高額な初任給を出す会社のことがニュースになっています。
また、あまり報道はされないですが、転職時に提示年収も上がっているようです。
働く側には喜ばしい状況ですが、高年収を提示する企業がすべて「良い会社」とは限らないのが現実です。
「給料の高さ」だけで入社を決めた結果、過酷な環境や組織の歪みに耐えかねて早期退職に至るケースも少なくありません。
この記事では、提示年収の裏側にある「企業の真実」を見抜き、納得感のあるキャリア選択をするためのノウハウを、私の実体験に基づき解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つ「よしつ」が実体験から得たことを元に書いています。
あわせて読みたい転職の知識(転職判断から入社まで)を解説
良い会社かどうかの判断方法
・入社後給料がちゃんと上がっていく
・良い人事評価制度が構築されている
・給料を高くする目的が採用のためではない
この3つが判断方法です。
高い給料は魅力です。会社選びの大きな条件です。
ただ、給料が高いことで必ず良い会社かと言われるとそうとも言えません。
そのためにも、この3つの観点を確認することで、良い会社であるかを見抜ける確率が上がります。
まずは、給料の原資はどこから来るのかを紹介し、3つそれぞれをわかりやすく解説します。
そもそも給料の原資は?
原資は利益
会社にとって、従業員の給料は「コスト(費用)」です。
コストが増えてもなお利益を残せる「収益力」がなければ、継続的な昇給は望めません。
つまり、今この瞬間に儲かっているだけでなく、構造的に「儲かり続ける仕組み」がある会社でなければ、入社後の給料は頭打ちになります。
「給料の原資は利益である」という、シンプルかつ残酷な事実に目を向けることから始めましょう。
入社後給料が上がりやすい企業の特徴
・昇進しやすい(上が詰まっていない若い会社)
・シェアトップか成長業界
・粗利率(売上総利益率)が高い
・複数の売れている商品や事業を持っている
この4つが給料が上がりやすい企業の特徴です。
入社時点で高い給料をもらったとしても、昇給しなければ、時間がたつと平均的もしくは平均以下の給料となります。
だからこそ、入社時の給料額も大事ですが、それ以上に入社後給料が上げるかどうかが重要です。
上記ポイントをそれぞれ解説します。
昇進しやすい(上が詰まっていない若い会社)
一番給料が上がるのは昇進すること
給料の総額を増やす上で、最も大きな要因は「昇進」です。 基本給だけでなく、ボーナス額も大幅に上がります。
したがって、昇進しやすい会社が給料が上がりやすい会社になります。
昇進しやすい会社とは、上が詰まっていない会社か、業績が伸び組織が大きくなっていくことでポジションが増える会社です。
昇進したくないと言う人も最近多いですが、給料が上がるのは、昇進することが多くの場合条件となります。
シェアトップか成長業界
会社が成長し儲かるから
会社が儲かれば、給料が増えます。シェアトップであれば競合よりも良い部分が多いので当然儲かります。
また、斜陽産業ではなく成長業界に属していれば、会社の努力だけでなく業界全体の成長が追い風となり、儲けにつながりやすくなります。
粗利率(売上総利益率)が高い
儲かりやすく給料・ボーナスの原資となる利益が得やすい
粗利率が高ければ、儲かりやすく給料が増えやすくなります。
例えば、売上100万円に対して粗利が90万円の会社と、粗利が10万円の会社では、どちらが最終的な利益を出しやすいでしょうか?当然、粗利率が高い会社です。
会社が従業員の給料を増やすためには、まず利益を上げることが不可欠です。そのため、利益を出しやすい会社ほど給料アップの可能性も高まります。
複数の売れている商品や事業を持っている
リスクが分散されている
ひとつの商品に支えられている会社と、複数の売れ筋商品を持っている会社はどちらが将来的に安定するでしょうか?
もちろん後者です。
単一のヒット商品に依存している企業は、強力な競合の出現や市場環境の変化に極めて脆弱です。
昨今ではAIの急速な進化により、これまでの主力サービスが一夜にして代替され、苦境に立たされる例も珍しくありません。
複数の事業柱を持つ企業は、単にリスクを分散しているだけでなく、新しい収益源を生み出す「多角化のノウハウ」が蓄積されており、将来の昇給可能性も高いと言えます。
(詳しくは、給料が上がる会社・上がらない会社の見分け方を解説を参照)
良い人事評価制度が構築されている
組織運営の本質
人事評価制度でなぜ良い会社かどうかがわかるのか?
人事評価制度は、会社組織の根幹をなす制度であり、良い会社は、根幹の制度をきちんと設計実行しているからです。
設計実行ができているということは、組織運営で大事な分業がちゃんと設計できていて、各個人のやるべきことが明確です。
また、各個人を評価する仕組みがあり、それを実行するマネジャーの経験値があがり、レベルが平均的に高くなります。
これらが揃っていないと人事評価制度がうまく運用できません。
良い人事評価制度かどうかを見るポイントは以下の3つです。
・個人の目標及び判断基準が明確か?
・プロセスの項目が入っているか?
・上長との人事評価関連の面談が年間4回以上あるか?
それぞれを解説します。
個人の目標及び判断基準が明確か?
人事評価の設定項目には、大きく2つの設定方法があります。
1.責任感、協調性、遂行能力などの業務態度や個人の能力を設定し、上長が5段階で評価する方法(個人のスキルや能力にフォーカス)
2.具体的な目標(予算達成、新規獲得社数、企画立案件数)を設定し、それぞれの項目で評価する方法(個人の役割進捗にフォーカス)
上記で2を採用していると、目標等が明確な会社と言えます。
ただ、長い歴史を持っている会社の多くは、圧倒的に1の方法を採用しています。
1は評価者の主観で評価されますので、議論の余地があまりなく、上司の『好き嫌い』というブラックボックスになりやすいことと、各個人の行動すべきことが不明確になりがちです。
プロセスの項目が入っているか?
社会人は結果が大事です。これに異論はありません。
ただし、会社は、短距離走ではなく長距離走です。短期的に結果が出ても、結果が出続けなければ会社は存続できません。
継続的に結果を出すためには、結果の出る正しいプロセスをおこない続けることが必要になります。
したがって、プロセスの項目が人事評価に入っていることが大事になるのです。
実のところ、プロセスを評価するには上司に高い能力と時間的余裕が求められます。
「結果がすべて」と言い切る会社は、一見実力主義で格好良く見えますが、管理職が「数字をなぞるだけ」の楽なマネジメントに逃げている側面もあります。
正しいプロセスを評価しない組織では、部下の成長機会が失われ、中長期的なキャリア形成にマイナスの影響を及ぼします。
上長との人事評価関連の面談が年間4回以上あるか?
1回の評価につき、評価対象期間を振り返る面談と、査定結果のフィードバックおよび次の目標をすり合わせる面談の計2回が不可欠です。
したがって、年に2回の評価を行う場合であれば、年間で最低4回の個人面談が必要となります。
人事評価において最も重要なのは、目標指標の納得性と結果判断の納得性の2点です。
ボーナス等の給与に関わることは当然ですが、個人の成長にも関わるからです。
それをおこなうには年4回以上の面談が必要です。
(詳しくは、良い会社の見分け方 優れた人事評価制度を持つ会社を参照)
給料を上げる目的が採用ではない
ゆがみがたくさん出る
儲かったお金を、適正な評価をおこない分配することが給料の基本的な考え方です。
ということは、採用のために給料額を上げることは本筋ではありません。
ただ、採用できない対策として、給料額を上げることは各企業でおこなわれています。
ただし、これをきちんと運用するととてもコストがかかります。従業員全員の給料を増額する必要があるからです。
そこまでできない会社は、採用される人だけを優遇することをおこなう場合があります。
結果、採用のために提示額だけを吊り上げる会社は、『既存社員の不満』という時限爆弾を抱えています。
入社してみたら、先輩よりも自分の給料が高く、職場の雰囲気が最悪だったというケースも珍しくありません。
採用のために場当たり的な特例が認められる会社は、給与体系が形骸化しており、「誰かの主観」で年収が決まるリスクがあります。
入社時に「特別対応」で色をつけてもらったとしても、それは公平な評価制度がないことの裏返しです。
入社後、あなたがどれだけ成果を出しても、次は「その時の気分」や「別の採用事情」によって、あなたの昇給が後回しにされる可能性があるのです。
良い会社の調べ方
①昇進しやすい(上が詰まっていない若い会社)
②シェアトップか成長業界
③粗利率(売上総利益率)が高い
④複数の売れている商品や事業を持っている
⑤良い人事評価制度が構築されている
すでに紹介した上記5つの調べ方を紹介します。
①昇進しやすい(上が詰まっていない若い会社)
上場企業は、決算時に公表している「有価証券報告書」を見るとわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の有価証券報告書をご覧ください。
「従業員の状況」という欄が前半にあり、そこに平均年齢が記載されています。
あくまで平均年齢なので、ばらつきがある可能性はありますが、41歳を超えていると上が詰まっている可能性が高くなります。
22歳から60歳までの職業人生のちょうど中心が41歳だからです。
非上場企業の場合は、ホームページの「沿革」を確認しましょう。
設立から40年以上が経過しており、かつ急成長の形跡がない老舗企業であれば、ポストが固定化し「上が詰まっている」可能性が高いと予測できます。
②シェアトップか成長業界
・売上が伸びている会社
・粗利益率が高い
まずは上記2つに当てはまるかどうかを調べます。
売上が伸びるのは、競合より優位であるか成長業界である可能性が高いからです。
また、粗利率が高いのは、価格を下げなくても売れる強い商品を持っているか、競合がいないからだからです。
売上が伸びている会社かどうかの調べ方
上場企業は、決算時に公表している「有価証券報告書」を見るとわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の「有価証券報告書」をご覧ください。
最初の方に「提出会社の経営指標等」という部分で直近5年間の売上の一覧を見ることができます。
非上場会社の場合は、就活サイト(リクナビ・マイナビ等)で当該会社の詳細ページを確認しましょう。
売上などの詳細が掲載されている場合があります。
また、官報決算データベースで社名を検索すると各種情報が出てくる場合があります。
もし掲載がなければ、対象会社のホームページ、転職サイトや転職エージェントで採用募集しているかどうかを確認しましょう。
あくまで予測となりますが、採用しているということは、売上が伸びている可能性が高くなります。
③粗利率(売上総利益率)が高い
上場企業は、決算時に公表している「決算短信」を見るとわかります。
各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の決算短信の真ん中位に、「損益計算書」が掲載されています。
その中に売上額と売上総利益額が掲載されています。売上総利益額/売上額×100で算出できます。
業界により大きく異なるので、同業他社と比較することをおすすめします。
非上場企業では、同業で同じような商品を扱っている上場企業の上記を調べてみましょう。
または、同じような商品を扱っている企業が多いかを調べてみるのも一つの方法です。
「〇〇(会社名)」と同じ業界で同じような商品を扱っている会社を教えて」とAIに聞くのも一手です。
④複数の売れている商品や事業を持っている
上場企業・非上場企業とも各社のホームページを参照してみて下さい。
どんな商品やサービスをどれ位扱っているかが分かります。
また、上場企業なら各社のホームページのIRライブラリー(IR資料室)の直近通期決算の決算短信をご覧ください。
後ろの方に「セグメント情報」という部分があり、事業ごとの業績が掲載されていますので参考にしてみて下さい。
⑤良い人事評価制度が構築されている
「人事評価制度はどのような制度ですか?」と聞く。
私も採用の面接をしていますが、今まで一度も聞かれたことはありません。
ただ、聞いてはいけないことでは絶対ありません。
逆にこの質問をした時にアバウトにしか答えてくれない場合や、面接官の表情に変化があった場合は注意が必要です。
面接官も人事評価を受けているので、きちんとした制度なら普通に答えてくれるはずです。そうでない場合は何か問題があると分かります。
追加で聞くとすれば、「人事評価の面談は上司と年間どれ位おおよそどれ位の時間ありますか」と聞いてみましょう。
4回以上で30分以上なら合格です。それ以下では、結果だけを伝える面談と想定できます。
まとめ
年収という「数字」の裏にある「構造」を見抜こう
提示年収に惑わされないノウハウをお伝えしました。
「給料の原資は利益である」という原則を忘れないでおきましょう。
また、「儲かる仕組み(4つの特徴)」が会社にあるかを確認することも大事です。
その上で「正当に配る仕組み(人事評価制度)」が機能しているかを調べましょう。
提示年収が高いことは、決して悪いことではありません。
しかし、その高い給料が「会社の成長による還元」なのか、それとも「無理な採用のための歪み」なのかを見極める力こそが、あなたのキャリアを守る盾となります。
もし、面接で「人事評価制度の詳細」を質問して、曖昧な答えしか返ってこないなら、そこにはあなたが成長できる環境はないかもしれません。
逆に、この記事で紹介したリサーチを行い、納得感を持って入社した会社なら、あなたは目先の年収以上の「稼ぐ力」を身につけていけるはずです。
「入り口」の数字に目を奪われず、その奥にある「組織の誠実さ」をぜひ見極めてください。
あなたのこれからの挑戦が、納得感のある素晴らしいものになることを応援しています。
他に転職前の心構えと知識として以下の記事を書いています。参照下さい。


