事なのです。

自治体営業基礎の基礎「まとめ」

自治体への営業に参入するかどうかの判断基準は

  1. 営業開始後受注まで1年から2年かかる
  2. すぐに受注する方法もあるが、完全相見積超低価格
  3. 継続案件でも相見積

上記内容を受け入れることができるかどうかが参入するかどうかのポイントです。

継続受注(年度またぎ)の場合も相見積です。このシビアな状況と、確実な入金+膨大なマーケットのメリットデメリットを踏まえて、営業を開始してください。

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