人事評価制度は、昇給やボーナスなどの給料の増減や役職が変わる昇進のように、とても重要なものに関わる制度です。
ただ、評価される従業員にとって、納得感がある人事評価制度を運用している会社が少ないのが現状です。
人を評価することはわかりますが、なぜ評価するのか?の目的が会社によって不明瞭で、「評価するために評価する」という手段の目的化がおきていることが大きな要因です。
この記事では、人事評価制度について、本来の目的や運用方法をわかりやすく解説します。
この記事を読むと、本来の人事評価制度がわかり、今働いている会社の人事評価制度が良い制度なのか?悪い制度なのかがわかります。
この記事は、
・働いた5社での人事評価を運用及び評価された経験
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
※ここでは、「人事評価」と「人事考課」を同じものとして扱います。
(あわせて読みたい、知っておきたい ビジネス基礎知識)
人事評価制度とは?
昇給・昇進・配置転換などを決定する制度
人事評価制度とは、従業員の仕事に対する貢献度や能力、態度などを一定の基準で評価し、その結果に基づいて昇給、昇進、配置転換などの決定を行うための制度です。
人事評価制度は大きく分けて等級制度、評価制度、報酬制度の3つの要素に分解できます。
それぞれを紹介します。
等級制度
等級制度は、従業員の職位や能力、経験などを基に、複数の等級に社員を分類する制度です。各等級には、それにふさわしい職務内容や責任範囲、そして報酬などが設定されています。
評価制度
評価制度は、従業員の仕事に対する貢献度や能力、態度などを一定の基準で評価し、その結果を記録する制度です。評価の結果は、昇給、昇進、配置転換などの決定に利用されます。
報酬制度
報酬制度は、従業員の貢献度や能力、等級などを基に、賃金や賞与などの報酬を決定する制度です。
人事評価制度の目的とは?
「従業員が組織に貢献すること」と「従業員自身が成長すること」を「同時に実現」すること
これが人事評価制度の目的です。
人事評価制度は手法です。目的があり、その目的を実現する方法を制度設計したものが人事評価制度です。
企業が目的を達成するために、従業員を評価し給与や賞与を決めることが人事評価制度の目的といわれますが、本来の目的の一部でしかありません。
この目的をメインに考えると、会社側の一方的な要求が評価軸となり、従業員からすると納得いかない評価になります。また、給与や賞与を人によって変えることはあくまで方法であって、目的ではありません。
人事評価制度でわかること
経営者の考え方がわかる
人事評価制度を決めることはできるのは経営者だけです。経営者が目的をどう考えるかで全く違う制度になります。
したがって、経営層が考えていることが明確に反映されます。経営者が従業員に何を望むかが色濃く反映するので、人事評価制度を見るだけでどのような会社がわかります。
もっと言えば、人事評価制度が曖昧だったりなかったりする会社の経営者は、従業員を評価したくないか、自分のさじ加減(=好き嫌い)で評価したいかのどちかです。
人事評価制度の3つのキーポイント
・分業
・課題解決経験
・被評価者と評価者との目標の握りとそれぞれの行動
良い人事評価制度かどうかが決まるキーポイントは3つあります。以下に記載する内容をに近ければ良い人事評価制度ですし、かけ離れていれば悪い人事評価制度です。
人事評価制度の目的は、「従業員が組織に貢献すること」と「従業員自身が成長すること」を「同時に実現」することです。
「従業員が組織に貢献すること」のポイントが「分業」、「従業員自身が成長すること」のポイントが「課題解決経験」、「同時に実現」のポイントが「被評価者と評価者との目標の握りとそれぞれの行動」です。それぞれを解説します。
分業
従業員ごとに何をしてほしいかを明確にする
従業員が組織に貢献するためには、従業員それぞれが何をしたらいいかが明確である必要があります。
そのために、組織の分業を設計することがとても大事になります。
当然設計するのは管理職である評価者です。まずは、従業員への適切な仕事の分配(分業)をおこなう。
そして、従業員がその仕事をやりきることが大事になります。
課題解決経験
人の成長に一番大事なものは「課題解決経験」
仕事とは何か?を一言で言えば課題解決です。
会社には、目指したい姿があります。そして、そこにたどりついていない現状があります。
そしてそのギャップが問題であり、その問題の中で解決する必要がある問題が課題です。
課題を解決することで目指したい姿になります。私たちが日々おこなう業務はすべて課題解決のためにおこなっているのです。
したがって、ビジネスにおける人の成長とは、課題解決能力が上がることです。
ただ、課題解決能力は、課題解決に取り組んだ経験でしか上がりません。結果、課題解決経験が多いほど成長できます。
(詳しくは、20代で一番大事なこと「時間当たりの課題解決経験の多さ」をわかりやすく解説を参照)
被評価者と評価者との目標の握りとそれぞれの行動
被評価者に求められること
・自分がやるべき分業内容を把握する
・分業内容を期間内に実行する
・経験を成長につなげる
評価者に求めらえること
・各人への分業内容を設計する
・個人ごとに〇×が明確になる目標設定をおこなう
・設計した分業内容及び目標を部下に理解してもらう
・部下の実行をサポートする
・部下が経験したことを成長につなげる
・上記で自分自身も成長する
上記が被評価者と評価者に人事評価制度で求められることです。具体的な内容は、等級や部下の置かれている環境により変わります。
被評価者の方は、評価者に求められていることは関係ないですが、知っておくことで良い上司か悪い上司かを見分ける基準がひとつできます。
上記をそれぞれ解説します。
被評価者に求められることの「詳細」
自分がやるべき分業内容を把握する
自分に与えられる目標を明確に把握することがスタートです。もし、この時に不明瞭な内容だったら、詳細を上長に確認しましょう。
この内容の相互理解が甘い会社がほとんどだからです。
分業内容を期間内に実行する
分業内容を理解したら、目標に向かって実行し結果を出す。皆さんが給与をもらっている理由です。
自分の役割=ミッションを実行するのは雇われた人の責任です。働いて給与をもらう以上責任が伴います。
経験を成長につなげる
会社は皆さんに給与を払ってくれるだけでなく、経験を積む場を提供してくれます。この経験を自分の成長に活かしてください。
自分の力をつけることが今後の自分を守る最大の武器となり、成長できると市場価値が上がります。結果、転職会社含めた選択肢が増えます。
評価者に求められることの詳細
各人への分業内容を設計する
分業内容を設計することが、評価をおこなう人である組織の長の最大の責務です。
組織の長の本質は、人を通して成果を出すことです。組織長のミッションは、
・与えられた組織で結果を出すことと
・組織力(全体・個人)を上げること
の2つを同時に行うことです。
そのために、誰に何をおこなってもらうことが、「従業員が組織に貢献すること」と「従業員自身が成長すること」を同時に実現できるのか?を考えることが最初の第一歩となります。
個人ごとに〇×が明確になる目標設定をおこなう
分業内容が決まったら、その分業内容ができたかどうかの基準を明確にします。5段階に分ける場合が多いです。
設計した分業内容を理解してもらう
分解した業務を各人に伝えるだけでなく、理解してもらうことが大事になります。そのために文章にすることが大事です。
文章に落とすことで、不明確な部分が減ることと、部下に説明する際に役に立つからです。
メンバーの実行をサポートする
自分でやった方が早いし、答えを教えてあげた方が早い。でもそうすると成長しない。とはいえ、組織目標を達成するには、時間が限られているからゆっくりもできない。
この二律背反問題をどう解くのかが、人の上に立つ人に課せられた仕事です。
メンバーの経験を成長につなげる
経験を成長につなげる上で一番大事なことは、本人が気づいてないことを気づいてもらうことです。
例えば、良い行動をし良い結果が出たのに、本人がその行動を認知していない場合があります。これを言語化して気づかせてあげることで、大きな成長となります。
この経験で自分自身も成長する
上記の行動で、評価者もとても貴重な経験を積むことができます。
自分だけを考えればよかったメンバー時代ではなく、これが人の上に立ったからこその悩みでもあり、苦しみでもあり楽しみでもあります。
これらの経験から学びましょう。簡単には人は動いてくれないことを。そして、言っていることが理解されないことを。
人事評価制度の3つのキーポイントの「まとめ」
・分業
・課題解決経験
・被評価者と評価者との目標の握りと行動
被評価者の皆さんは、上記3つのポイントで人事評価制度を見ると、良い制度か?悪い制度かがわかるようになります。
もし、上記を実現できている上司の元で働いている場合は喜びましょう。稀なケースです。
また、人事評価制度は経営者の意思が明確に反映されます。
ということは、現時点で悪い制度であれば今後良い制度に変わることは期待できません。
その際は、転職を検討することも選択肢のひとつです。
人事評価(人事考課)とは?の「まとめ」
人事評価の目的は、
「従業員が組織に貢献すること」と「従業員自身が成長すること」を「同時に実現する」こと
すべての出発点はこの目的です。組織に所属することで、組織の貢献と自分自身の成長の機会としてください。
最後に大事な視点をお伝えします。会社に雇ってもらっていることは上下の関係ではないです。
対等な関係であることを心のどこかに持つこと。主従ではなく、対等です。
そうすると、人事評価の目的の意味が理解できますし、そのように行動することが、あなたをより成長させてくれます。
ただ、今働いている会社が、この目的に対して行動できていない会社であれば、自分で頑張るか、転職をおススメします。
人事評価関連で2つ記事を書いています。参照下さい。
・良い会社の条件 ちゃんとした人事評価制度がある会社
・良い会社の条件 人事評価のフィードバック面談に時間をかける会社
今の会社が不安になり、転職を検討する方へ
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