営業担当として、お客様の課題を把握するための営業ヒアリングに悩む方は少なくありません。
「お客様の何をどう聞けば、ヒアリングできたことになるのか?」といった具体的な疑問は尽きないでしょう。
先輩や上司に相談しても、人によって回答が異なり、さらに混乱してしまうこともあります。
Webで検索しても、理路整然と難しい専門用語が並び、結局何が正解なのか分からず、さらに悩みが深まる方もいるのではないでしょうか。
このように、知ろうとすればするほど混乱し、営業ヒアリングを難しく感じてしまう原因は、営業ヒアリングが持つ二つの目的を混同していることにあります。
営業ヒアリングは、あくまで「手段」です。手段である以上、明確な「目的」が存在します。この目的を正しく理解すれば、実は非常にシンプルかつ簡単になります。
この記事では、営業ヒアリングの目的を明確にした上で詳細に解説します。
この記事は、
・営業担当・営業課長・営業部長・本部長・執行役員の経験
・風土の違う5社での経験
・数百名のマネジメント経験
・数千社への営業経験
・100回を超える勉強会の講師経験
・1,000冊近い読書経験
これらの経験を持つよしつが実体験から得たことを元に書いています。
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営業ヒアリングの2つの目的とは?
1.お客様になるかどうかの判断
2.次の商売のネタ発見
営業ヒアリングの大目的は受注するためです。受注するためのステップである営業ヒアリングには、上記2つの目的があります。
よく言われる目的として、「お客様のことを知り、良い提案をするため」という説明がよくありますが、この答えでは手段の目的化がおきています。
(手段の目的化は、「手段の目的化」の原因と対策を具体例と合わせてわかりやすく解説を参照)
良い提案ができれば受注できなくていいのでしょうか?そんなことはないですよね。
また、営業ヒアリングをこのようにシンプルにすると、先輩社員から「営業担当とは、何でも売るのが営業担当の仕事だ」ととアドバイスされる場合があります。
このようなアドバイスをもらったら、しっかり聞いてるふりをして聞き流しましょう。精神論もしくは、ロジカルに整理されていない状態でアドバイスをしてくれているからです。
あと、少し厄介なのは、当社は「商品販売営業」ではなく「ソリューション営業」なので、まずは課題を把握して課題解決営業をおこなうことが営業の仕事だという場合です。
販売する製品・商品・サービスが多かったり、製品・商品・サービスが特になく、オーダーメイドで課題解決するようなビジネスをしていればその通りですが、そうでない場合は聞き流しましょう。
製品・商品・サービスの本質は課題解決の手段だから、これらを販売することは、ソリューション営業=課題解決営業だからです。
(製品・商品・サービスの本質は、「製品・商品・サービスの本質とは?」をわかりやすく解説を参照)
上記2つの目的をそれぞれ詳しく解説します。
お客様になるかどうかの判断
お客様になるかどうかの判断が目的である理由と、判断方法について紹介します。
お客様になるかどうかの判断が目的である理由
すべてのお客様から受注できないため
自社が提供できるサービスには限りがあります。解決できない課題について詳しくヒアリングしても、結局解決策を提供することはできません。
例えば、中途採用のサービスしか扱っていない会社が人事部と商談した際に、マネジャーのマネジメント能力に課題があると知ったとします。この場合、貴社はその課題を解決できるでしょうか?おそらく難しいでしょう。
あらゆる課題に対して解決策を提供できる会社はごく一部です。
つまり、多くの会社にとって重要なのは、自社の既存の製品・商品・サービスで解決できる「不(不満や不便)」や「課題」を抱えているお客様なのかどうかを見極めることです。そのためにこそ、営業ヒアリングを行うのです。
判断方法は?
お客様に自社で解決できる課題があるかどうか
そのためにはまず、貴社のサービスでどのような「不」や「課題」が解決できるのかを明確に理解しておく必要があります。
その上で、お客様にそういった「不」や「課題」があるかどうかをヒアリングすることで、お客様になるかどうかの判断が可能になります。
具体的な方法は後述します。
次の商売のネタ発見
今解決できない課題を知る
どのような企業でも、現在の製品・商品・サービスはいずれ売れなくなります。そのため、常に新しい商品を開発し続ける必要があります。
製品・商品・サービスは、お客様の課題を解決するために生まれるものですから、まず「どのような課題があるのか」を知ることが、商品開発のスタートラインとなります。
お客様が今解決できていない課題を把握し、もし多くの企業が同様の課題を抱えていると分かれば、その課題を解決する商品を開発することで、高い確率で売れるビジネスにつながるでしょう。
ただし、この目的2のヒアリングは難易度が非常に高いです。まずは、目的1である「お客様になるかどうかの判断」がしっかりできるようになった後に取り組むことをお勧めします。
後に取り組む理由は2つあります。
難易度が高いから: 前述の通り、この種のヒアリングは高度なスキルを要します。
目的1習得後の自然な流れ: 目的1のヒアリングでお客様に貢献できるようになると、お客様から自然と相談される機会が増えていきます。その相談の中に、次の商売のヒントやネタが含まれていることが多いため、まずは目的1の習得に注力しましょう。
※この記事では、次の商売のネタ発見に関する詳細な解説はここまでとします。
お客様になるかどうかの判断の「実践方法」
・自社で解決できる「不」や「課題」の把握
・ヒアリング方法を知る
・受注できない場合の注意点
お客様になるかどうかの判断は、上記3点ができるとわかります。
それぞれ解説します。
自社で解決できる「不」や「課題」の把握
自社でできることを把握する
お客様にヒアリングする前に、まずは「自社で何ができるのか」を明確に把握しておくことが重要です。
具体的には、「自社サービス」が「競合優位性」を発揮できる「不(不満や不便)」や「課題」を理解しておく必要があります。
実は、多くの企業が自社の強みや解決できる課題を明確に把握しきれていないケースが少なくありません。そのため、まずはあなた自身で一からじっくり考えてみることをお勧めします。
最も手っ取り早いのは、これまでに受注できた成功事例を徹底的に分析することです。
事例分析のポイントは以下の2つです。
・製品・商品・サービスの強み
・製品・商品・サービスとその他の強み(営業担当のサポート力など)の組み合わせ
それぞれ詳しく説明します。
製品・商品・サービスの強み
入社時などに社内で説明を受けた強みを検証します。
その強みが「不」や「課題」を解決でき、かつ競合優位性もあることで受注できている場合はOKです。
ただ、多くの場合は、それだけではなく他の強みを組み合わせて受注しています。
製品・商品・サービスと他の強みの組み合わせ
貴社製品・サービスの競合優位性がそこまで高くない、あるいは低いと感じる場合でも、受注できているケースでは、必ず「何か」が付加されています。
具体的には、営業担当のきめ細やかなサポート力、販売後の充実したアフターサポート、取引先を変更する際に生じるミスやリスクを回避できる点、あるいは既に取引があることによる発注の手軽さなどが挙げられます。
「信頼関係があるから」「長年の取引があるから」といった理由で選ばれていると考える方もいるでしょう。
しかし、そこで思考を止めるのではなく、もう一歩踏み込んで、その「信頼関係」や「長年の取引」が具体的に何を指すのかを深掘りすることが、真の強みを把握するポイントです。
例えば「信頼関係」とは、お客様が望む品質のものを常に提供してくれることかもしれません。
「長年の取引」とは、本来10の説明が必要な発注作業が2で済む、あるいは抜け漏れがあれば指摘してもらえるといった、お客様にとっての手間軽減かもしれません。
このように、お客様が貴社を選んでいる具体的な理由を深く掘り下げて把握することで、自社の本当の強みが明確になります。
ヒアリング方法を知る
解決できる「不」や「課題」があるか聞く
事前に把握した「不」や「課題」について、こんなことに困っていませんか?と聞くことがヒヤリング方法です。これだけです。
「不」や「課題」をとらえておけばとてもシンプルです。
また、いきなり聞くパターンと、流れの中で聞くパターン(話の持っていき方)の2つをトークストーリーとして持っておくと、唐突感を避けた会話ができます。
受注できない場合の注意点
本当に「不」や「課題」がないかを確認
ヒアリングを行ったにもかかわらず、受注に至らないケースで注意すべき点があります。
「不(不満や不便)」や「課題」がない、と言われて受注できない場合、本当にニーズがないケースと、本当はニーズがあるのに顕在化していないケースがあります。
前者の場合は諦めても問題ありません。しかし、後者の場合は、その隠れたニーズをいかに顕在化させるかが重要になります。
以下の点に注意を払うことで、「ニーズがない」と早合点してしまうことを減らせるでしょう。
本当はニーズがあるのに受注できない主な理由は、次のいずれかです。
・商談相手が適切ではない
・こちらの話が伝わっていない
・予算がない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
商談相手が適切ではない
・商談相手が会社の課題を理解していない
・商談相手が上司に提案できない・しない
・商談相手が本当の担当者ではない
この3つが適切ではない場合です。
商談相手が会社の課題を理解していない
企業が予算を投じるのは、その投資が会社の「不(不満や不便)」や「課題」を解決すると認識している場合です。
しかし、現場の担当者レベルでは、意識の問題や部署の範囲に閉じた視点から、会社全体の「不」や「課題」を十分に把握していないことがあります。
自社商品が解決できるような、会社全体の「不」や「課題」を商談相手が認識しているかどうかを見極めるヒアリングを、商談中に意識的に組み込んでみましょう。
例えば、「御社の〇〇(自社で解決できる「不」や「課題」)については、部署や課の会議で話題に上がることはありますか?」といった質問が有効です。
商談相手が上司に提案できない・しない
これは上司側の問題と担当者側の問題の両方が考えられますが、基本的な解決策は同じです。
まずは、担当者に貴社の製品・商品・サービスが「必要だ」と心から思ってもらうことがスタートラインです。
担当者が納得したら、彼らが上司に提案しやすくなるよう、「稟議書になる提案書」を渡しましょう。この提案書が一人歩きすることで、担当者の稟議プロセスを強力にサポートできます。
極端な話、担当者が不慣れな説明をするよりも、質の高い資料を上司に直接渡してもらう方が、結果的に受注につながりやすいケースも少なくありません。
商談相手が担当者ではない
アポを取ったが、会ってみると担当ではないことも多くあります。
商談の最初に〇〇の話をさせていただきます。普段このような業務は関わっていますか?と真っすぐ聞く方法と、△△さん含めて何名位でおこなわれていますか?と少し柔らかく聞く方法があります。
こちらの話が伝わっていない
これは、営業担当の説明が不十分で、お客様に意図が伝わっていないケースです。
「説明したつもり」という貴社都合の思い込みもあれば、実際に説明したものの、お客様が十分に理解できなかったというケースもあります。
もしトークスキルに自信がないのであれば、提案書や案内書などの資料を効果的に活用して説明するようにしましょう。
視覚的な情報も加えることで、より正確に意図が伝わりやすくなります。
予算がない
お客様に「不(不満や不便)」や「課題」があっても、「予算がない」と言われることがあります。
本当に予算がないケースも存在しますが、多くの場合、それは「会社としての優先順位が低い」、あるいは「担当者としての優先順位が低い」のいずれかであると捉えるべきです。
もし「予算がない」と言われたら、それは「優先順位が低い」と言われているのだ、と置き換えてみましょう。
企業は、事業活動のために多くのお金を動かしています。それは、必要だと判断するものには適切に投資しているからです。
貴社が提供する製品・商品・サービスが解決できる「不」や「課題」がお客様にあるのであれば、受注の可能性は必ず存在します。
しかし、実際にお金を出してもらえないということは、その解決策に対する優先順位が、お客様の企業内で低い状態にあるのです。
なぜなら、本当に必要であれば、他の何かを諦めてでも予算を確保しようとするからです。
企業がお金を投じる2大ポイントは、「売上を向上させるか」、または「コストを削減できるか」です。
製品・商品・サービスのメリットを、これら2つのポイントに絡めて具体的に紹介するようにしましょう。
直接的な影響だけでなく、間接的な貢献も含めて分かりやすく伝えることで、お客様企業内での優先順位を上げてもらえる可能性が高まります。
営業ヒアリングとは?の「まとめ」
営業ヒアリングの大目的は
受注するため
営業ヒアリングの目的は
1.お客様になるかどうかの判断
2.次の商売のネタ発見
この2つです。まずは、1と2を分けて考えることと、まずは1を習得しましょう。
これだけで、かなり頭が整理され、結果早く習得できるようになります。
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