ビジネスパーソンにとって不可欠な「ビジネススキル」。しかし、その本質は意外と捉えにくいものです。
「カッツモデル」に代表されるテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルといった分類を目にすることも多いでしょう。
これらはビジネススキルを理解する上で役立ちますが、それぞれの関連性や、何から習得すべきかといった点で難しさを感じるかもしれません。
実は、ビジネススキルはもっとシンプルに、「課題解決」という一つの考え方を軸に理解できます。
この記事では、「ビジネススキルとは何か」を、あなたの具体的な仕事に役立つよう分かりやすく解説します。
この記事は、
・営業担当・課長・部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
(あわせて読みたい、社会人の勉強 おススメの学び方とは?)
ビジネススキルとは?
仕事をする上で必要となる能力、技術、そして考え方の総称
ビジネススキルは以下です。
仕事の基本スキル | ・仕事の最低限のスキル (パソコン、メール、文章、会話等) |
課題設定スキル | ・目指したい姿を設定するスキル ・「現象」と「原因」を分けるスキル ・「現象」の「原因」を把握するスキル ・解くべき問題=課題を特定するスキル |
打ち手立案スキル | ・複数の打ち手を立案するスキル ・打ち手を決定するスキル |
打ち手実行スキル | ・打ち手を他の人に理解してもらうスキル ・他の人に動いてもらうスキル |
なぜこれがビジネススキルなのかを解説します。
ビジネススキルが必要な理由
課題解決をおこなうため
会社の活動の本質はすべて課題解決であり、私たちの仕事も例外ではありません。
(会社の活動が課題解決である理由は、仕事の本質である「課題解決の考え方」についてわかりやすく解説を参照下さい)
だからこそ、課題を解決に導くためのビジネススキルが不可欠なのです。課題を解決できないスキルは、いくら高度に見えても、ビジネスにおいては「無用の長物」となってしまいます。
(課題解決の詳細は、課題解決とは?意味・考え方・進め方をわかりやすく解説を参照)
スキルとは?
そもそも「スキル」とは何でしょうか?この定義がずれると、ビジネススキルの解釈も変わってしまいます。
知識とスキルと能力の関係
スキルは能力の一部
知識は「知っていること」で、能力は「できること」です。スキルは「能力の一部」のことで能力と同じ「できること」です。
ちなみに、スキルの集合体が能力となります。
この関係性から、知識があるからといって、必ずしもスキルや能力があるわけではありません。しかし、スキルや能力がある状態であれば、その背景には必ず知識が存在します。
「スキルを学ぶ」という表現を耳にすることがありますが、厳密に言えばこれは「できることを学ぶ」という、やや不自然な使い方になります。
(詳しくは、「知識と能力とスキルの関係」をわかりやすく解説を参照)
ビジネススキルの詳細
私たちの仕事の核となる課題解決のために、具体的にどのようなビジネススキルが必要になるのでしょうか。
ここでは、前述したビジネススキルを、課題解決の基本的な手順に沿って詳細に解説します。
仕事の基本スキル | ・仕事の最低限のスキル (パソコン、メール、文章、会話等) |
課題設定スキル | ・目指したい姿を設定するスキル ・「現象」と「原因」を分けるスキル ・「現象」の「原因」を把握するスキル ・解くべき問題=課題を特定するスキル |
打ち手立案スキル | ・複数の打ち手を立案するスキル ・打ち手を決定するスキル |
打ち手実行スキル | ・打ち手を他の人に理解してもらうスキル ・他の人に動いてもらうスキル |
まずは、課題解決の基本的な手順を説明した後に、上記をそれぞれ解説します。
課題解決の基本的な手順
1.目指したい姿・ありたい姿=ゴールを設定
2.現状を把握
3.現状とのギャップである問題を洗い出す
4.問題の中で解くべき問題を課題とする
5.課題解決の方法と時間軸である戦略を考える
6.戦略の具体的な行動である戦術を考える
7.立案したものを実行する
図にすると以下です。

1~4が課題設定スキルで、5~6が打ち手立案スキル、7が打ち手実行スキルです。仕事の基本スキルはこれらをおこなうために必ず必要なスキルです。
課題解決の大小に関係なく上記の流れが課題解決の手順となります。
この図の詳細は、「目指す姿・現状・問題・課題・戦略・戦術」をたった1枚の絵で表すを参照)
仕事の基本スキル
課題解決を進める上で、まず基盤となるのが仕事の基本スキルです。これらがなければ、円滑に業務を進めることはできません。
具体的には、パソコン操作、メールやチャットでの適切なコミュニケーション、ビジネス文章の作成、そしてビジネス会話のマナーやスキルなどが挙げられます。
課題設定スキル
・課題設定スキルとは?
・課題設定に必要なスキル
上記2つに分けて解説します。
課題設定スキルとは?
解くべき問題である課題を適切に設定するスキル
課題設定スキルとは、本当に解くべき問題、すなわち「課題」を適切に設定する能力を指します。
この課題設定を誤ってしまうと、いくら素晴らしい打ち手を立案・実行しても、根本的な解決には繋がりません。そのため、課題解決プロセスにおいて最も重要なステップと言えるでしょう。
課題設定に必要な4つのスキル
・目指したい姿を設定・把握するスキル
・「現象」と「原因」を分けるスキル
・「現象」の「原因」を把握するスキル
・解くべき問題=課題を特定するスキル
これらのスキルは、それぞれ密接に関連しており、段階的に身につけていくことで、より精度の高い課題設定が可能になります。
良く混乱する用語である、現象と原因と問題と課題の違いは以下の図を参照下さい。

「問題」の中に「課題」があります。「問題」は、「現象」「原因」どちらの場合もありますが、「課題」は「原因」の中にしかありません。
(詳しくは、人により定義が異なる「問題と課題の違い」をわかりやすく解説を参照)
課題設定に必要なスキルの4段階をそれぞれ解説します。
目指したい姿を設定・把握する
課題解決は、「どのような状態になりたいか」という目指す姿やゴールを設定することから始まります。
これは自分で設定する場合もあれば、上司や顧客の考えを正確に把握する必要がある場合もあります。
「ヒアリングが重要」とよく言われますが、その最も大きな目的は、相手の目指す姿を知ることです。
ヒアリングで課題を聞くことも大切ですが、まず目指す姿を理解することで、その後の課題設定や時間軸が大きく変わってくるため、非常に重要なスキルです。
「現象」と「原因」を分ける
「現象」と「原因」を図にすると以下です。

結果が「現象」、「現象」を引き起こしたものが「原因」です。「現象」は表層、「原因」は根本とも言えます。
この違いを元に現象と原因を分けることができるようになりましょう。
「現象」の「原因」を把握する
様々な現象が起こった原因を特定します。
例えば、「売上が10%落ちた」は現象です。では売上が10%も落ちた理由は何でしょうか?一例で言うと「顧客のニーズ変化に対応した競合にシェアを奪われた」でこれが原因になります。
単純なものはすぐに原因特定できますが、多岐にわたる現象の原因を特定するのは、原因特定の経験が必要です。
これは、現象から原因を特定する回数に比例して上達しますので、自分で考える経験を積むことが大事です。
解くべき問題=課題を特定する
様々な原因をさらに深堀って、様々な原因を一網打尽に解決できる原因=真因=解くべき問題を見つけるスキルです。
上記の例で言うと、「売上が10%落ちた」は現象。「顧客のニーズ変化に対応した競合にシェアを奪われた」が原因となり、課題は、「顧客のニーズの変化をどう把握しどう対応するか」となります。
1つの原因に1つの真因の場合もありますが、多くは、さまざまな問題の原因が複合的に絡まっていて、その奥底に本当の原因である真因=解くべき問題があります。
打ち手立案スキル
・打ち手立案とは?
・打ち手立案のために必要なスキル
それぞれを解説します。
打ち手立案とは?
特定した課題に対する解決策である打ち手を立案できること
一番華やかに見える工程です。
ただ、課題の設定が適切であれば、2,3個の打ち手から選択するだけとなります。
したがって、大事な部分ではありますが、前工程の課題設定の良し悪しに左右されます。
打ち手立案に必要なスキルとは?
・複数の打ち手を立案するスキル
・打ち手を決定するスキル
それぞれ解説します。
複数の打ち手を立案するスキル
課題が適切に特定できていれば、最適な打ち手案を見つけやすくなります。この段階で重要なのは、様々な角度から少なくとも3つ程度の打ち手案を考案するスキルです。
複数の案を比較検討することで、選んだ案の最適性をより深く実感できますし、もしかしたら見落としていた新たな視点や、より良い解決策を発見できる可能性も広がります。
打ち手を決定するスキル
考案した複数の案の中から、最も効果的な「打ち手」を選び出すスキルです。
選定のポイントは、最初に設定した「目指したい姿」に最も近づける案であるかどうか。
打ち手は、その目的達成のために最も大きなインパクトを与えられるものであるべきです。
打ち手実行スキル
・打ち手実行とは?
・打ち手実行のために必要なスキル
それぞれを解説します。
打ち手実行とは?
立案した案を社内の人や顧客に理解してもらい動いてもらうこと
多くの場合、打ち手の実行は一人では完結しません。目標である「目指す姿」になるためには、必ずと言っていいほど、社内外の他の人々の協力が必要になります。
当然、変化は周囲に影響を及ぼすため、彼らに打ち手を理解・納得してもらい、協力を仰ぐことが不可欠です。
複数の人が関わるため、このスキルは非常に難易度が高いと言えるでしょう。
打ち手実行に必要なスキル
・案を他の人に理解してもらうスキル
・案を理解し行動してもらうスキル
それぞれを解説します。
案を他の人に理解してもらうスキル
このスキルは、相手に論理的に説明し、提案内容だけでなくその背景にある課題までも理解してもらう能力を指します。
いわゆる「プレゼンテーションスキル」がこれに当たります。
効果的なプレゼンテーションの基本は、課題解決の基本的な手順に沿って説明することです。
1.目指したい姿・ありたい姿=ゴールを設定
2.現状を把握
3.現状とのギャップである問題を洗い出す
4.問題の中で解くべき問題を課題とする
5.課題解決の方法と時間軸である戦略を考える
6.戦略の具体的な行動である戦術を考える
この流れで説明することで、聞き手は「なぜこの案が必要なのか」という目的から課題、そして打ち手へと一連の思考プロセスを理解し、提案の妥当性を判断できます。
常にこの流れを意識して案を作成し、説明する経験を積むことで、このスキルは飛躍的に向上します。
案を理解し行動してもらうスキル
論理的な説明は不可欠ですが、それだけで人が行動に移すとは限りません。
このスキルは、相手の感情を動かし、具体的な行動へと導く能力です。
論理的に伝えることは理解を得るための第一歩ですが、そこから一歩踏み込み、相手に「動きたい」と思わせるために何を、どのように伝えるべきかを深く考えることが重要になります。さらに、理解を得た後の行動サポートも欠かせません。
常に「相手にどう動いてもらうか」という視点を持って思考することで、このスキルは磨かれていくでしょう。
ビジネススキルとは?の「まとめ」
仕事をする上で、必要になる能力・技術・考え方のことです。
ビジネススキルの全体像は以下です。
仕事の基本スキル | ・仕事の最低限のスキル (パソコン、メール、文章、会話等) |
課題設定スキル | ・目指したい姿を設定するスキル ・「現象」と「原因」を分けるスキル ・「現象」の「原因」を把握するスキル ・解くべき問題=課題を特定するスキル |
打ち手立案スキル | ・複数の打ち手を立案するスキル ・打ち手を決定するスキル |
打ち手実行スキル | ・打ち手を他の人に理解してもらうスキル ・他の人に動いてもらうスキル |
仕事の本質である、課題解決という業務をコアにおいて考えると上記になります。
まずは仕事の基本スキルを早期に習得し、その上で課題設定スキルを習得するための時間を確保しましょう。
特に、今回解説した課題設定スキルの各項目で、ご自身が苦手だと感じる部分を明確にし、集中的に対策することで、より早くスキルを習得できます。
これらのスキルを身につけることは、企業活動の根幹である課題解決能力を高めることに直結し、結果としてあなたの市場価値を大きく向上させることにも繋がるでしょう。
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