無謬性(むびゅうせい)が蔓延(まんえん)している会社や組織への転職は、避けるべきだと言えるでしょう。
問題のある組織にはさまざまな悪しき風潮が見られますが、中でも無謬性は非常に厄介で根深い問題です。
この言葉を初めて耳にする方もいるかもしれませんが、その現象を体験したことのある方は少なくないはずです。
この記事では、この「無謬性(むびゅうせい)」とは何か、そしてどのような傾向の組織に生じやすいのかを詳しく解説します。
組織に潜む大きな課題である無謬性について理解を深めることは、現在の職場からの退職を判断する際の参考になるだけでなく、転職先を選ぶ上でも大いに役立つでしょう。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
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無謬性(むびゅうせい)とは?
思考や判断に誤りがないこと
「人間は間違いを犯すもの」という前提は誰もが理解していますが、集団である組織においては、時にこの「無謬性」という症状が現れることがあります。
この症状が組織に現れると、過去の決定や行動すべてが正しいものと見なされるようになり、組織をより良い方向へ変化させる上で不可欠なPDCAサイクルが機能しなくなります。
過去の行動を「正しい」と前提するがゆえに、振り返りや改善の必要性を感じなくなるためです。その結果、組織は停滞し、健全な成長が阻害されてしまいます。
・なぜ組織に無謬性が生じるのか?
・無謬性が蔓延している組織の見分け方
に分けて詳細に解説します。
なぜ組織に無謬性が生じるのか?
「間違ってはいけない」という意識が過剰に働くため
人間は誰もが間違いを犯し、その間違いから多くを学び成長します。しかし、多くの組織では「間違いは許されない」という文化が深く根付いています。
このような組織では、当初は間違いを避けるよう努めますが、次第に間違いを隠蔽したり、認めようとしない行動が横行するようになります。
こうした行動がエスカレートすると、最終的には「これまでの自分たちの行動に一切間違いはなかった」という無謬性の考え方が組織全体に浸透してしまうのです。
・評価が減点主義
・社内政治で物事が決まる
組織に上記2点が当てはまれば、無謬性が発症しやすくなります。
それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。
評価が減点主義
失敗を悪とみなし、認めようとしないため
減点主義の評価制度では、失敗が直接的に個人の評価を下げるため、昇進にも影響が及びます。このため、組織全体に失敗を素直に認めない風土が生まれやすくなります。
結果として、自分の失敗を隠したり、他者のせいにしたりするなど、自身の評価を守るための行動を取る人が現れます。
さらに悪循環なことに、このような行動を取る人物が出世するケースも少なくなく、失敗を認めない文化が組織に深く定着してしまうことがあります。
その上、挑戦すればするほど失敗の可能性は高まるため、「失敗したくない」という心理から挑戦を避ける風土も出来上がってしまいます。これらは共に、組織の健全な成長を阻害し、腐敗を招く行動と言えるでしょう。
社内政治で物事が決まる組織
「正しいかどうか」ではなく、「誰が言ったか」が重要になるため
社内政治が横行する組織では、経営層や上司が個人の評価を能力ではなく、自分の派閥や仲間であるか否かで判断し、出世を決定するようになります。
その結果、上司に取り入ったり、他者を蹴落としたりすることで、自己の優位な立場を確立しようとする人物が必ず現れます。
また、組織内で顕在化している問題点は、しばしばその問題に過去に関与していた、現在の経営者や上司の「未解決の課題」として認識されがちです。このため、問題点を指摘することは、問題を解決できなかった現経営陣や上司への批判と受け取られてしまいます。
したがって、過去に存在した問題点を客観的に捉え、改善へと導くことができなくなり、「間違っていたはずのことが間違っていなかった」という不健全な認識が生まれるのです。
これこそが、まさに無謬性が組織に根付いた状態と言えるでしょう。
実際に、「この案件は、社長が部長だった時の判断だから、もう触れないように」といった会話が交わされるのを耳にすることもあります。
無謬性(むびゅうせい)が蔓延している組織の見分け方
無謬性が蔓延しやすい組織の具定例と特徴を紹介します。
無謬性(むびゅうせい)を発症しやすい組織の具体例
伝統的日本企業(JTC)、官僚、自治体職員、検察、警察、裁判所
こうした組織で無謬性が見られます。テレビドラマなどで誇張されて描かれることもありますが、必ずしもそれが誇張ではない部分も存在します。
無謬性を発症する組織の特徴
以下の3つの特徴を持つ組織では、無謬性が蔓延しやすい傾向にあります。
・成長が止まり、新卒入社比率が高い古い組織
・間違いが許されない業界
・個人評価がしづらい組織
それぞれ詳しく見ていきましょう。
成長が止まり、新卒入社比率が高い古い組織
成長が停滞した古い組織は、当然ながら過去には大きく成長した時期があります。しかし、そのビジネスモデルが時代遅れになり、新たな事業構築がうまくいかないために、成長が止まっている状況です。
加えて、新卒入社比率が高いため、経営陣も新卒からの生え抜きが多くを占める傾向にあります。
このような組織では、過去の成功体験から抜け出すことができず、抜本的な経営改革が進みません。
また、長年の間に築かれた先輩・後輩関係や個人の好き嫌いといった人間関係が、活発な意見交換を阻害する土壌を作り上げています。結果として、社内政治が活発化しやすい状態と言えるでしょう。
(詳しくは、新卒入社が多い古い会社でおきる一番の問題とは?を参照)
もちろん、これは公的組織にも共通する特徴です。高度経済成長期のような外部に課題が集中する時代には、皆が外向きに努力しますが、成長が止まると組織内部の問題がより顕著になる傾向があります。
間違いが許されない業界
間違いが許されない業界も存在します。例えば、公的機関がこれに該当します。
これらの業界では「できて当たり前」という認識が強く、判断の基準が前例に大きく依存しがちです。また、人事評価においてもプラス評価が難しいため、どうしても減点評価になりやすくなります。
さらに、明確な数値目標を設定しづらいことや、法律が業務の核であるため、過去の判断や行動を「間違いだった」と認めることが困難になります。
結果として、無謬性という風土・風習が組織に深く定着し、特に古い組織である公的機関においては、それがより強固なものとなる傾向が見られます。
個人評価がしづらい組織
チーム全体でプロジェクトに取り組む組織や公的機関などでは、個人の責任の所在が不明確になりがちです。
このような組織では、リーダー以外のメンバーは目の前の業務をこなすことが主たる目標となり、「結果責任」はリーダーのみが負い、個々人に求められるのは「行動」のみとなる傾向があります。
その結果、個人の成果に対するプラス評価が難しくなるため、減点主義に陥りやすくなります。また、上司の裁量によって人事評価が左右されるため、社内政治が発生しやすい土壌も生まれます。
同様の現象は、評価制度が曖昧な一般企業でも見られます。
同じような現象は、評価制度があやふやな一般企業でも起きます。
無謬性の解消の仕方
無謬性を解消できるのは、強力な改革リーダーが出現した時のみです。
長年組織に定着した風土や習慣を根本から変革することは、決して容易ではありません。
したがって、現状を打破し、すべてを刷新できるほどの改革者が現れない限り、組織が無謬性から脱却することは難しいでしょう。
無謬性(むびゅうせい)」とは?の「まとめ」
思考や判断に誤りがないこと
人間は誰しも間違いを犯すものですが、集団である組織においては、この「無謬性」という状態がしばしば現れます。
無謬性が根付いてしまった組織は、変革が難しく、風通しが悪く、従業員にとって居心地の悪い場所となってしまいます。
もし、あなたの現在の組織にこのような兆候が見られるならば、転職を検討することが賢明かもしれません。そして、新たな転職先を選ぶ際には、無謬性が蔓延していない組織を見極めることが非常に重要となるでしょう。
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Q1:「無謬性が発症している組織」って、具体的にどんな会話が多いですか?
Q2:自分の部署に無謬性があるか、新入社員でも見分けられますか?
Q3:失敗を隠す文化がある会社で、挑戦を続けるべきでしょうか?
Q4:減点主義の環境で、自分の評価を守るにはどうすればいいですか?
Q5:社内政治が横行している組織で、20代が生き残る方法はありますか?
Q6:中間管理職(課長・部長)が一番無謬性に苦しんでいるように見えます。なぜですか?
Q7:「この案件は社長の判断だから触れない」と言われた場合、どう振る舞うのが正解ですか?
Q8:自分のミスを上司が「なかったこと」にしようとします。これは無謬性ですか?
Q9:無謬性の組織で、個人のモチベーションを保つことは可能ですか?
Q10:転職活動中、面接で「無謬性の組織ではない」ことをどう確かめれば良いですか?
Q11: 「成長が止まった古い組織」は、どういう指標で見分けられますか?
Q12:ベンチャー企業なら無謬性はないと考えて良いですか?
Q13:面接で「うちは減点主義ではない」と言われたら、何を信じれば良いですか?
Q14:良い会社の環境とは、無謬性がないこと以外に、他に何がありますか?
Q15:20代のうちは、多少の無謬性があっても大企業で経験を積むべきでしょうか?
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