社会人になると、多くの場合、会社は導入研修などで様々なことを教えてくれます。
しかし、その内容は、主にその会社で業務を遂行するために必要なビジネスマナー、基礎知識、業界知識といった範囲に留まることが一般的です。つまり、私たちはまず入社した会社の枠組みの中で教育を受けることになります。
しかし、社会人として真に豊かに働く上で大切なことは、必ずしも所属する会社の枠組みの中だけで見つかるとは限りません。
なぜなら、一つの会社に生涯勤め続けるとは限らず、また何よりも、会社という組織の論理だけでなく、「私たち一人ひとりがどうすれば幸せに生きられるか」という視点が最も重要だからです。
そこでこの記事では、特定の会社という枠組みに囚われず、より広い視野から、私たち社会人にとって本当に大切なことは何かを、5つのテーマに分けて分かりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つ私、よしつが、自身の体験に基づいて執筆しました。この記事が、社会人として本当に大切なことを見つめ直す一助となれば幸いです。
(あわせて読みたい、知っておきたい 考え方・意識・スキル)
最初に認識しておきたいこと
社会人になったら、まず最初に認識しておきたいことがあります。
・会社は本当に大事なことは教えてくれない
・自分の身は自分で守るという意識を持つ
・入社した会社が全てではないと知る
これらが、会社が積極的に教えてくれるとは限らない3つの重要な認識です。なぜなら、場合によっては自社の都合の悪い事実を認めることになるからです。
それぞれを解説します。
会社は本当に大事なことは教えてくれない
会社と個人では、重視する点が異なる
会社側の視点と、私たち個人の視点では、重視するポイントが異なります。
会社側から見れば、会社の売上や利益が最優先であり、そのために私たちに何をしてもらうかという視点になります。
一方、私たち個人の視点では、自分たちが幸せになるために、会社という組織をどのように活用するかという考えになります。
このように、会社と個人では根本的に望むことが異なる場合があります。
例えば、会社が社員に転職の方法を教えることはありません。また、社員が自身のキャリアプランを持っていたとしても、必ずしもそのプラン通りの部署で働けるとは限りません。
会社と個人では立場が異なるため、優先的に知っておくべき情報も変わってきます。
その結果、会社からの情報だけに頼っていると、私たちにとって本当に大切なことを見過ごしてしまう可能性があるのです。
自分の身は自分で守るという意識を持つ
会社は最終的に私たちの人生を守ってくれるわけではない
会社はあくまで利益を追求する組織です。
人生の多くの時間を費やす場所ではありますが、会社が最も重視するのは、社員の労働による成果です。
個人の人生には、上司も深く関わることはありませんし、制度上も限界があります。そのため、最終的には自分自身で自分の身を守るしかないのです。
それが、会社という組織の一つの側面でもあるのです。
入社した会社が全てではないと知る
会社によって、文化や習慣は大きく異なる
どの会社にも独自の文化や習慣があり、私たちは数百万社と言われる企業の中から、たった1社に入社するに過ぎません。
私自身も5社で働く中で、時間の使い方、教育方針、得られる経験など、会社によって大きく異なることを実感してきました。
細かい例を挙げれば、挨拶の仕方、メールの書き方、敬称の使い方一つをとっても、会社ごとに違いがあります。
もちろん、良い会社で貴重な経験を積むことができれば理想的ですが、必ずしもそうとは限りません。
したがって、まずは、今働いている会社が絶対的な基準ではないということを常に意識しておく必要があります。
当たり前のことのように思えるかもしれませんが、日々の業務に追われる中で忘れがちになるため、改めてここで強調しておきます。
これだけはやり始めておきたいこと
社会人になったら、ぜひ自分のためにすぐに始めてほしいことがあります。
・転職の準備を始めておく
・知識を得る
・文章が書けるようになる
これら3つのことについて、それぞれ解説します。
転職の準備を始めておく
短期・中期的なキャリアプラン(仮)を設定する
会社に入社した時点から、将来の明確なビジョンや「こうなりたい」という理想像を持っている人は、ほんの一握りです。
それが普通です。
しかし、できる限り明確な目標を持って過ごしてほしいと私は考えています。
矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、最初から長期的な目標を定める必要はありません。まずは、2年程度の短い期間でのゴール設定から始めてみてください。
社会人になると、学生時代と比べて時間の流れが早く感じられ、日々の業務に追われ、自由な時間が少なくなり、あっという間に時間が経過してしまうからです。
そこで、最初に取り組んでほしいのが、職務経歴書を書いてみることです。
職務経歴書は通常、過去の経歴を記述するものですが、ここでは敢えて、これからの2年間の『未来の職務経歴書』を作成してみてください。
未来なので、なんでもありです。どんな2年間を過ごせば、転職に困らないかという基準で書いてみるのです。
そうすることで、短期・中期的な目標を設定する手助けになります。
目標を置くことができれば、あとは頑張って実行してみましょう。
2年後に、作成した『未来の職務経歴書』に描いた通りの経験が積めていれば理想的です。
ただ、うまくいかなくても、計画を立てて実行して、振り返ってというPDCAを回していることが強みに変わります。
2年間の行動を面接で話してみてください。とてもアピールになります。
私は、中途採用の面接官を定期的にしていますが、このような話をしてくれればとても良い印象を受けます。
(詳しくは、転職検討前に「履歴書・職務経歴書」を作る大きなメリットを解説を参照)
知識を得る
何をするにしても知識が必要
知識がないと能力はつきません。
能力の上がる順番は、「わからないからできない」→「わかっているけどできない」→「できる」という順番です。
まずは知識を得ましょう。知識を得ることで、第一段階をクリアできるからです。
(詳しくは、知識と能力とスキルの関係を参照)
注意点が一点あります。
会社で普通にすごしていると、会社で学ぶことができる知識は増えます。
ただ、上記で説明したとおり、会社都合となりますので、本当に知っておきたい知識が抜けもれることがあります。
それを補うには、先人たちの知恵を学ぶことです。
一番良い方法は、ビジネス書を読むことです。
ビジネス経験豊富な先人たちが、数千円程度で手に入る書籍の中に、貴重なノウハウを惜しみなく記してくれています。これほど効率的に知識を吸収できる手段はなかなかありません。
(詳しくは、「徹底的に真似る」「徹底的にパクる」が大事な理由を参照)
また、動画で学ぶ方法もありますが、1点注意が必要です。
同じ時間を投資した場合どちらが得るものが多いか?です。
例えば、1時間本を読むのと、1時間動画を視聴するのとでは、どちらがより集中力を要し、結果として『疲れた』と感じやすいでしょうか。
多くの方は『本を読む方が疲れる』と答えるかもしれません。
それは、読書という行為が、動画視聴に比べてより能動的に情報を処理し、思考を巡らせるため、脳が活発に働くからだと考えられます。
脳は、このように能動的に使われることで活性化し、深く情報を処理しようとしますが、その分エネルギーも消費するのです。
本をオススメするのは、どうせ同じ時間を使うなら、得ることが多い方が良いと思うからです。
(詳しくは、ビジネス書を読む3つのメリットを参照)
(ビジネス書を読めばいいかは、社会人の学ぶ範囲!「ビジネス学びの4領域13テーマ」を解説を参照)
文章が書けるようになる
知識を能力に変える準備ができる
文章を書くことで、物事を深く考えることができる機会が増えることと、得た知識で文章を書くことで、知識を能力に変える準備ができます。
ただ、文章を書くのは苦手という人も多いと思います。
人は、話をすることは自然とできるようになります。ただし、文字を書くことは学習しないとできません。
学校では、文章を「書く」という教育をあまり受けずに育ちます。
小中学校、高校、大学を通じて、2,000文字を超えるようなまとまった文章を主体的に書く機会は、どれほどあったでしょうか?
文章を読み、意味を把握する教育は受けるのですが、自分の伝えたいことをある程度長い文章にして伝える機会はごく少数です。
そのため、社会人になったばかりの段階で、自信を持って『文章が得意だ』と言える人は、それほど多くないのではないでしょうか。
だからこそ文章を書く経験をたくさん得ることで、文章が書けるようになり、大きな強みを手に入れることができます。
(詳しくは、文章を書く2つのメリットと文章力を上げる2つの方法を参照)
練習でスキルが上がるだけでなく、自分なりの意見を持てるようになるとても良い方法です。
成長の重要ポイント
社会人として成長するために、とても大事なことがあります。
・プロセスを大事にする
・最初の3年間で仕事のスピードが決まる
・将来楽したいなら今楽をしない
この3つです。それぞれ解説します。
プロセスを大事にする
再現性が高まる
結果を出し「続ける」にはプロセスが大事です。
会社だけでなく、例えばプロスポーツ選手でも結果が大事と言います。
ただ、これは言葉が足りません。
結果を出し「続ける」ことが大事です、という言葉が本来の言葉です。
たった1回結果を出しても意味がありません。
特に社会人は、短距離走ではなく長距離走です。
たまたまラッキーで得た結果ではなく、結果が出やすいプロセスを知っておく必要があります。
プロセスを得るには、PDCAを回すことです。計画を立てることで、最終的な結果との差異がわかります。
この差異がわかることが、学びとなり、プロセスを学ぶことにつながるのです。
最初の3年間で仕事のスピードが決まる
後から変えにくい仕事の進め方が定着する
社会人最初の3年間の経験が、その後の社会人としての働きに大きく影響します。
早いスピードで働く環境かそうでないかにより、そのスピード感で仕事をするリズムが出来上がるからです。
5社で働いてわかったのですが、それぞれの会社のスピード感があり、見事に働く人がそのスピードで仕事をしています。
当然速いスピードで働く環境に身を置くことが、とても大事です。
もし、比較的ゆったりとしたペースの仕事に慣れてしまうと、スピード感を持って対応することが難しくなることがあります。じっくり考えることが習慣化されるためです。
逆に早さに慣れておくと、それが癖となり強みとなります。
(3年間の具体的な過ごし方は、社会人最初の3年間で踏んでほしい「成長のステップ」とは?を参照)
本当に楽がしたいなら今楽をしない
楽ができるまでは一定量の努力が必要
誰でも楽はしたいです。でも楽がしたいなら、20代はたくさん働きましょう。
人生の後半で楽をするには、この努力がないと絶対できません。
人は、経験からしか学べません。当然楽して過ごすのと、しんどい思いをして過ごすのでは、経験量に大きな差が出ます。
だからこそ、将来楽がしたいなら、今からの数年間は頑張りましょう。
力を緩めることはいつでもできますが、力を入れるのは簡単ではありません。
常に意識しておきたいこと
仕事をしていく上で、常に意識をしてほしいことがあります。
・方法には目的課題がある
・本質を見る
・メディアの情報には意図がある
・投資とコストの違い
上記4つです。それぞれ解説します。
方法には目的課題がある
目的や課題が忘れられてしまう
多くの組織で、具体的な『打ち手(手段)』についての議論は活発に行われがちですが、その前提となるべき『目的』や『解決すべき課題』が曖昧なまま進められてしまうケースが見受けられます。
なぜなら、目的や課題を明確に設定するには深い思考が求められ、脳は多くのエネルギーを消費します。一方で、具体的な打ち手を考える作業は、それに比べると少ないエネルギーで済む場合があるからです。
これにより、目的や課題があやふやなまま、打ち手の議論がおこなわれることが多くなるのです。
だからこそ、目的や課題を常に意識するだけで、無駄な議論を避けることができますし、一目置かれる存在にもなれます。
本質を見る
枝葉の問題は、あくまで表面的な事象に過ぎません
枝葉は枝葉です。枝葉に対応しても、対処にしかなりません。
社会人になるととても多くの問題を解決する必要があります。
その際に、表面的な問題への対応に終始していると、多くの時間を費やしても、根本的な解決には至らず、十分な効果が得られないことがあります。
だからこそ、枝葉の奥にある本質を見極める必要があり、本質を見抜き、そこにアプローチすることで、より効果的に、時には一挙に問題を解決できる道が開けます。
また、本質をつかんでおくことで、枝葉の議論に巻き込まれず、大局を見て考えることができます。
(本質の一例は、会社の本質を書いた、本質を一言で表現!「会社とは何?」をわかりやすく解説を参照)
メディアの情報には意図があること
メディア情報が偏る(かたよる)構造や理由を理解しておく
メディアから得る情報には発信者の意図が必ずあります。得た情報をそのまま受け止めることは、とても危険です。
メディアの収益の多くは広告です。メディアは、多くの人を集めることで、広告掲載数を増やし、収益を上げる構造になっています。
ということは、多くの人を集めやすい派手なもの、大衆受けするものを中心に発信しがちです。
これにより、情報の内容が偏ります。
情報を正しく得るためには、以下6つを意識しましょう。
・メディア情報がかたよる理由を知っておく
・ミクロとマクロを分けて受けとめる
・目的か手段かを把握する
・事実・数字でおさえる
・分子・分母を意識する
・分野ごとの第一人者をおさえておく
(詳細は、メディアから正しい情報を得る6つの方法を参照)
投資とコストの違い
お金を使うには2つの意味がある
お金を使う場合「投資」と「コスト」に分かれますが、投資にお金を使いましょう。
投資は将来のリターンを得るためのもので、コストは、その場限りのものです。
一般的に『投資』と聞くと、株式や不動産などを思い浮かべるかもしれませんが、この記事では主に、自分自身の成長や未来の可能性を広げるためにお金を使うことを『自己投資』として捉えています。
私たちが生きていく以上、食費や住宅などなくてはならないので、お金がかかります。これはコストです。
たとえば海外旅行したり、英語を学んだり、本を読んだりすることは投資です。
将来の自分にお金を使って、知識をたくさん得ることで将来の役に立つ可能性が高まるからです。
ただ、生きていく上でコストがかかるので、意識して投資額を確保しないと、投資にお金を使うことができなくなります。
だから分けて考える必要があります。
信用してよい人ダメな人の見分け方
社会に出るとさまざまな人と仕事をします。その際に信用してよいがどうかを見分けるコツがあります。
・学び続けている人しか信じない
・行動している人かどうか
・プロセスを見てくれているか?
上記3つです。それぞれ解説します。
学び続けている人しか信じないこと
多様な視点を取り入れるために、学び続ける人の意見を重視したい
5社でたくさんの人と働いてわかったことですが、人は自分の枠組みや視野でしか物事を考えることができません。
枠組みや視野を変化させることができるのは、学び続けることです。
そのため、学びを止めてしまうと、どうしても視野が固定化され、多角的な意見が出にくくなる傾向があります。
逆に学び続けている人の意見は深いし、いろんな示唆があります。
だからこそ、学び続けている人の意見を大事にし、そうでない人の意見は聞き流しましょう。
一つの見分けるポイントとして、例えば本を定期的に読むなど、何らかの形で学び続けているかどうかを確認してみると良いでしょう。
行動している人かどうか
言うは易く、行うは難し
言うだけの人は本当にたくさんいます。そして言うだけはとても簡単です。
なぜなら、現実的な実行可能性を度外視して、『こうあるべきだ』という理想論や一般論を語るだけであれば、比較的容易だからです。
ただ、そのべき論や理想論を現実にすることが、私たちの本来おこなうことです。
1つの理想論より、1つの行動が大事です。
「べき論」「理想論」をよく語る人ほど行動が伴わない傾向があります。注意しましょう。
ビジネスの世界では、言葉だけでなく行動が伴う人物こそが信頼を得ます。言葉だけで行動が伴わない人との関わり方には慎重になった方が良いでしょう。
プロセスを見てくれているか?
仲間しかプロセスまでは見てくれない
プロセスを見るのはとても大変です。
結果である「現象」は、目に見えるのでわかりやすいですが、「原因」であるプロセスは意識して見に行かないと分かりません。
誰も他人の行動を詳細には見ていません。他人の行動プロセスまで詳細に気を配ることは、多くの人にとって時間的にも精神的にも余裕がないことが多いからです。
逆に、その手間がかかることをしてくれる人は、本当の仲間と言えます。
社会人として本当に大事なことの「まとめ」
・そもそも認識しておきたいこと
・これだけはやり始めておきたいこと
・成長のために意識しておきたいこと
・常に意識しておきたいこと
・信用してよい人ダメな人の見分け方
今回挙げた5つの項目について、まずは『知る』ことから始めてみてください。現時点で全てを実践できるかどうかは重要ではありません。
「わからないからできない」ではなく、「わかっているけどできない」状態であることが大事です。
だからこそたくさんの知識をまずはインプットしましょう。
何をインプットしたらいいか迷ったら、よしつブログの記事一覧をご覧ください。
これらを知るだけで、多くの大事な知識を得ることができます。
よしつブログ記事一覧はこちら
他にも「知っておきたい、考え方・意識・スキル」について以下の記事を書いています。参照下さい。
- 成長とは?成長する方法とは?
- 成長しているかどうかの自己チェック4つの方法
- 少しの工夫で「成功体験」を積む方法
- 最初の3年間で経験してほしい「たった1つのこと」
- 才能と努力の関係とは?
- 「管理職になりたくない」と思った時に知っておいてほしいこと
- 打ち手を考える前に必ず必要なたった一つのこと
- 自分で自分をほめる方法
- 自分の「お金・時間」を使う際「投資かコストか」を意識する
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